ファインダー越しの景色を着替える、クラシッククローム散歩〜片渕ゆり(ぽんず)vol.3〜
こんにちは。片渕ゆり(@yuriponzuu)と申します。ふだんは“ぽんず”とも呼ばれています。
デジタルカメラでも、“フィルムを選んで撮る” 感覚のように色調や階調をコントロールできる機能が、Xシリーズのフィルムシミュレーション。「奥深いフィルムシミュレーションの魅力を再発見したい!」という気持ちで始まったこの連載ですが、第3回は、私自身がもっとも溺愛しているクラシッククロームで撮影しました。
フィルムシミュレーションといえば、”フィルムの色を再現している”というイメージをお持ちの方も多いはず。ですが、実は、クラシッククロームは特定のフィルムの再現ではないんです。
クラシッククロームの画作りは、オリジナルに作られたもの。”単なる事実を写した画像ではなく、撮影者の視座や思いが込められた写真へ”という思いのもと、フォトジャーナリストの方たちの声を反映して生まれたものなのだそう。
そんなクラシッククロームの特徴は、わずかに渋みを含んだ色彩と、シリアスな色彩。デジタル画像でありながら、印刷物を眺めているような気持ちにさせる印象です。
今回は、お仕事の都合で短期移住中の北海道にて、日常とお散歩の写真を撮影してみました。
お行儀よく並ぶ玄関のスリッパたちに差し込む、朝の光。クラシッククロームを使うと影のコントラストがしっかり際立つので、スポットライトを浴びたような仕上がりに。
こちらもスリッパと同じく、差し込む光の美しさにはっとしてシャッターを切った一枚。日常の中にある美しい瞬間をあぶり出してくれる力が、クラシッククロームにはあると思っています。
美しいだけでなく、どこか憂いを帯びた印象に仕上がるのも、クラシッククロームが好きな理由のひとつ。メインの被写体だけでなく、その影にまで表情を与えてくれます。
クラシッククロームは、青空の表現にこだわって作られているそう。だからこそ、ふと見上げた空もドラマチックに。どこか懐かしいような気持ちを覚える、ノスタルジックなブルーです。
パステル調の淡い風景も、ただ甘いだけでなく、ひとさじの切なさや儚さまで含んだ印象に仕上がります。
クラシッククロームで撮った夕方の空のトーンも、お気に入り。ちなみに手前に写っている物体は、山……ではなくて、山のように積まれた車道脇の雪。除雪された雪が積もって、場所によっては私の身長よりも高くなっているんです。
たとえ被写体がポップでも、”かわいい”だけでは終わらせない余韻のようなものを与えてくれます。「このあと何かが起こるのでは?」と、ついついストーリーを想像したくなるような。
ずらりと並んでいるのは、手作りのキャンドル。キャンドルの透明感と、静かで乾いた空気まで閉じ込めることができて大満足。
クラシッククロームで撮る景色は、ドラマチック。だけどそれが決してわざとらしくないところが好きだな、と常々思っています。
クラシッククロームで撮ったことのある人なら共感してくれるのではないかと思うのですが、クラシッククロームは、撮る人自身の”ドラマチックを見つける姿勢”を後押ししてくれる存在。
オレンジともピンクとも言えない、やわらかなキャンドルの光。レタッチせずともこの色が出せて嬉しい。
近所の道路で撮った一枚は、壁に映る街灯の光がどこかミステリアスに仕上がりました。
フィルムシミュレーションを切り替えるたび、新しい撮り方をしてみたくなったり、ふだんは撮らないものも撮ってみたくなったりする。だからこそ、飽きもせずに毎日カメラと過ごしたくなる。だからもっと写真を好きになるーー。
フィルムシミュレーションの生み出す楽しいループの中で、これからもずっと撮り続けていけたらと思っています。
連載は今回で一旦完結となります。お散歩にお付き合いいただき、ありがとうございました。それでは、また会える日まで!