F値とボケ・明るさの関係を比較!写真の表現への活かし方も解説【Snap & Learn vol.5】
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【Snap & Learn】の連載企画では、一般によく知られている写真の撮影テクニックやカメラ関連の専門用語を集め、初心者の方にも理解しやすいように作例やイラストを用いて解説しています。
背景にボケのある写真を撮影してみたい!という憧れから、デジタル一眼カメラの購入を考える人も多いのではないでしょうか。
本記事ではボケができる仕組みや、どのように撮影すればボケのある美しい写真を撮れるかのテクニックを作例とあわせて紹介します。
原理を理解して撮影に挑むことで、イメージどおりの写真が撮れるようになるでしょう。
ボケ量を操れる『F値』とは
F値とは、レンズからイメージセンサーに取り込む光の量を数値化したものです。数値が小さくなるとより背景のボケが強くなり、それぞれのレンズで設定できる最も小さいF値を、開放F値ともいいます。
F値を大きくすると、レンズ内の絞り羽根が閉じて、光の通り道を狭めます。レンズから入る光の量が減少することでピントが合う範囲が広くなり、ボケが少なく鮮明な写真になるのです。
F値を変化させる際、絞り値を大きくすることを「一段上げる」、絞り値を小さくすることを「一段下げる」といい、多くのレンズは割り当てられているダイヤルの一目盛が、一段に相当します。レンズによって絞り値の最小と最大が異なり、調整できる光量が変わります。
F値の操作によって生じる変化
この章ではF値が変化することで写真にどのような影響があるのかを解説します。F値がどのように写真の写りに関わっているかを理解できると、ボケや明るさの調整がより容易になり、表現の幅が広がるでしょう。
ボケ量(被写界深度)
F値と切っても切れない関係であるのが被写界深度です。被写界深度をコントロールしながら撮影できると、被写体をより印象的に浮き立たせ、また風景の細部まで詳細に表現できるようになります。
被写界深度とは、設定したF値でどの範囲までピントが合うのかを表すものです。特に定量的に数値で表しませんが、ピントが合う範囲が狭いことを「被写界深度が浅い」、範囲が広いことを「被写界深度が深い」と表現します。
F値を下げて『F1.4』や『F2.0』に設定すると被写界深度は浅くなり、被写体前後がボケやすく、被写体を目立たせたい場合に有効です。反対に、F値を上げて『F8.0』や『F16』にすると被写界深度が深くなり、全体にピントが合うので風景を撮影する際に効果的です。
明るさ
F値で絞りの調整をしているとき、実はカメラ内では人間の目と同じような仕組みで露出の調整が行われています。先述したとおり、F値の調整によってレンズからイメージセンサーに入る光量が変化しますが、これは目が光を取り込むメカニズムと似ています。
明るい場所に行くと最初はまぶしいと感じますが、徐々にその明るさに慣れてきますよね。これは瞳孔が収縮し、入ってくる光の量を少なくしているからです。反対に暗い場所では、より少ない光を集めようと瞳孔が拡大し、徐々に周りが見えてきます。
カメラにおいて、この瞳孔と似た機能を果たしているパーツが絞り羽根で、F値でその大きさを表します。F値は光の取り込み量を調整することで、ボケの量を調整するだけではなく、写真のクオリティに関わる露出の調整も担っているのです。
なお、明るさはシャッタースピードやISO感度、カメラの露出設定などでも変わります。以下の記事もぜひ参考にしてみてくださいね。
シャッタースピードとは?調整して生じる効果や5つの表現方法を紹介【Snap & Learn vol.1】
カメラの露出とは?露出補正の方法と仕組みをわかりやすく解説【Snap & Learn vol.2】
ISO感度の目安を5つのシーン別に解説!適切な設定方法や仕組みも【Snap & Learn vol.3】
ブレの低減
間接的ではありますが、F値の調整でブレを抑えることも可能です。
たとえば夜間の暗い状況で、被写体をできるだけ明るく捉えたいと仮定します。このときシャッタースピードのみに頼ってしまうと、スピードを遅く設定せざるを得なくなり、被写体がブレた写真になってしまいます。しかし、ISO感度を高く設定したうえで、絞りを開く(F値を小さくする)と、シャッタースピードを速く設定したまま、被写体もブレずに適切な露出での撮影が可能となるでしょう。
F値とボケ量・明るさの関係を実際の例で比較
この章では実際の作例を見ながら、F値が変化することで写真にどのように影響するかを体感してください。以下は同じ被写体を、F値を変えながら撮影した例です。
こうして画像を比較すると、F値の効果をより具体的に感じることができるでしょう。
F値以外のボケ量を決める要因
ボケの量を決定する4大要素と呼ばれるものがあり、F値以外には下記の3つが挙げられます。
