【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・高木慎平と『X100Ⅵ』 “自分らしさ”を振り解いて、踊るように世界を写す
フリーランスフォトグラファーとして、企業の広告から個人のマタニティフォト、ファッションシューティングまで幅広く撮影を手掛ける高木慎平さん(@Shimpei65)。そのビビッドでどこかアイロニックな世界観と、同じくフォトグラファーのパートナー・YUIさんを被写体に海外の都市で撮影される写真作品にも大きな注目が寄せられています。今回は、自身初のXシリーズとして手にしたという『X100Ⅵ』のお話をはじめ、写真における自分らしさへの考え方やポートレート撮影に欠かせないマインドについて語っていただきました。
Interview:高木慎平
ちょっとの“違和感”をスパイスに、
そのときどきの気分や好みを表現したい
――以前、富士フイルム運営のWEBメディア『写真と、ちょっといい暮らし。』にご登場いただいたとのことですが、今回はXユーザーとしてぜひ高木さんのカメラ歴から聞かせてください。
初めてフィルムカメラを買ったのが、もう20年くらい前になりますね。それからずっと趣味で写真は撮っていたんですけど、32歳のときにそれまで勤めていたアパレルの会社を辞めて、フォトグラファーとして活動を始めました。
――すごく思い切った行動だなと感じるのですが、なにか独立を後押しするようなきっかけがあったのでしょうか?
いえ、ノリと勢いですね。その当時、Instagramのフォロワーは1,000人くらいでしたし、撮影の仕事もなかったので不安はありましたけど、ずっと続けてきた写真を仕事にできるかどうかは自分次第なんだ!っていう気持ちだけで名刺をつくって、いろんなところに営業周りをしました。
――そして現在、Instagramのフォロワーは4.6万人。多方面でご活躍中ですが、ひと目で高木さんの作品だとわかるスタイルが生まれたのは、どのくらいのタイミングだったのでしょう?
みなさんそう言ってくださるんですけど、僕自身は自分らしさを固めていないというか、そのときどきの気分や好みを表現できたらいいなっていう気持ちもあるので、「これが僕のスタイルだ」っていうふうに決めちゃうのも良くないかなって思っています。
――そうしたご自身の感覚も踏まえたうえで、「高木慎平らしい」と写真を見る人が感じる要素はどんなところにあると考えていますか?
意識していることのひとつに、“ちょっと不自然な雰囲気をつくる”という自分なりのポイントがあります。ポートレートを撮るにしても、ありのままの姿ではないというか。たとえば、ベッドの上で飛び跳ねたり道路で寝転がったり、カラフルで可愛い雰囲気なんだけど、あえてお行儀の悪いポーズをしてみるとか。そういった違和感を感じ取ってくれているのかもしれないなあとは思いますね。
僕は、妻のYUIを撮影することが多いのですが、彼女とは好みや作りたいスタイルが結構似ていて、そこで意思疎通ができているからこそ撮れる写真もあるかなと思います。彼女もフォトグラファーなので、アドバイスをもらうことも多いですし、お互いに協力して作品を仕上げている感覚はすごくありますね。
男心をくすぐる『X100Ⅵ』
ファインダーを覗くワクワク感
――YUIさんと一緒に練り上げてきた世界観が、現在のご活躍にも繋がっているんですね。高木さんはアメリカから帰国されたばかりだそうですが、普段もよく海外に行ってらっしゃいますよね。そうしたライフスタイルについても教えてください。
カメラマンになったときに、せっかくフリーランスとして働くなら年に2回は海外旅行に行けるように仕事をがんばろうっていう目標を立てていたんです。今も仕事で海外に行っている場合もありますけど、基本はプライベートですね。今回のアメリカ渡航は、旅程の半分が仕事、残り半分はプライベートという感じでした。8月から9月にかけて行ったカリフォルニア、6月から7月にかけて旅行したヨーロッパにも新しく購入した『X100Ⅵ』を持って行きました。
――高木さんにとって『X100Ⅵ』は、ほぼ初めて手にする富士フイルムのカメラとのこと。どういった経緯で『X100Ⅵ』に出会ったのでしょうか?
旅行するときに一眼レフカメラをずっと持ち歩くのって、結構疲れちゃいますよね。海外だと荷物多いし、コンパクトなカメラがいいだろうということでポケットに入るサイズの機種を使っていたんですけど、慣れてくると逆にポケットから出さなくなっちゃったんです。だったら、もう少し一眼レフカメラに近い感覚で撮れるコンパクトなものが欲しいなあと思って、いろいろ探してみたなかで出会ったのが『X100Ⅵ』でした。デザインも好みだし、手に持った感じもすごくしっくりきて、「すごくいいカメラを見つけた」ってピンときました。ただ、『X100Ⅵ』は一時期なかなか手に入りづらい状況でしたよね。ダメもとで僕がいつもカメラを買う地元のショップの方に聞いてみたら、「手に入りそうですよ」っておっしゃってくださって。そうした縁も購入する大きな決め手になりました。
――「デザインも好み」とのことですが、カメラそのものの見た目を重視する理由はどういったところにあるのでしょう?
