ちっちゃいのに“全部入り”の『X-T5』は、僕らが思い描いた理想の写真機。〜記憶カメラ vol.1〜
富士フイルムとユーザーのみんなが対話するきっかけになれば、
とコラムを書いてみることにしました。
はじめまして、こんにちは。ふだんは写真やカメラについてのブログ『記憶カメラ』を書いている、いわゆる中の人です。このたび、ひょんなことからこの富士フイルムの公式メディア『IRODORI』に愛するカメラと写真のことを書いてみませんか?とお声がけをいただいたので、恐れ多くもブログのようにこのコラムを書き始めています。
IRODORIの編集担当の方々には「僕はただのブロガーで、本格的に写真を撮っている人間ではないのですが、本当に僕がコラムなど書いていいのですか?」とおたずねしたところ、「富士フイルムファンの代表の一人として、思いの丈を書いていただければ」とあたたかいお言葉をいただいたので、ならば富士フイルムと僕らユーザーが対話できるきっかけになればと思っています。
これから3回シリーズで、僕がこよなく愛する富士フイルムのカメラたちと、それらで撮れる写真にまつわる話をしていこうと思いますが、僕が書くのは富士フイルムファンとしての第一声みたいなもので、この声を踏み台にしてもらって(笑)、いろんな富士フイルムユーザーの声が飛び交うことが理想です。そのためなら、富士フイルムファンを代表して……などというおこがましいオーダーにも恥ずかしながら応えてみようと。
では、前書きはこのくらいにして、コラムの第一回は『X-T5』について書き始めたいと思います。これ以降は、普段通りのブログを書く口調で綴っていくのでご了承を(笑)。読みながら「じぶんだったら、こう思うなぁ」などと考えたりしてもらって、いっしょに『X-T5』のイメージを膨らませてもらえたらと思います。
はじめに、富士フイルムさんへ、『X-T5』についてこんな質問をしてみました。
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Q. 記憶カメラからの質問
Xシリーズ誕生から10年以上が経過し、社内で「もう写真機ジャンルの製品は無くてもいいのでは?」という声が出たりはされなかったのですか?
A. 富士フイルムさんからの回答
お陰様で世界的に販売が好調なこともあり、そのような意見は全く聞かれなかったです。但し、5世代目を企画するにあたり、改めて「X-Tシリーズって何だっけ?」というディスカッションは何度も行いました。それを経て“原点回帰”というコンセプトが固まりました。
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コラムを書かせていただくにあたり、富士フイルムファンとして最も気になっていることをストレートにお聞きしてみました。なかなか公式には答えづらいところを無理して回答いただいたのではと思いますが、これ以上に心強いコメントはありません。では、僕も自信を持って『X-T5』愛を綴っていきます。
そもそも僕が富士フイルムのカメラを愛しているのは、X100シリーズやX-Proシリーズから始まった“いかにも写真機らしい作り”によるところが大きい。フィルムカメラで写真撮影を楽しんでいた者としては、そのクラシックなデザイン、ダイヤルオペレーションの操作性、フィルムシミュレーションの描写など、とにかく“らしさ”が色濃く堪能できるXシリーズは、まず何を撮っていても楽しい。
そんな富士フイルムのカメラは、ラインナップのなかでそれぞれ撮影目的や方向性を明確に分けたりしているので、比較的“とんがったカメラ”が多い。もちろん、用途に合わせてカメラを各種使い分けるのも楽しいのだけど、「一台であれもこれも理想を満たしてくれるカメラがあるといいのに」と思うこともまた事実。そんなところに現れたのが、この『X-T5』だったのである。
“写真機への原点回帰”と銘打って、
小型化されて出てきた『X-T5』には、ほんと驚いた。
世はミラーレス機全盛で、各社ともハイテク性能がどんどん上がっていること自体は喜ばしいことだけど、同時にどんどんカメラやレンズが大型化していることは個人的にとても気になっていた。もちろん、もっとコンパクトで軽快に日常スナップを楽しめる最新カメラがあればいいのに、という意味でだ。
そんな風潮の中、突如『X-T5』が「より小さくなって」「より写真機らしい使用感」という、他所とはちょっと様子の異なる“進化”を新製品として形にしてきたのである。クラシックなスタイルのカメラが好きな僕ですら、新製品がここまで写真機に振り切って現代に登場するとは思っていなかったから、ほんとにちょっと驚いた。
