『X-T20』を片手に吉祥寺フォトウォーク!ハーモニカ横丁からこだわり満載のコーヒースタンド、最新アートスポットをご紹介
【IRODORIシティスポット〜吉祥寺篇〜】
「住みたい街」との呼び声も高い、吉祥寺。大型百貨店もあれば、老若男女が行き交う商店街やこだわりたっぷりの個人商店、ローカル感満載な路地など、スポットごとに異なる顔を持つ人気の街です。昨年秋には、吉祥寺イズムを再熱させるミニシアターが登場、最近では、台湾発の茶房やスイーツ店が点在する「リトル台湾」としても注目を集めています。今回は、そんな吉祥寺の定番&注目スポットを「X-T20」で撮影した写真とともにご紹介。おいしいコーヒーを飲みながら、井の頭恩賜公園の新鮮な空気をいっぱい吸って頭をからっぽにしてみたら、なんでもない風景がスペシャルな一枚に変わりました。
井の頭恩賜公園
井の頭恩賜公園といえば、開園から100年以上の歴史を持ち、幅広い世代に愛される吉祥寺の代表スポット。1月下旬から3月末にかけては、水を抜いて池を浄化する「かいぼり」の真っ最中。いつもはボートでにぎわう井の頭池の水面も、この時期はぽっかりすっからかん。代わりに聴こえてくる木々や枯れ草が揺れる音を楽しむうち、歩くテンポも自然とゆるやかに。
まっさらな池底に流れる水脈や木枝が織り成す陰影は、思わず何度も足を止めてしまうほどの美しさ。数日前に降った雪とも相まって、まるでモノクロの世界に立っているよう。公園のように広い場所では、画面を横に三分割して景色を切り取る「三分割構図」がおすすめ。ガランとした池底、雪景色、枯れ枝の樹々と冬らしい要素が詰まった1枚は、ピンと張り詰めた空気と静けさをも感じさせてくれます。
公園内を歩きながら見つけた冬の色たち。要素を詰め込み過ぎず、四隅に余白を意識して撮影。素敵な風景を上手に切り取るためのポイントです。
周囲を囲むことで景色を強調する「額縁構図」を取り入れ、駅舎の窓に映る公園の木々がまるで額に飾られた風景のように見せたアートな一枚。アドバンストフィルター「ポップカラー」によって鮮やかさを強調しなにげない風景に芸術性が吹き込まれました。
井の頭池に浮かぶ白鳥ボートたちも、かいぼり期間中はおやすみモード。ひょっこり並ぶ姿をアドバンストフィルター「ポップカラー」で撮れば、思わずくすっと笑ってしまうシュールで可愛い一枚に。
LIGHT UP COFFEE
一番街商店街を抜けた先にある『LIGHT UP COFFEE』は、爽やかなライトブルーの入り口が目印。産地特性を大切にし、コーヒー本来のうまみにこだわった自家焙煎の豆で淹れる一杯には、コーヒー豆が農作物であることを感じさせてくれる新しい味覚体験と、その先にある栽培農家の方々へのリスペクトが凝縮されています。
店内からフィルムシミュレーション「ASTIA」でドアを撮影。光が注ぎ込む方向へレンズを向けることで、クリアで柔らかい雰囲気を演出することが出来ます。
壁際に並ぶオリジナルデザインのグッズやコーヒー豆は、ギフトにぴったり。もちろん自分へのお土産にも!
