【Xシリーズ ユーザーインタビュー】ILUCA magazine共同代表・新井まるが語る『X-E3』とともに過ごす日々
「彩りコラム」でもおなじみ、ILUCA magazine共同代表の新井まるさん。幼少期からあらゆるアートを目にし、さまざまな表現に触れてきたまるさんが「X-E3」で撮影するのは、毎日のふとした瞬間。その写真には、日常に散らばるきらめきがあふれています。今回は、まるさんにとってのカメラ・写真と、表現の幅を広げてくれるお気に入りの機能、そして「X-E3」と過ごす日々のなかで感じた魅力について語っていただきました。
Interview:新井まる
「二度と戻らない瞬間を閉じ込めたくて……」
――普段からさまざまなアートに触れているまるさんにとって、写真とはどういうものでしょう?
以前、『世界はこんなにも美しい』というテーマでコラムを書かせていただいたんですけど、「きれいだな」って思わず息をのむ瞬間が、毎日どこかに散りばめられていて。写真は、そういう二度ともどらない瞬間を、心の動きと一緒にまるごと閉じ込めるためのもの……でしょうか。たとえば、印象派の絵画って、その瞬間の空気感や光をとらえて描かれていますよね、それに近い感覚で写真を撮っているのかもしれないです。「これだ!」と思う瞬間を逃さないようにリュックにはいつも「X-E3」を入れています。
――たしかに、まるさんの写真は日常のふとした瞬間をそっと手で捕まえたような印象です。学校で写真について学ばれたこともあるそうですね。
通っていた高校の選択授業に写真の授業があって、結構本格的に暗室でフィルムを現像したりしていました。高校2年生でアメリカに留学したんですけど、そこでも写真の授業をとっていて。フィルムカメラでモノクロ写真を撮るんですが、シャッタースピードや絞りを調整して撮ったり、現像の仕方を変えてみたりプリントする紙の質による違いを見てみたり。実験室みたいで楽しかったですね。バックパッカーで世界をまわったときもフィルムとデジタル両方持っていきました。どこかに旅行へ行くときは、「写ルンです」もよく使っていましたね。
――写真について学んだり、ご自身で撮影するうえで影響を受けた人はいますか?
“特定の誰か”というよりは、写真に限らずいろんなアーティストに影響を受けているのかもしれないです。両親がイラストレーターということもあって、小さい頃からよく美術館に連れて行かれてました。家では、おもちゃ代わりに与えられた色鉛筆や水彩絵の具でよく絵を描いていましたね。画集もたくさんあって、中でもお気に入りだったのがデイヴィッド・ホックニーのプールの絵。水面に反射する光ってどう描くんだろう?」ってマネして描いてみたり……。光って、写真にとっても重要ですよね。無意識にそういうところがつながっているのかもしれません。
――今まで見た中で印象に残っている作品や好きな写真家は?
いろいろあるのですが、今いちばん気になっているのは小川信治さんという謎だらけのアーティストです。小川さんの作品は油絵や鉛筆画、映像やインスタレーションと表現方法は様々なんですが、「世界とはなにか」をテーマに作品を作っていて。パッと見写真に見えるほど緻密な鉛筆画など、超絶技巧がものすごいのですが、個人的には小川さんの魅力は宇宙的視点だと思っています。昨年取材をさせていただき、今は文通のようにやり取りをしながら記事を組み立てているところで……。girls Artalkに掲載されたら、ぜひ読んでいただきたいです!あとは、森山大道さんの写真も好きです。かなり昔、どこかでもらってきたDMが森山さんの写真で。お気に入りだったので、ベッドに横たわって眺められるよう天井に貼っていたことがあります。いつか本物をかざりたいですね(笑)。
「X-E3は心が感じた色をピタッと捉えてくれる」
――フィルムカメラの楽しみ方を知るまるさんから見た、「X-E3」の魅力とはどんなところでしょう?
やっぱり一番は、心が感じた色をピタッと捉えてくれる、色表現のすばらしさです。コラムでも写真と記憶について書かせていただいたんですが、私は記憶の方法が写真のアルバムに似ているんです。印象的な色や場面が写真みたいに一枚の画として記憶に残るということが多くて、それを写真にして残したいと思っていても今までなかなか難しかったんですよね。スマホで撮った写真にフィルターをかけたりして、質感や色味を近づけようとしても、やっぱり違う。その点「X-E3」は、パレットで絵の具の色を混ぜるように、心の動きにあわせた「色」で写真に残せるので、撮るのがすっごく楽しいです。また、軽さと見た目も気に入っています。「X-E3」で撮っていると、よく友だちに「これ、デジタルなの?」って驚かれるんです(笑)。
――普段よく使う機能やお気に入りのフィルムシミュレーションは?
普段、フルオート(アドバンストSRオート)と通常の撮影でよく切り替えて撮っているんですけど、通常の撮影で撮るときは、フィルムシミュレーション「ACROS」「モノクロ」に設定することが多いです。最近は、「クラシッククローム」もお気に入り。いろいろ試したなかで、一番フラットに撮れる気がしています。
あとは私の場合、仕事柄アート展で写真を撮ることが多いんですけど、暗い会場だと色がきれいに写らなかったり、ピントが合わなかったりして。取材時間も限られているし、そういう場所できれいに撮るのはすごく難しいと感じていたんですけど、「X-E3」は高感度に強く、暗い会場でも綺麗に撮れるので助かっています。
「X-E3」をもっと使いこなすには?
ここで、「X-E3」をより使いこなせるようになりたいという新井まるさんに、富士フイルム社員・奥山さん(以下敬称略)からちょっとしたアドバイスが。
奥山:美術館みたいに静かなところでは、「電子シャッター」に設定すればシャッター音が出ないのでおすすめですよ。
シャッター音を消せるんですか? それはうれしい機能ですね。あと、人物はもうちょっとエモーショナルな感じで撮れたらいいなと思っているんですが、どんなフィルターが最適ですか?
奥山:柔らかで人の肌色が映える「ASTIA」も人物向きですが、まるさんが撮りたい雰囲気には、ドキュメンタリー調の画が撮れる「クラシッククローム」がぴったりかなと。
なるほど〜。これからはそういったフィルター設定や、いろいろ細かい設定にも挑戦してみたいですね。
――最後に、まるさんの写真のように素敵な瞬間を収めるためのコツを教えてください。
プロではないので、コツをお伝えできるか不安ですが(笑)。構図などはきっちり考えていなくて、フィーリングで決めることが多いんですけど、斜めのラインが好きなのでよく画面のなかに取り入れています。……でも、きっと、難しいことを考えるよりも、一番大切なのは「撮りたい!」っていう衝動や、写真を撮るのを楽しむ気持ちなのかなと思います!
これからも「X-E3」と毎日一緒に出掛けて、すてきな瞬間をたくさん集めていけたら嬉しいです。
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取材協力:COUZT CAFE
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by 高見知香