しかも、その小さなボディに“全部入り”なのである。この“全部入り”という概念も他社とは異なる。フィルムカメラを思わせるクラシックなダイヤルデザインはそのままに、4000万画素を超える高画素機としてアップデートされ、強力な手ブレ補正機構があって、最大2倍までデジタルテレコンが使えるなど、これでもかというくらい最新の中身でありながら、その軽量コンパクトさっぷりは、これぞAPS-Cセンサーを採用している真骨頂といった出来栄えなのである。
そう、僕らは大きく重い最新のカメラが欲しかったんじゃなくて、小さくて軽い、あのフイルムカメラで軽快に撮るようなジャストサイズの最新式写真機が欲しかったのだ。『X100V』と『X-Pro3』を持っていた僕だけど、これはある意味「究極の理想の写真機だ」と感じて、思わず予約して手に入れることとなった。
だんだんとその描写力の違いが癖になってくる、
高画素センサー機としての『X-T5』
僕のようなアマチュア写真愛好家が趣味で撮影を楽しんだり、ブログに写真を載せるような使い方であれば、なにも高画素機じゃなくてもいいのにと最初は思っていた。けれど、撮り続けていると、だんだんとその描写の濃密さみたいな違いがわかってくる。そして、それはクロップ撮影にも心強い性能であることを実感してくる。
最新のフィルムシミュレーションのひとつである『ノスタルジックネガ』も写真機としての郷愁を誘うなんとも艶のある写りで、これもまた『X100V』や『X-Pro3』にはない『X-T5』らしい楽しみ方で、これまで撮りなれていた光景がとても新鮮に見える。X-Tシリーズは「10年は使ってもらえる、長く使ってもらえるカメラ」として開発していると聞いたことがあるが、この『X-T5』も長く使い込むとジワジワとその魅力や愛着が湧くカメラだと感じている。
いかにもノスタルジックなその存在感が、
“写真を撮るじぶん”をキラキラとさせてくれる
これはちょっと小っ恥ずかしい表現ではあるけど、惜しげもなく言葉にすると“『X-T5』といるじぶん”というのがとても愛おしく思えてくる。そんな存在感がこのカメラにはある。僕の『X-T5』はシルバーボディなんだけど、これも写真機とじぶんの姿をイメージして、クラシックな雰囲気をいつも楽しみたいなと思ってチョイスしたもの。特別な塗装が施されたブラックボディもかっこいいけど、僕にはシルバーの『X-T5』がビタミン効果のように効いている(笑)
どこに連れて行っても、そのクラシックな佇まいは威圧感がなく、光景に溶け込むようなところもあると思っている。テーブルの上に上着や帽子なんかといっしょにさりげなく置いていても絵になるし、散歩道や街中なんかでも必要以上に目立たず、自然体でスナップ撮影を楽しむことができる。小さく軽いことは、こういうシーンでもとても秀逸だ。
あと、クラシックなデザインゆえに、オールドレンズも実によく似合うし、僕なんかは古いフジノンレンズを好んで合わせて使っている。フジノンレンズはAPS-C用としてコンパクトに作られているし、値段もフルサイズ用に比べたら安く手に入れられるから、『X-T5』を手にしたらレンズ交換の醍醐味も堪能できると思う。
そう、僕はこの『X-T5』のことを、その開発思想から気に入っていて、小粋なクラシックなボディに“全部入り”を実現した、まさに理想の現代写真機だと思っている。なので、IRODORIさんにコラムを頼まれたからお世辞で書いているのではなく、誰に頼まれることもなくふだんからこんな感じでブログに愛するカメラたちのことを書いているのである。
でも、これはあくまで僕にとっての『X-T5』像で、使っている人それぞれに“愛し方”があると思う。そんなたくさんの富士フイルム愛をユーザーと富士フイルムさんとの間でなにかしら対話できれば、というのがこのコラムを書かせていただいた動機です。このコラムが紹介されたX(旧Twitter)やInstagramに「富士フイルムさんに質問してみたいこと」を寄せてもらえたら、もしかしたら次回、僕からお聞きしてみるかもしれません(笑)。
さて、2024年という新しい年が始まり、なにか新しいことをやってみようと考えるタイミングで今回のコラムの話をいただきました。このコラムがまた次の誰かの“写真と富士フイルムのカメラのある日常”へと繋がるバトンのようなものになればいいなと思っています。次の第2回&第3回コラムも、どのカメラをとりあげようかなど楽しく思案中です。少しずつコラムの質が上がるようにも努めていきますので、ブログ同様、どうぞよろしくお願いします。