Interview 2021.07.20

【Xシリーズユーザーインタビュー】心の眼で写す、日本文化の美しさ。和菓子フォトグラファー・松波佐知子とXシリーズ

『和菓子フォトグラファー』として活動し、instagramに投稿される自作和菓子が注目を集めている松波佐知子さん(@wagashi_moments)。四季の移ろいや心の機微が豊かに表された和菓子、そしてそれらを繊細に写し出した写真の数々が、見る人に日本古来の文化の奥深さと新たな発見を伝えています。長らく翻訳家として活躍し海外の文化に親しんできた松波さんが自身の表現として選んだ“写真と和の文化”について、その活動を支える『X-T3』の魅力とともに語っていただきました。

Interview:松波佐知子

--翻訳家として言葉の表現に触れるなかでご自身の表現として写真撮影を選ばれたのには、どのような理由があったのでしょうか?

私にとって言葉の表現は、エッセンスを伝えるために時間をかけて練っていくもの。その点写真では、その瞬間の感情の揺らぎを即座に表現できる。そこに心地よさを感じていました。写真は高校生のときからインスタントカメラやデジカメで撮っていましたが、自己表現の手段として本格的に写真に取り組みたいと思い、2012年に一眼レフカメラを購入しました。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:4.0 /シャッタースピード:1/8000 /フィルムシミュレーション:クラシッククローム

--現在、和菓子フォトグラファーとして活動していらっしゃいますが、一眼レフを手にされた当初はどんなものを撮っていらっしゃったのでしょう?

まずは外国人が主催しているストリートフォトのグループに所属して、毎週のように街中でスナップを撮りながら写真の撮り方を学びました。グループには様々な国籍の方がいて、同じ場所で撮影していてもみんな視点が違うんです。「写真ってこんなに自由なんだ!」と再発見できましたし、そこでの体験を通じて固定概念が外れていく感覚がありました。とにかく撮ることが楽しくて。同時に、集中して撮ることがヨガや瞑想のように自分にとって癒しにもなっていると気づいて、アメリカでそういったワークショップに参加したり、マインドフルネスと写真の関係にも興味を持ちながら、ますますカメラにのめり込んでいきました。

X-T3 /XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS /F値:5.0 /シャッタースピード:1/400 /フィルムシミュレーション:ACROS

--次第にカメラが生活に欠かせないものになっていったのですね。その後、『X-T3』を購入されたとのことですが、そのきっかけとは?

一眼レフよりも軽くて気軽に持ち歩けるカメラも欲しくなったときに、X-photographersの写真家・内田ユキオさんが「富士フイルムのフィルムシミュレーションなどを使うことで、さらに表現に広がりが出るのでは?」とアドバイスをくださったことが決め手になりました。もともと内田さんの写真の色みや自由性の高い表現にすごく魅力を感じていたのですが、友人を通じてお会いする機会があり、カメラのことをお伺いしたんです。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:5.0 /シャッタースピード:1/125 /フィルムシミュレーション:PROVIA

それで実際に使ってみたいと思い富士フイルムイメージングプラザでレンタルしたところ、コンパクトさと色の表現がすごくしっくりきたので、X-T3を購入しました。以来、一眼レフカメラと併用しています。

--Xシリーズとの出会いには、そんな背景があったのですね。『和菓子フォトグラファー』として現在の活動スタイルを始められた経緯についても教えていただけますか?

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:2.8 /シャッタースピード:1/50 /
フィルムシミュレーション:PROVIA

日本料理を撮影するお仕事で和の文化の豊かさに触れて、それまで撮っていたストリートスナップにはない驚きと面白さを感じました。昔、留学していたロンドンから帰国したときにも感じたのですが、あらためて見ると日本文化ってどの分野もすごく深いですよね。なかでも、シンプルな材料ながらも繊細な技巧を用いて3㎝四方で季節や自然を表す和菓子に無限の可能性を感じて、強く惹かれました。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:2.8 /シャッタースピード:1/350 /
フィルムシミュレーション:PROVIA

職人さんが手間と時間をかけて作ったどれだけ美しい和菓子でも、食べるのは一瞬というところにも美学を感じます。最初は買ったお菓子を撮影していましたが、「こんな和菓子があったら……」と考えるうちに和菓子教室に通うようになり、自分で作ったものを記録的にinstagramに載せるようになったことが現在の活動につながりました。

--松波さんのinstagramにある和菓子はどれも美しく繊細で、叙情的だと感じました。和菓子づくりのインスピレーションはどういったときに浮かぶのでしょうか?

