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Column 2019.01.25 update

「ベルリン、そして、ヨーロッパの片隅から」〜New Year’s篇〜 コラムニスト・宮沢香奈 vol.4

途切れることなく打ち上がる花火は新しい年の始まりを祝う恒例の儀式。
何年経っても変わらない光景を見せるベルリンのSilvester(大晦日)はクレイジーで、いかにもパーティーシティーらしい。この瞬間は誰もが歳を忘れ、子供のようにはしゃぎ、大声を上げ、互いに笑い合いながら、心の中でそれぞれにいろんな思いを馳せる。過ぎ去った2018年を思い出しながら、決意や目標を掲げながら、誰かを想いながら2019年に寄り添ってゆく。

そして、ベルリンより8時間早く新たな年を迎えた日本を思う。“平成”という一つの時代が終わる歴史的な年がスタートした日本を。

XF10」を手に新年を迎えたベルリンの街へと繰り出した。まだ外が薄暗いうちから眠気を残した顔で出勤する人々、焼きたてのパンの良い香り漂うパン屋のシャッターが開き、その前をオールナイトで遊び尽くした若者たちが家路に着く。お正月のないこの街は2日から普段通りの顔を見せる。みんな一体どんな初夢を見たのだろうか?そもそも“初夢”を気にする文化があるのだろうか?当然ながら干支はなく、血液型でさえ気にしない国で日本の伝統的なお正月の記憶が薄まっていくのを感じた。

街は元旦に見た神々しい太陽は奇跡だったかのように分厚い雲に覆われ、より一層グレーに染まる。それでもどこかいつもと違って見えるのはなぜだろう?根拠などどこにもない、けれども、キラキラした何かが溢れ出てくるのを感じた。聴こえてくるのはThe Maríusの“Clueless”、程良いヴィンテージ感と軽快なサウンドは、6年前にこの街に心奪われた時と同じように心地良い浮遊感と“デジャブ”に身を任せたくなる。

新年の雰囲気が落ち着き、さらに寒さが増してゆく頃には毎年恒例のファッションウィークが始まる。パリのようなメゾンの華やかさやゴージャスさはないけれど、ほんの少しだけ暗い街が華やいでいくのが嬉しい。そして、いつだってファッションは私にパワーをくれる。例えば、新しいスカートを一枚手に入れたら新しいコーディネートが5つ増える。嬉しくて楽しくて、外に出かけたくなり、誰かに会いたくなる。ファッションの持つパワーとはそういうものなのだと思う。音楽も同じであり、恋愛もそうなのかもしれない。

友人を誘って、ミッテ地区にある見慣れたエリアの一角で開催されていたパーティーへと足を運んだ。センスの良いインテリアが配置されたショールームのような会場には、最新の2019AWコレクションが並び、ベルリンで生まれた可愛らしいデザインのリキュールから作られたオリジナルカクテルを嗜む。招待してくれたPRの友人や同行していた友人と語らいながら、東京での暮らしはこういった環境に囲まれていたことを思い出した。

毎日どこかで開催されている煌びやかなパーティーの喧騒から遠ざかり、ベルリンへとやってきた。開放感、喪失感、優越感、劣等感、幸福感、孤独感、自分を縛り付けていたいろんな感情から一気に解き放たれ、身分不相応に所持していたブランド品の多くを手放した。宝物のように保管しているクリスチャン・ルブタンを履く機会はあるのだろうか?実用的なスニーカーの数が増えていく生活の中で、それでもずっとファッションの世界に片足を突っ込んで生きている。それはきっとこれからも変わらない。大好きなもののそばに身を置くことが一番居心地がよく、自分らしくいれるのだから。

“さて、今年は何から始めよう?” 

吐く息は白く、指先からかじかんでゆく極寒の中、ガタガタの石畳にヒールが嵌らないように、転ばないように、しっかりと歩いていく。

今回登場したカメラ

FUJIFILM XF10

Profile

宮沢香奈/Kana Miyazawa

ライター、コラムニスト、コーディネーター

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’s FUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

◼︎Qetic
http://www.qetic.jp/column/kana-miyazawa/
◼︎VOGUE
http://www.vogue.co.jp/lifestyle/culture/
◼︎繊研新聞
https://senken.co.jp/categories/kmiyazawa

Blog:HOUYHNHNM
Instagram:@kanamiyazawa

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