ハンドドリップで丁寧にコーヒーを入れながら、バリスタさんが豆の産地や味の特徴を教えてくれます。お話の途中にふわりと漂ってくるコーヒーとは思えないほどジューシーな香りに、思わず目を閉じて深呼吸。
コーヒーに添えられたカードには、味の特徴や産地の情報など、一杯をより深く楽しめる情報が。ひとくち飲むたび「それぞれの豆に産地があって、そこで働く農家の人たちの暮らしがある」というバリスタさんの言葉が沁み入ります。
今回は、エチオピアの豆「KAYO」のドリップと冬季限定のラム入りカフェラテをチョイス。エスプレッソは、瑞々しい果汁を思い起こさせる清涼感とベリーのような酸味の後味。冬季限定のラム入りラテは、口に触れる瞬間のやわらかさと深く甘い香りに思わず感動! こっくり濃厚なミルクとほんのり香るラムに心もカラダもぽかぽか。刺すような寒さもこのためだ!と思える、至福の一杯です。
Spot Information
book obscura
井の頭恩賜公園を三鷹方面へ抜け、路地を曲がった先に現れるのが、写真集を中心にアートブックなどを取り扱う『book obscura』。写真をこよなく愛する店主が迎え入れてくれる、昨年秋にオープンしたばかりの新しい注目スポットです。店名候補が『家んち(うちんち)』だったというだけあって、まるで知人の家にお邪魔してお茶をしているかのように優しくリラックスできる空間です。
窓枠やドアなど、さまざまな四角形で構成されたお店の外観は、その造形を生かして左右の余白を均等にとり真正面から整然と。斜めに射す光と影が絶妙な引っかかりを感じさせる、シンプルながらテクニックの詰まった一枚。
店内には、それぞれ国や年代の異なる写真集やアートブックがずらり。書棚は、店主独自の視点とこだわりで並べた「見てもらいたい順」。そこには、作家・作品名ではなく写真そのものと出会ってほしいという気持ちが込められています。
「写真は、私にとって薬。本当はどれも買っていってほしくないくらい」と笑う店主の黒﨑さん。2週間ごとに入れ替えられる壁面の展示に合わせて、作品を味覚で味わえるコーヒーを丁寧に淹れてくれます。この日は、新納翔氏の『PEELING CITY 都市を剥ぐ 』刊行記念展示に合わせたエチオピア ゲデブのドリップ。作品にインスピレーションを得て、「嘘/殻/表層」と「本質」を同時に表現できるようなコーヒーを追求。一般的には浅煎りで味わうエチオピアのゲデブ地方のコーヒー豆を特別に深く焙煎してもらうことで、香ばしさの奥にある本質=コーヒー本来の果実味を感じられる一杯となっています。
書棚なデスク上に並べられた写真集を手に取り、写真家の生まれた時代背景や当時の印刷技術などを愛情たっぷりに語ってくれる黒﨑さん。「一見同じように見える写真も年代によって印刷技術や紙質が異なるんです。そういった背景を知ると、まったく別のものに見えてきますよね。まるでカットが違う宝石と同じ。だから、じっくり見て“これだ!”と思う一枚に出会ってもらえればうれしいです」。
明るくほっこりリラックスできる空気感の店内は、フィルムシミュレーション「クラシッククローム」で撮影。木製家具や書棚に並ぶ写真・アートブックの手触りまで蘇るような写真に仕上がりました。
椅子に腰掛け、壁面に展示された写真やアートブックを眺めていると、不思議とファインダーを覗きたくなってきます。何気ない風景のなかにある私にしか見えない瞬間との出会いに期待して、「book obscura」を後にするのでした。
Spot Information
ハーモニカ横丁
日が暮れてきたので、井の頭恩賜公園の反対側に位置するハーモニカ横丁へ。ぽつぽつと赤提灯がつき始めた路地には、ほんのりおいしい香りが漂います。終戦後、闇市として始まったこの横丁は、リアルな昭和の雰囲気がそのまま残った空間。ごはん屋さんに焼き鳥屋さん、衣料品店、お花屋さんなどが並ぶ迷路のように狭く入り組んだ路地は、人々の生活に深く根付きつつ、一歩踏み入れればワクワクさせてくれる魅惑のローカルマーケットなのです。
ハーモニカ横丁らしいレトロな風景は、アドバンストフィルター「トイカメラ」で撮影。周辺光量を落とし、被写体をくっきりと浮かび上がらせることで、寂れたトタンの質感と鮮やかなお花とのコントラストが印象的な一枚に。ポイ捨て喚起の貼り紙がじわじわポイント。
ハーモニカ横丁のシンボル、赤提灯の下を歩いていると、まるでどこかアジアの国に来たような気分に。吉祥寺駅からたった2分でショートトリップ気分を楽しめました。
「温故知新」ということばがぴったりの吉祥寺は、日常に新しい視点を与えてくれる街。観光地では出会えない、あたりまえのなかのとっておきを探しに、「X-T20」と出掛けてみませんか?
取材協力:武蔵野市フィルムコミッション
吉祥寺 ハーモニカ横丁
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by こばやしかをる