『雨のステイション』
X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:1.8 /シャッタースピード:1/125 /フィルムシミュレーション:PROVIA

松任谷由実さんの曲から着想を得た『雨のステイション』は、季節や自然だけでなく、好きなものや自分の感情など、もっといろんなものを表現したいと思うきっかけにもなったので、思い入れのある和菓子です。ただきれいなものを作ろうというよりは、日々の中で季節の移ろいを実感したり、何かが心に響いたときにそれをお菓子と写真で表現したいという気持ちが生まれます。

--和菓子ひとつひとつに松波さんの心の機微が表されているんですね。その美しさを写真にするうえで意識していることを教えてください。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:3.6 /シャッタースピード:1/125 /
フィルムシミュレーション:PROVIA

“作ったら必ず食べる”と決めているので、お菓子が乾いてしまわないうちに素早く撮って美味しく食べるようにしています。そのためか、お菓子を作っているときから撮影のイメージやストーリーが浮かんでくるんです。撮影時は和菓子の素材や形が引き立つ器や背景、角度や光を見極めて、さらにカメラの設定で和菓子の表情や魅力を際立たせながら、形が無くなる前の一瞬のきらめきを残してあげたいという気持ちで撮影しています。

--実際に和菓子を撮影するうえで感じるXシリーズの魅力や利点とはどういったところでしょうか?

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:1.8 /シャッタースピード:1/125 /フィルムシミュレーション:クラシッククローム

自然光だけで撮っているのですが、シャドウ部のトーンアップが必要なときも、X-T3ではレフ板などを用いずに、クイックメニュー内のシャドウトーン調整で確認しながら撮れますし、軽量なので三脚なしで手軽に様々な角度から撮影できる点も重宝しています。

あとはやっぱり、Xシリーズの特徴である色みですね。いくつか違う色のお菓子を並べて撮るときにX-T3を使うと、それぞれの色を美しく表現できますし、撮影後の編集もいらないので、ほぼ撮って出しで済むのがすごく楽です。富士フイルムの色みは、特に春先や夏のパッと華やかな気持ちになるような色や瑞々しさを表現したいときにもぴったりだと思います。フィルムシミュレーションはPROVIAで撮影することが多いですが、落ち着いた雰囲気にしたいときはクラシッククロームで色みを抑えてから、カメラで確認しながら彩度などの微調整をできるのも便利です。

X-T3 /XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS /F値:3.6 /シャッタースピード:1/40 /
フィルムシミュレーション:PROVIA

--レンズは主に『XF35mmF1.4 R』を使用されていらっしゃるそうですね。

はい。こちらも実は、「スナップにも使えるし、寄れるからブツ撮りにもいいよ」と内田さんに教えていただきました。このレンズはボケも美しいですし、自然光がすごく生きますよね。錦玉羹(きんぎょくかん)という寒天を使った和菓子を撮るときにも透明感や瑞々しさがとても引き立つんです。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:2.8 /シャッタースピード:1/250 /
フィルムシミュレーション:PROVIA

--松波さんが撮影された写真や和菓子をきっかけに、和の文化に触れたという方もきっと多くいらっしゃると思います。今後は、どんなことを発信していきたいと考えていらっしゃいますか?

和の文化には決まり事もありますが、だからこそ自由や深みがあります。それに自分や人の心を思いやる文化だと思います。私の作品から何かを感じてほしい、という気持ちはないのですが、日本だけでなく海外の方からも「安らぎます」というコメントを頂くことがあります。私自身が和菓子と写真から癒しを得ているので、それが伝わったのなら嬉しいです。

写真教室で「なにを表現したらいいのかわからない」という方がいらっしゃいますが、ひとたびカメラを持つととても豊かな写真を撮るんです。写真ってすごく個人的なものなので、誰がなんと言おうと自分がいいと思ったものはいいんですよね。自分が楽しめていれば、それが自信や癒しにつながるし、人にも伝わると思うんです。こうあるべきという観念に縛られずに、気軽に写真に触れてほしいです。今やっている『写菓の会』と『創菓の会』では、皆さんと写真を撮ったり和菓子を作りながら、お互いに新たな発見を得ることも多いんです。面白そうだな、やってみようかなと思うきっかけになれば光栄です。

X-T3 /XF35mmF1.4 R /F値:2.0 /シャッタースピード:1/200 /フィルムシミュレーション:PROVIA

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text by 野中ミサキ(NaNo.works)