IRODORI by X Series

Tips 2019.11.14 update

“⾃分らしい写真”を見つけるまで〜フォトグラファー・コハラタケルさんの場合〜

カメラが⼿に馴染むようになってくるころ、おそらく多くの⼈が考えるのは“⾃分らしさをどう表現するか”ということではないでしょうか。現在プロとして活躍されているフォトグラファーの⽅々も、きっと「これだ!」という形に出会うまでは紆余曲折があったはず。そこでIRODORI では、Xシリーズを愛用しているフォトグラファーの皆さんに“⾃分らしい写真”を見つけるまでのストーリーやそれを叶える機材・設定などを詳しく綴っていただきます。第一回目は、“なんでもないただの道”で撮影する女性ポートレートで人気を集める、フォトグラファーのコハラタケルさんです。

Vol.1:コハラタケル

はじめまして、フォトグラファーのコハラタケルです。

写真歴は約4年。仕事では家族写真やSNSのネットワークを利用した写真教室や教材販売サービスを運営するCURBONで講師や撮影風景の動画等を販売しています。最近ではCURBONメンバーの共著で写真に関する書籍も出させていただきました。

僕は九州の長崎県生まれなのですが、大学卒業後、上京してから20代後半まで建設業の職人をやっていたんです。その後、30代でフリーのライターになるのですが、写真に出会ったのはそのときです。記事ってほとんどの場合において写真が必要なんですよね。最初はあくまで文章が主役で、写真はおまけ程度に撮らせてもらっていたのですが、少しずつ写真を中心とした記事も増えてきました。

当時は人物ではなく、不動産物件の写真や観光地・施設の写真撮影をしていました。ちょうどライターになった2016年からInstagramも始めるのですが、SNSの投稿も被写体・モデルさんを使った人物メインの写真ではなく、風景やブツ撮り・ストリートスナップが多かったです。

人物以外を撮っていた僕も、たまには友達を撮らせてもらう機会があったんです。徐々に撮る対象が人物に変わっていき、2017年5月には家族写真のプラットフォームへ登録し家族写真の撮影を始めました。同年9月にメインの仕事を写真関係に変更して肩書きもライターからフォトグラファーにしましたね。

“自分らしさ”を作りあげようとしていた初期

最初は自分らしさを見つけにいこうとしていました。見つけにいくというのは、自分自身で個性を作りあげようとすることです。

当時は撮らせてもらうようなモデル・被写体さんもいなかったため、自分自身で創作する必要がありました。大学時代、ブレイクダンスをやっていたのですが、オリンピックの一種目である、体操を見るのが好きだったんですよね。体操で使っているリボンの表現豊かな動きを見たとき、「これを写真に取り入れたらおもしろいかも」と思いました。結果、赤いリボンを使った創作写真を撮り始めるようになったんです。

X-T10(camera)/XF35mmF1.4 R(lens)/F値:1.8 /シャッタースピード:1/60 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

X-T10(camera)/XF35mmF1.4 R(lens)/F値:1.4 /シャッタースピード:1/1000 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

あとSNSは日本だけでなく、世界中の人が見てくれるので日本らしさを表現したいと思い、京都産の赤い和傘を使った写真もリボンの表現と同時期に始めました。最初に話した通り、撮らせてもらう人がいなかったため、ほとんどをセルフポートレートで実践していたんです。

最初は新鮮味もあって、写真を撮るのが楽しく、アイデアもどんどん出てきました。ただ、続けていけばいくほど、アイデアは出てこなくなり、結局、いつも似たり寄ったりな写真ばかりになっていきました。

「アイデアを生み出し続けるというのはこんなにも大変なことなのか……」と表現の追求に挫折しましたね。結局、写真を撮ること自体の楽しさもどんどん減っていき、むしろ苦痛になっていきました。

なんでもない道での女性ポートレートを撮ると決めたきっかけ

X-Pro2(camera)/XF35mmF1.4 R(lens)/F値:2.8 /シャッタースピード:1/8000 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

赤いリボンと赤い和傘を使ったセルフポートレートは続けていくことができない。でも、写真は撮り続けないといけないし、なによりもSNSに発表する写真を生み出していかなければいけない。そう考えたとき、「次は続けられるものにしよう」というのが自分のなかで自然と生まれてきました。

セルフポートレートを撮っていたときも本当にごく稀にですが、友達を撮らせてもらうことはあったんです。そこで当時、撮らせてもらっていた友達に「街撮りをさせて欲しい」とお願いしました。

確か……4時間ぐらいは撮影した気がします。当時の僕にとってはとても長い撮影時間でした。撮影日当日は天気も良く、絶好の撮影日和でした。データを見返すと、撮れ高が本当に良くて、様々なバリエーションの写真を撮ることができたんです。

「これ(女性ポートレート)だったら続けていけるかも……」

女性ポートレートで写真を続けていける可能性を感じた瞬間でした。

X-Pro2(camera)/XF35mmF1.4 R(lens)/F値:2.8 /シャッタースピード:1/1000 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

僕は昔からちょっと変なところがあって、みんながやっていることと同じことをするのはあまり好きじゃないんです。今でもありますが、当時のInstagramは絶景に人をポツンッと立たせたポートレートや、カッコよくてクールな感じのモデルさんを新宿・渋谷などの街で撮るというストリート系の写真を目にすることが多かったんです。

