【Xシリーズユーザーインタビュー】カメラが導く現在地。編集者・鈴木しのと『X-T2』
写真メディア『Photoli』をはじめ、フリーの編集者・ライターとしてさまざまなメディアでお仕事をされている鈴木しのさん。取材で地方へ赴くことも多いという彼女が常に持ち歩いているというのが、『X-T2』。公私をともにしているこのカメラは、自身にとって“写真を撮ることの楽しさと苦しみを教えてくれたもの”なのだといいます。今回は、写真やカメラの魅力を発信する側の視点で、自身のX-T2との出会いや魅力を語っていただきました。
Interview:鈴木しの
--まずは、現在に至るまでのご経歴とカメラとの関わりについて聞かせていただけますか?
書くことと撮ること、それぞれに経緯がありまして--。まずカメラに関してお話すると、興味を持ったのが美大に通っていたころ。当時お付き合いしていた彼がすごくディズニーリゾートが好きな人で、私も彼に合わせて週3〜4のペースで学校終わりに舞浜へ通っていたんですけれど、テーマパークって撮りがいがあるからか、本格的に写真を楽しむ方が結構いらっしゃるんですよね。そこで、彼がよく写真について仲間と熱く語っているのを間近で聞いていたんです。もともと私もカメラ自体には少し興味があったし、だんだん「おもしろそうだな」って思うようになったのもあって、自分のカメラを購入しました。
--好きな人の好きなものを素直に受け入れて一緒に楽しむって、素敵ですね。ちなみに、当時はそのカメラでどんなものを撮っていらっしゃったんですか?
もちろんディズニーランドもシーも撮り尽くすくらいカメラを持って周りましたし、文房具がすごく好きなのでブツ撮り的なことをしてみたり。ただ、当時「こういう写真が撮りたい!」という志があったかというとそういうわけでもなく、クオリティにこだわるというより、スマホよりはキレイに撮れるしカメラって楽しいなあというくらいでした。
--そこからカメラがどうお仕事に関わっていくのでしょう?
その後、通っていた美大を中退してデザイン系の専門学校に転入したんです。そのあたりから並行してライターのお仕事も始めたんですけれど、一眼レフを持っているかいないかでお声がけいただく仕事の内容が変わっていたりもして。それで、だんだんと書くことと合わせて撮る機会が増えてきました。今、編集者として関わっている写真メディアの『Photoli』の代表と出会ったのも、別の仕事の現場でした。私がライター、彼がフォトグラファーとして仕事をお引き受けしていて、よく話をしていたことをきっかけに「一緒に仕事しない?」って声をかけてくれました。それが昨年の12月なので、もうすぐ1年ですね。
--すでにカメラを持っている状態でX-T2を購入したのには、どんな理由が?
別の現場で知り合って仲良くなった友人がX-T2を持っていて。以前、Xユーザーインタビューに登場されたぽんずさんや古性のちさんとも交流がある、写真家の矢野拓実さんという方なんですけれど、当時彼が「X-T2、すごく良いんだよ!」と熱く語るので、試しに彼のカメラを借りてファインダー越しに街を覗いてみたんです。そしたら「なにこれ! 楽しい!」って、すごく衝撃的で。特に印象的だったのが、これまで感じたことがなかった臨場感と影の美しさ。単焦点レンズを使う機会がそれまでなかったのもあって、すごく新鮮に感じました。
--もしかしたら、それまで主にテーマパークやブツ撮りといったセッティングされた環境で撮っていたからこそ、という面もあるのかもしれませんね。
たしかに、それもあるのかも。今みたいに常に持ち歩くってこともほとんどなかったので。それで、根っからの富士フイルムユーザーの矢野さんにおすすめされるがまま(笑)、他社のものと比較するなんてこともなく、X-T2とX-T20で検討したのち、X-T2を購入しました。やっぱり純粋に富士フイルムのカメラでトキメキを感じたんだっていうところを大事にしたかったし、自分が考える“持ち歩きたくなるカメラ”にフィットしたのがX-T2だったんです。
--特にどんなところが気に入っていらっしゃいますか?
フィルムカメラっぽいちょっとレトロなデザインもこのコンパクトさも気に入っているし、部屋に飾っていてもすごくおしゃれなんですよね。カラーはオールブラックもカッコいいなと思ったんですけど、このシルバーのダイヤルに惹かれてしまったので、少しお値段上乗せしてこちらにしました。矢野さんには「高い方にしたの?!」なんて言われましたけど(笑)、すごく満足しています。
--そんなX-T2を手にして以降、カメラとの付き合い方や写真の撮り方に変化はありましたか?
