生活の中の妻とごはんを撮る僕の方法 AKIPIN vol.2〜秋の食卓〜

こんにちは。AKIPIN(@akipinnote)です。教育機関に勤めながら、結婚15年になる妻と5歳の娘と暮らしている、39歳の男です。
妻のごはんと、それを作っている妻の姿を撮ることが特に好きです。
前回のコラムでは、僕が思う“家の中の写真を撮る喜び”について書かせていただきました。
今回は、僕が妻のごはんと妻の姿を撮っている方法について、できる限り抽象的ではなく具体的にご紹介してみたいと思います。いずれも僕の実体験によるシンプルなことばかりです。
一言でいうと、“一つの場面でもバリエーション豊かに撮ることを意識して動く”ということです。
僕にとって写真は、SNSを通じて自己表現をするものになっていると同時に、いつもの生活を記録するものでありたいため、撮る対象に僕が手を加えないことをマイルールにしています。写真映えするよう妻の動きや食器の並べ方に手を加え始めると、僕が撮りたい“いつもの生活”から離れていくとともに、もしかしたら時間がかかり、たぶん、妻の機嫌がわるくなるからです。たぶんです。
あるとき、ポートレートのフォトグラファーが、地面に這いつくばってまで新しいアングルから撮っている様子を見て、すばらしいなぁと感銘を受けました。当然かもしれませんが、写真って、被写体と自分の掛け合わせですよね。被写体を変えなくても自分が変われば、つまり動けば、そのぶん別の新鮮な美しさに気づけるものです。
僕の写真は大きく、“ごはんを作っている妻の姿”と“できあがったごはん”の2つがあります。
まず、前者のごはんを作っている妻の姿を撮るとき選択肢にあるのは、下記の動きです。
1)正面から撮る
2)斜め前から撮る
3)真横から撮る
4)肩越しから撮る
5)二の腕越しから撮る
6)椅子の上から撮る
7)踏み台の上から撮る
8)壁やカウンターなどの設備の陰から
9)ふきんやお玉などの道具の陰から
1)〜5)のアングルについては、そのまんまですね。僕の写真をご覧いただければわかっていただけると思います。このように動いて撮る中で、光と影が絶妙に噛み合った角度に出会うことがあります。
肩越しから撮るときは肩が、二の腕越しから撮るときは二の腕が、少しだけ写りこむように撮るのが好きです。
ただし、このとき妻が急に後ろに動いてきてぶつかるリスクがあるので、いつでもピョーン!と飛び退けるよう体重は後ろに残しておきます。いつでもピョーン!です。なぜなら、“生活の写真を撮ること”より大切なものが“生活そのもの”だと思っていて、そして妻のいつものペースを乱してしまうとたぶん、妻の機嫌がわるくなるからです。たぶんです。
椅子の上から撮ることや、踏み台の上から撮ることも単純なことですが、椅子から見下ろせば、お鍋や器に入った、できたてもしくは作っている途中の料理をしっかり写すことができます。そして、わが家には5歳の娘のために台所にミッフィーちゃんの踏み台がおいてあるのですが、ときどきこっそりそれを動かして乗って、妻の肩越しから手元を見下ろすように撮っています。ミッフィーちゃんはミシミシいってます(笑)
設備や道具の陰から撮ることは角度ではなく距離感のことですね。キッチンの壁やカウンター、リビング入り口の壁、シンクの上に伸びる水栓、引っ掛けているふきんやお玉、立ててある菜箸や花瓶の花……カメラと対象との間を何かが少し遮ることで、写真の中に“距離感”が生まれる。あるいは“覗き見”しているような感じが出る。
そして同時に、“たとえ遮られても、あるいは遮られるからこそ、それを見たい”という切実さのようなものが立ちのぼると感じます。これも、写真のバリエーションになります。
僕はそんな感じで、ごはんを作っている妻の姿を撮っています。
次に、できあがったごはんを撮るときには、次の瞬間や角度を意識しています。
1)できあがったごはんを妻が置く瞬間
2)すべての器が揃った場面
3)「いただきます」と手を合わせた瞬間
4)人がお箸でごはんを掴むところを正面から、斜めから、肩越しから
5)自分のごはんを真上や斜めから
6)特においしそうだと思う一品をアップで
7)自分の椅子から見える人のごはんや顔
いつものごはんを食べ始めるときに次々に立ち現れるこんな瞬間や角度が、僕は大好きです。
以上、僕が写真を撮る際に必要な方法を具体的にご紹介しましたが、これらに加えて、僕にとって必要なものがあります。それは、富士フイルムのミラーレスカメラとそのフィルムシミュレーション・クラシッククロームの色味、そして単焦点のフジノンレンズ『XF50mmF2 R WR』の画角です。
僕が普段使っているX-T10はコンパクトですが、身長179cmで大きめな僕の手にもフィットします。そしてクラシッククロームの色味はそのままでとても好きなんですが、パソコンで色を調整する際にもベースとなって活きてきて、僕が写真に求める渋味を生んでくれます。
でも、僕にいちばん欠かせないのはXF50mmF2のレンズかもしれません。
いわゆる中望遠に位置づけられるレンズで、ごはんが並んだ食卓の撮影に最強の力を発揮します。器たちは歪まず本来の形状を保ったまま、周りの器たちと距離感を縮め、親密な一体感を醸し出すのです。
以上、単純なことばかりですが、写真を撮るときにこころがけていることをご紹介させていただきました。
こんな方法によって僕がカメラに残した写真を、妻は、一人でじーっと見ていることがあります。自分が一生懸命作ったごはんが写真に残っていることを、たぶん喜んでくれているのです。たぶん、じゃなくて、きっと間違いなく。
皆さんもぜひ、ごはんの写真を撮ってみませんか。
僕のコラムは次で最終回。またぜひお読みいただけるとうれしいです。
今回登場したレンズ