カメラ好きな人はみんなそうでしょうけど、画質や機能性はもちろん重要、加えて所有欲というか相棒的な感覚で大事にしたいという気持ちはカメラの見た目によるところが大きいんじゃないかなと思います。そういったカメラのほうがテンションも上がるし、一緒に旅に連れて行きたくなりますよね。
――見た目とあわせて、『X100Ⅵ』に魅力を感じる部分をぜひ教えてください。
『X100Ⅵ』は、レンジファインダー機能が搭載されているんです。これまでどおり液晶モニターを見ながら撮影するほうが安心感はあるんですけど、僕はフィルムカメラから始めたっていうこともあって、覗いて撮るほうが楽しいし写真を撮っているなあっていう気持ちになれるので、そこも『X100Ⅵ』に惹かれた理由です。操作性も他社製のカメラをずっと使ってきた身としては扱いやすくて助かります。変更したい設定がパッと出てきてくれるので、撮影者の心理を考えて設計されているんだろうなあって感じました。液晶モニターもすごくキレイなんですよね。液晶モニターに撮った写真を写してYUIに見せたら「このカメラめちゃくちゃいいじゃん! 私も欲しい!」って言ってました(笑)。
――さまざまな場所で撮影をされるなかで、『X100Ⅵ』の機能性が発揮されるのは、どんなシチュエーションだと感じましたか?
僕がとくに嬉しいと感じたポイントのひとつは、ストロボがついているところ。夜の撮影だけじゃなくて日が出ているうちに日中シンクロでフラッシュを使ったりすることも多いので、ボタンひとつでオンオフができるフラッシュが内蔵されているというのは本当にありがたいなあと思います。アメリカンな感じでポップに撮りたいときとか、夕方に人物だけ浮かび上がらせて撮りたいときとか、役立つシチュエーションがすごく多かったですね。手軽なのはもちろん、表現の幅を広げてくれるという意味でも重宝しています。もうひとつ、光学ファインダー上にEVF(電子ビューファインダー)を小窓化して同時表示してピントの確認できるERF(エレクトロニックレンジファインダー)機能。あのメカニック感もやっぱり男心をくすぐられるというか撮っていてテンションが上がりますね。僕は、もともと撮影枚数が少ないほうなんですけど、『X100Ⅵ』はピントも合わせやすいので、さらに撮る枚数が減っていますね。言い換えると思いどおりにとれる確率が上がったみたいなイメージです。
ポートレートの極意とは、
「いい写真は、楽しい時間から生まれる」
――色表現という点では、いかがでしょう? 高木さんの色へのこだわりは作品からも受け取れるのですが、そうした感覚で見る富士フイルムの色にどんな印象をお持ちですか?
『X100Ⅵ』を購入してすぐにフィルムシミュレーションをいろいろと試してみて、このフィルムっぽい温かみが富士フイルムの持ち味なんだろうなと感じました。それと、肌の色が出しやすいというのも好印象でしたね。とくに女の子の肌の色は健康的でしっかり綺麗な色で見せたいと思っているので、『X100Ⅵ』で撮影した写真は編集でもすごく扱いやすかったです。僕は色へのこだわりがちょっと強いというか、編集することが趣味でもあるので普段積極的には使わないんですけど、フィルムシミュレーションは写真を面白くしてくれる機能だというのは間違いないので、これからカメラをはじめるという人にXシリーズをお勧めする大きな理由のひとつです。
――これからカメラを始めたいという方のなかには高木さんの写真がきっかけになっている人もいるのではないでしょうか。改めて、高木さんが考えるカメラの醍醐味とはどんなところにあるのでしょうか?
僕がカメラを始めたのは、友達や周りの人と過ごす時間を綺麗に残したいと思ったことがきっかけだったんですけど、スマートフォンよりカメラで撮影した写真のほうが同じデジタルデータでも一枚一枚に重みみたいなものがある気がしていて。細かい描写とか光の表現はカメラにしか描けないものがあると思うので、そういったところに重みを感じるのかもしれません。
――もうひとつ、高木さんのポートレート撮影のコツもぜひお伺いできると嬉しいです。
ポートレートに大事なことは、コミュニケーション能力なのかなと思っています。モデルさんをどれだけ楽しませるか、撮影をどれだけ楽しんでくれたか、そっちに意識を持っていったほうが結果的に写真もいいものが撮れていたりするんです。マタニティフォトとかウェディングフォトをご依頼いただくことも多いんですけど「めちゃめちゃ楽しかったです!」って言って帰ってもらうのが僕のやりがいでもあり仕事だと思っています。写真の出来はもちろんですが、撮影の時間がどれだけ楽しいかということも僕の中では大事にしたいことですね。
――その意識で撮影されているからこそ、目を強く惹きつけるあのポートレートが生まれるんですね。最後に、『X100Ⅵ』を手にしたことで今後広がっていくクリエイティブの可能性や活動の展望について聞かせてください。
『X100Ⅵ』のおかげで、少ない荷物でどこにでも行けるようになったというのは、ライフスタイル的にも大きな変化です。今後は旅行した先々で出会った人を撮影できるといいなって思って、人を撮るならまずはコミュニケーションを大事にしたいというところで、今、英語を勉強しています。これからも世界中でたくさん楽しい時間を撮影していきたいですね。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
今回登場したカメラ