以前使っていたカメラと比べて、明らかに撮る枚数も増えたし撮るものの幅も広がりましたね。それまで撮る機会の少なかったポートレートを撮るようになったし、バッグに忍ばせていつも持ち歩くようになりました。ただ、そうやってカメラに向き合うことで、クオリティとか知識といったところにも意識が向くようになって。どれだけたくさん撮っていても、プロの方にはそう簡単に及ばないということもわかったので、一時期はカメラを使うお仕事は受けませんってお断りを入れていました。
--それはまた随分きっぱりしていますね。
それでもやっぱり撮るのは楽しいし、SNSに撮ったものをアップしたりしていたんです。そしたら、それを見た方が「しのさんがX-T2で撮ったその写真が好きなんだけど、それを撮ってくれないかな?」ってお仕事を依頼してくださる方がいらっしゃって。そこからまた「好きだと言ってくださるなら……」と、だんだん撮影を伴うお仕事もお受けするようになりました。
--ある意味、X-T2が新しい視点や機会をくれたと言えるのかもしれませんね。
もう、全部X-T2です。写真を撮るのが楽しいって教えてくれたのも苦しいって思わせてくれたのも、全部(笑)。
--(笑)日々使っていて、どんなところに魅力を感じていますか?
見た目はもちろんですけれど、カバンからすっと取り出せるコンパクトさと、ファインダーを覗いたまま設定を変えられるところがすごく便利だし助かっています。ボディが大きかったり、一回一回手元を見ながらしか操作出来ないものだと、シャッターを切るまでに踏むステップが多くなってしまうので。普段、設定はマニュアルで、フィルムシミュレーションの『クラシッククローム』をよく使っています。機能をたくさん使いこなせているわけではないんですけれど、少しも飽きずにずっと撮り続けているし、いろんなところに連れて歩いているうちにすごく思い入れが深まってきて。思わず“この子”って呼んじゃうんです。
--これまでにX-T2で撮影したなかで特に印象的だったモノやコトって、なんでしょう?
たくさんあるんですけど、沖縄で撮った青空と雲は、特に気に入っています。町外れで迷子になってしまって、スマホの充電もあんまりないし、カメラを持って街をぐるぐる周るしかやることがない……っていうときに、見上げた空がすごくきれいな青色で、そこに夏らしい雲が浮かんでいて--。それと、初海外の一人旅で行った台北の街並み。初めて一人で言葉も電波も通じない場所を歩くっていうのですごく緊張していて、「もう撮りまくるしかない!」みたいな感じでひたすらシャッターを切りながら歩いたんですけど(笑)。写真を見返すとそのときの心境を思い出せるし、そういうときに写真として残すことの素晴らしさを感じたりもします。
--今後、X-T2でどんな写真を撮ってみたいですか?
撮りたいもの……。正直、まだまだ山ほどあります。それこそ『Photoli』の編集者になってからは、いろいろなバリエーションの写真を撮ってみようと意識しているので。たとえば、これまでは旅先での風景ばかりを撮ることが多かったけれど、ポートレートを撮りに行こうと友人を誘うことも増えました。自分の知っている写真の幅を広げることで、実力も上げたいし、写真の楽しみをたくさん見つけたいなと。
--偶然見つけた素敵な景色だけでなく、そのときのドキドキやトキメキまで写しとってくれる。鈴木さんはそういったカメラの魅力を『Photoli』やご自身のSNSを通じて発信する側にいらっしゃいますが、ご自身にとってカメラとはどういうものでしょう?
難しい質問……!(笑)。「カメラとは〇〇である」と、格好良く明確に答えられるほど、まだまだ写真やカメラについて知っているわけではないと思うんです。ただ、あえて言うなら、カメラとは今まで知らない喜怒哀楽を教えてくれたもの、でしょうか。わたしは写真やカメラと出会って、落ち込んだりはしゃいだりして……偶然ですが、今は『Photoli』の人間として写真の楽しさを多くの人に届けたいし届いてほしいと願いながら生きています。「写真って楽しいじゃん」ってことを、一人でも多くの人に知ってもらえるように頑張りたい。だから、それを体現する人として、わたしも写真を撮る。そんな風に考えています。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by 高見知香