「僕はちょっと違う路線でいきたいな」と考えたときに、あまり名所ではない、ありふれた街並みのなかで女性を撮影するというスタイルにたどり着きました。

X-T3(camera)/XF16mmF1.4 R(lens)/F値:1.4 /シャッタースピード:1/1000 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

X-Pro2(camera)/XF35mmF1.4 R WR(lens)/F値:2.8 /シャッタースピード:1/1000 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

女性ポートレートといっても、さきほど話した通り、絶景ポトレや部屋撮り・スタジオ撮影など、いろいろありますよね。そんないろいろあるなかでも街撮りって変化を付けやすいジャンルだと思うんです。

場所にもよりますが、100メートルぐらい歩いただけでも、周りの景色は次々と変化していきます。これが絶景や部屋撮りだと、変化のつけ方には限りがあると思うんです。もちろん上手な人だったら細かい変化に気づいて、限られた場所でもいろんな写真を撮れますけどね。でも、当時の僕にはとても真似できるようなことではありませんでしたし、車もないし、お金もない(笑)

街撮りのポートレートというのは“低コストで作品を完成させることができる”というのも大きな魅力のひとつで、ずっと続けていきたいと考えていた僕にとっては非常に理にかなったジャンルだったんです。

“⾃分らしい写真”を表現する機材・設定

GFX 50R(camera)/GF63mmF2.8 R WR(lens)/F値:5.6 /シャッタースピード:1/60 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

僕が主に使用しているカメラがX-T3X-Pro2・X-T10、そしてGFX 50Rの4台です。レンズは数本持っているんですが、よく使うのは『XF16mmF1.4 R WR』と『XF35mmF1.4 R』の2本。GFX 50Rに付ける『GF63mmF2.8 R WR』は仕事で使うことが多いです。

自分らしさというと様々なことがあるのですが、僕のなかで大切なことが”色”なんです。富士フイルムの色が本当に大好きで。昔は光の捉え方などが下手だったので、jpeg撮って出しの状態では微妙な写真が多かったのですが、最近は「RAW現像しなくていいんじゃないか?」と思えるような写真も増えてきました。それぐらい富士フイルムが生み出す色の綺麗さには驚いています。

基本的に僕はフィルム調な雰囲気が好きなので、彩度は低めにし、全体的に落ち着いた色調になるようにしています。具体的には、富士フイルムのカメラに内蔵されているフィルムシミュレーションはクラシッククロームを使用し、画質設定の部分もカスタマイズしています。

ハイライトトーン −2
シャドウトーン −2
カラー −4
シャープネス +4
※上記設定はX-T3の場合

作品撮りだったら白飛びや黒つぶれといった表現も味になる場合があるんですが、仕事となると、そのような表現が必要ではないシーンもたくさんあります。

ハイライトトーンをマイナス側にすると、白飛びを抑えることができますし、シャドウトーンに関してもマイナスにすることで黒つぶれを抑えることができます。また、マイナス側に振ってあげたほうがやわらかい描写になるので、僕はハイライトトーンとシャドウトーンに関しては必ずマイナスに設定するようにしています。

カラーは最初に説明した通り、彩度を低くしたいのでマイナスに。シャープネスに関しては、よく使うレンズでXF35mmF1.4 Rを取りあげたのですが、このレンズはとろけるようなボケ感とやわらかい描写が特徴のひとつです。ただ「ちょっとやわらかすぎるかな」と感じるシーンも多く、僕は細かい部分もしっかり見せたいので、シャープネスに関してはプラスのほうに振ってます。

作品撮りではRAW現像を基本的にしますが、仕事ではjpeg撮って出しで納品することも珍しくありません。だから撮って出しの色ってすごく重要なことなんです。上記で説明したように、フィルムシミュレーションや各種設定によって自分好みの雰囲気に仕上げ、さらに富士フイルム本来の色が綺麗だというのは、僕にとっては非常に心強いことです。

“⾃分らしい写真”に悩んでいる方へ

GFX 50R(camera)/GF63mmF2.8 R WR(lens)/F値:2.8 /シャッタースピード:1/60 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

まずは “自分が続けられること”を探してみてください。

好きなことを仕事にしなさいというのはよく聞きますが、僕は継続することのほうが大切だと考えています。結局のところ継続できることって、自分が好きなことじゃないと続けられないんですよね。

そこで最初のアプローチとして「自分の好きなことはなんだろう?」ではなく「自分が続けられることはなんだろう?」に変えると、また違った視点で写真を考えることができると思います。

あなたがこれだったら続けていけるという写真はなんですか? ぜひ一度、自分の胸に聞いてみて欲しいです。

GFX 50R(camera)/GF63mmF2.8 R WR(lens)/F値:2.8 /シャッタースピード:1/250 /クラシッククローム(フィルムシミュレーション)

Profile

コハラタケル

フォトグラファー
1984年、長崎県生まれ。
仕事は家族写真、Instagramでは女性ポートレートを中心に撮影しているフリーのフォトグラファー。
絶景ではなく、誰もが日常で歩くような、なんでもないただの道での撮影を得意としている。
現在、SNSの総フォロワー数は75,000人以上。

Twitter:@takerukohara
Instagram:@takerukohara_sono1
Note:https://note.mu/takerukohara

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