【Xシリーズレビュー】フォトグラファー・wacamera〜『X-S10』で見える景色 vol.2〜
11月19日(木)に、富士フイルムから発売されたXシリーズの新機種『X-S10』。現在Xシリーズに搭載されている全てのフィルムシミュレーションを楽しめ、アップデートされた操作性を備えた一台です。今回は大阪在住で、ポートレートから風景まで幅広い撮影を手がけ、Instagramのフォロワー数は14万人を擁するフォトグラファーwacamera(@wacamera)さんにインタビュー。京都・大原や岐阜・白川郷で撮影していただいた写真とともに、新機種の魅力を紐解きます。
Interview:wacamera
――『X-S10』を使ってみた印象はいかがでしたか?
まず、「持ち運びたい」と思う大きさであったと思います。機動性という意味で重たい機材をずっと持ち歩くと身体にも疲れが出てきますが、この小ささは非常に使いやすかったですね。機能面で個人的に気に入ったのはバリアングルなのでモニター部分を裏返して閉じられること。それによって、モニターに気を取られずファインダーだけに集中した撮影もできる。普段使っている『X-Pro3』と変わらない感覚でも使えたのはありがたかったです。もちろん必要であれば開けてモニターの確認もできますし、それぞれの人の好みによって使い方が変えられるのがいいなと思いましたね。あとはバリアングル機能は今まで使っていたカメラにはなかったので、縦位置での撮影がしやすい点がいいなと思いました。
――小型、軽量でありつつ、プロ仕様のカメラに近いという印象でしょうか。
そうですね。加えて、背面にあるフォーカスレバーが私にはありがたかったです。ファインダーを覗きながらフォーカスポイントを容易に変えることができるので、私のように急いで色々撮るスタイルの人には助かるんじゃないかと。ダイヤルでいうと、普通は小型になるほど少なくなってしまい、メニュー画面での操作が増えるものですが、X-S10は表に出ているファンクションダイヤルが多いので、使いやすかったですね。
――では実際に撮影していただいた作例をもとにX-S10の使用感をお伺いします。
今回、1日目は友達と一緒に着物を着て紅葉の季節の大原に足を運びました。フィルムシミュレーションのクラシックネガが好きで富士フイルムのカメラを使い始めたところがあるんですが、クラシックネガは赤と緑が特徴的だと思っているので、それを追いかけなきゃと撮影をしていました。苔の緑と紅葉の赤も綺麗だし、明暗差がはっきりしている場所でも非常に豊かな階調だなという印象を受けましたね。
この日は全員着物を着ていて、この写真は特にお気に入りなのですが、彼女がいるところの光の美しさも着物の柄も十分きれいに残してくれたんじゃないかと。
――クラシックネガ以外のフィルムシミュレーションはいかがでしたか?
ETERNA ブリーチバイパスやACROSなども試してみました。2日目は白川郷に行ってきたんです。雪じゃない季節を撮ってみたくて。全体的に藁葺き屋根など、茶色い街なのでクラシックネガとの相性がいいなと思ったのですが、意外にETERNA ブリーチバイパスもディテールがしっかり出つつも、でも色味が抑えられてちょっとノスタルジックになる。私は実家が東京なので田舎の風景を想像しながら使ってみました。あと、青味が濃く出るACROS+Rフィルターも青空には非常に楽しい印象でしたね。
Pro Neg.Hiで撮影したコーヒーショップの写真も気に入っています。店内が暗く、外光で補って撮影しましたが、コーヒーの麻袋の質感がその場の空気感ごと切り取れましたね。麻袋の毛羽立ちも繊細に表現できた写真だと思います。
――今回、レンズ交換も楽しまれたようですが、使用感はいかがでしたか?
XF16mmF1.4R WRって使ったことがなくてすごく興味があったんですが、ピントが合っているところは非常にシャープでありながら、ボケが素晴らしい広角レンズだなと。ついついこればかり使って、「あ、他のレンズも使わなきゃ」と思うぐらい(笑)。キットレンズのXF18-55mmF2.8-4 R LM OISの方も優秀で、キットレンズのボケ味ってどんな感じかなと思って、アウトフォーカスでイルミネーションを撮ってみたんですが、キットレンズでこんな風に撮れるならすごくいいなと、普段は単焦点ばかり使う私でも思うぐらいでした。
白川郷では高台に上って撮影もしましたがズームレンズがあって良かったなと思いました。あと、ススキのふわふわ感そのものが残せている写真は普段から愛用しているXF23mmF1.4Rのレンズなんですけど、光の影の描写が綺麗で、富士フイルムのレンズらしいなと思いますね。
――ボディ内手ブレ補正が威力を発揮した作例もありますね。
暗い室内でバラを持って片手で撮影したのですが、1/60のシャッタースピードでもブレずに、ディテールまで綺麗に写すことができました。かなり手ブレ補正が効いているんじゃないかなと思います。ボディ内手ブレ補正があるだけで安心感もありますし、自分の腕が上がったんじゃないかと勘違いしてしまいますね(笑)
――今まで色々なカメラを使ってきたwacameraさんが思うX-S10の魅力はどんなところですか
レンズ交換式でクラシックネガが使えるのは『X-Pro3』と『X-T4』なんですが、やはりあの二つはボディも大きいんですよ。レンズ一体型の『X100V』ならコンパクトだけど、個人的には色々なレンズを使ってみたいから、この中間があればいいなと実は思っていたんです。私のような気持ちで使う人にはちょうど痒いところに手が届く、良い塩梅のカメラなんじゃないかなと思います。
――では必然的にそういう方にお勧めしたいですか?
そうですね。いいものは撮りたいし、いろんな機能は使いたいんだけど重たい機材は嫌だなという方や、サブ機として色々遊びたいという方にお勧めしたい一台だと思います。撮る側の“こう撮りたい”というものを叶えてくれる機能が詰まっている点はプロ機やハイアマチュア機に負けない充実ぶりですし、それでいて軽い。旅にも最適ですね。私は旅のときも必ず2台持っていくんですが、重たいカメラが2台となると、どうしてもかさばるし、重量オーバーになったりするので、片方は軽いのがいい。そういった意味でも旅行に欠かせない一台になると思いました。
※記事内に登場する人物には掲載許可を取っています