● レンズの焦点距離
● カメラと被写体の距離
● 被写体と背景の距離
筆者は、特にこれらを意識して撮影しています。次の項目で詳しく説明していきます。
レンズの焦点距離
レンズの焦点距離は、ピントを合わせたときのレンズの中心点(主点)とイメージセンサーの距離を示します。焦点距離と画角(写る範囲)は相関関係があり、焦点距離が長いほど画角が小さくなり、遠くの物を大きく写すことが可能です。また、焦点距離が長いレンズほど、同じF値でもボケ量が大きくなりやすいという特性を持ちます。
たとえば、焦点距離が200mmの望遠レンズでは、画角が狭くなることで余計な映り込みがなくなり、被写体が強調されます。さらに、背景の滑らかなボケにより、被写体をいっそう際立たせることが可能です。
このように焦点距離の長い望遠レンズは、狭い画角と大きなボケ量で被写体を際立たせることが得意なレンズといえます。
カメラと被写体の距離
レンズには最短撮影距離(ピントが合う最短距離)があります。そのためレンズにより被写体に近づける距離が異なりますが、最短撮影距離までカメラを近づけて撮影すると、被写界深度が最も浅くなり背景のボケ量が大きくなります。
たとえば、群生している小さな花を撮影するときなど、カメラのレンズを焦点の合うギリギリの距離で1輪の花にピントを合わせて撮影すると、前後にある花が美しくボケて幻想的な写真を撮影できます。
被写体と背景の距離
背景をボカしたい場合は、被写体と背景の距離を取ることが重要です。ピントを合わせた位置から背景までの距離を遠ざけるとボケ量も大きくなります。
例えば、ボカした花畑を背景にポートレートを撮影したい場合、まず構図を決め、モデルさんには花畑の手前に立ってもらいバストアップで撮影します。すると狙ったとおり、花畑がきれいにボケた写真を撮影できるでしょう。
F値を自在に操る『絞り優先(A)』モード
撮影者が設定したF値に合わせて、自動でISO感度やシャッタースピードを適切な露出に変更してくれる機能が『絞り優先(A)』モードです。
このモードに設定するメリットは、カメラ側の設定は絞りのみで、ボケ量のコントロールに集中できること。そのためカメラの設定に追われることなく、被写体の構図・ライティングにより集中でき、撮影者の意図通りのクリエイティブな作品作りに集中しやすくなります。
たとえば、晴れや曇りなどの天候に合わせて、露出設定をカメラ側で行ってくれます。そのため、撮影者はF値の設定でボケ量をコントロールした後、カメラ設定に追われることなく構図やライティングに気を配り、理想の1枚を追い求められる撮影モードといえます。
キラキラ華やかな印象に!F値の調整で作る“玉ボケ”
玉ボケとは、木漏れ日や水面の煌めき、イルミネーションなどの点光源が綺麗に玉のようにボケる現象を指します。富士フイルムが提供するXシリーズのレンズはすべて円形絞りを採用しているので、この玉ボケを作ることが得意です。
一般的な絞りは、絞り羽根が一定のR(※)で作られているため、絞ってしまうと多角形となり、ボケの形も多角形となってしまいます。そのため開放F値でしか玉ボケを作ることができません。(※Rとは、曲線を作る半径のことを指します)
しかし、Xシリーズのレンズでは、開放F値から、少し絞った状態でも真円に近い絞り形状となるように設計されています。そのため開放F値にこだわらず、絞り値を調整した玉ボケ写真を撮ることができるのです。
玉ボケを作るコツはイルミネーションのような点光源を探し、カメラと被写体、背景の距離を意識し撮影すること。
たとえば、木々からの木漏れ日や川面の反射、電球やイルミネーションからある程度距離を取り、カメラの近くに被写体を配置し構図を決めます。絞りは開放F値付近に設定する事を忘れずにシャッターを切れば、背景には美しい玉ボケが現れるでしょう。
以下は玉ボケの作例です。ぜひ参考にしてみてください。
F値でボケ量を操って写真の表現に活かそう
F値とボケの関係は理解できたでしょうか?デジタル一眼カメラに初めて触れた人は、まず開放F値で身近な人や物、ペットを撮影してみることをおすすめします。
手軽にデジタル一眼カメラらしい表現ができる開放F値で、何気ない日常を美しく切り取ることができれば、より撮影が楽しくなりもっとほかの表現も試してみたくなることでしょう。
『X-T50』の魅力を紹介
何気ない日常をよりクリエイティブに表現でき富士フイルム『X-T50』。約4020万画素の高解像度センサーや、高機能なボディ内手ぶれ補正機構が搭載されているにもかかわらず、本体重量はメモリーカード、バッテリーを含めてもわずか438gと軽量。
『絞り優先モード』は、どのようなシーンでも手軽に、よりクリエイティブな表現を実現できます。ぜひ試してみてください。
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