RAWとJPEGの違いを解説!知っておきたいメリット・デメリット【Snap & Learn vol.10】
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【Snap & Learn】の連載企画では、一般によく知られている写真の撮影テクニックやカメラ関連の専門用語を集め、初心者の方にも理解しやすいように作例やイラストを用いて解説しています。
デジタルカメラを初めて購入した人や、撮影した写真を仲間と気軽にシェアしたいと考えている人の中には、画像の保存形式を意識していない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、保存形式のなかでも代表的な『RAW』と『JPEG』を取り上げ、それぞれの違いやメリット・デメリットについて解説します。自分に合った保存形式がわからない、使い分けるポイントを知りたいという人はぜひ参考にしてください。
RAWとJPEGの定義
『RAW』と『JPEG』は、写真撮影で広く使用されている保存形式です。それぞれの特徴を正しく理解することで、撮影後の編集作業や用途に応じた最適な選択が可能になります。まずは、両者の定義について詳しく見ていきましょう。
RAWとは非加工の生データ
RAWは、カメラのイメージセンサーが読み取った光の情報をそのまま保存する形式です。カメラ内で画像処理を施していない「生データ」であり、英語のRAW(生の・未加工の)に由来します。
非加工で、捉えた情報をすべて記録しているためファイルサイズが大きく、編集の自由度も高いことが特徴です。ただし、PCやスマートフォン(以下、スマホ)で画像を確認するには専用のソフトで現像(詳細は後述)する必要があります。
JPEGとはすぐに使える画像形式
JPEGは、カメラが自動で画像処理を行い、写真として見ることができる画像データの状態で保存される形式です。前述のRAWをもとに生成された画像データで、画像規格を制定した国際組織「Joint Photographic Experts Group」の頭文字から名付けられました。
撮影した画像はすぐに確認でき、WebやSNSへの掲載、印刷なども手を加えることなく容易にできることが特徴です。ただし、非可逆圧縮(圧縮前の状態には戻せない圧縮方法)によりファイルサイズは小さく、情報量も少なくなります。
RAWとJPEGの違い
保存形式の選択は、写真の仕上がりや作業効率に大きな影響を与えます。
以下に、違いをまとめてみました。
さらにここからは、より理解を深めるために“画質と情報量”、“現像の必要性”、“ファイルサイズ”の観点から、RAWとJPEGの違いを具体的に解説します。
違い1.画質と含まれる情報の量
たとえば、暗い写真を明るく補正する場合、RAWなら色階調(色のグラデーション)の豊富さに加え、ホワイトバランス(白色をより正確な色に再現する機能)や露出(光の量)も撮影後に変更できるため明るさを補正しやすいです。しかしJPEGは色階調が少なく、ホワイトバランスや露出も撮影時の設定に基づくため、明るさの補正・色の修正には限界があります。
違い2.“現像”の必要性
RAWデータは未加工の素材に相当するため、そのままでは使用できません。SNSへの投稿や印刷をするためには、JPEGなどの画像形式に変換する作業が必須です。
一方、JPEGは写真として見ることができる画像データにカメラ内で処理されるため、現像作業を経ることなく撮影直後からそのまますぐに使用できます。
このように、RAWは“現像が必要”、JPEGは“現像が不要”である点が違いの1つです。時間や手間をかけて理想の画像を追求したい場合はRAWが適しており、撮影後迅速に使いたい場合や加工の必要がない場合はJPEGが向いています。
違い3.ファイルサイズの大きさ
RAWデータは、撮影時の情報をそのまま保存するため情報量が多く、ファイルサイズも非常に大きくなっています。これに対してJPEGは、撮影時にデータが圧縮されるため、RAWと比較するとファイルサイズは小さくなります。
たとえば、同じ記録メディアに画像を保存する場合、RAWであればメモリーカードの容量はすぐいっぱいになる可能性がありますが、JPEGならより多くの写真を保存でき、容量を効率的に使用できるでしょう。両者はファイルサイズの大きさが異なり、その結果保存できるデータ量にも違いが生じます。
RAWを使うメリット・デメリットとおすすめのシーンを紹介
RAWとJPEGの違いを理解したところで、ここではさらにRAWについて深掘りしてみましょう。メリットやデメリット、活用におすすめのシーンを解説します。
メリット:豊富な情報量で、後から自由に調整が可能
RAWのメリットは、光や色などの情報が豊富に保存されていることです。それにより現像時に色味や明るさ、コントラストなどを自分好みに細かく調整できます。白飛びや黒つぶれといった撮影時の露出ミスにも強く、暗すぎた部分や明るすぎた部分の情報を引き出してある程度復元できるため、撮影時に失敗した写真も美しく補正できます。
RAWは高画質な印刷物やプロ仕様の写真制作にも適しており、広告やポスターなど、緻密さが求められる用途でその真価を発揮します。
デメリット:データが重く、専用の現像ソフトが必要
RAWのデメリットは、ファイルサイズが非常に大きく、記録メディアの容量を圧迫しやすいことです。たとえば、長時間の撮影や大量の写真を保存する場合、容量不足に陥る可能性があるでしょう。記録メディアの性能によっては、データ転送に時間がかかるものもあります。
また、RAWデータは未加工のためSNSやWebでの即時利用ができず、専用の現像ソフトが必要でスキルも求められます。
後からじっくり色調整を行いたいならRAWがおすすめ
RAWは、「夕焼けの赤やオレンジの色合いをより鮮やかにしたい」「花や果物など色を調整したい」など、時間をかけて後から色調整を行いたい場合におすすめです。
暗い場所や夜景の撮影では露出不足が起きやすいですが、RAWなら暗くなりすぎた部分の調整も可能なため失敗しにくいでしょう。写真をただの記録ではなく、1つの作品として丁寧に仕上げたいときはRAWを活用することで、よりクリエイティブな表現が可能になります。
JPEGを使うメリットとデメリットとおすすめのシーン
用途に合った適切な保存形式を選ぶには、RAWだけでなくJPEGについても理解を深めることが大切です。JPEGを選ぶメリットとデメリット、活用におすすめのシーンを解説します。
メリット:データが軽くて手軽、多様なデバイスですぐに使用可能
JPEGのメリットは、最も一般的な画像ファイル形式であることから互換性が高く、多くのデバイスですぐに表示できることです。ソフトやアプリをインストールすることなく、スマホやタブレットなどで手軽に閲覧・シェアできます。
RAWよりファイルサイズが小さく保存容量を節約できるため、大量の写真を気軽に保存することにも長けています。旅行や日常のスナップ撮影などによって、気が付いたらどんどん写真が増えているという場合にも有効です。
デメリット:画質が劣化する可能性
JPEGのデメリットは、編集や保存によって画質が劣化する可能性があることです。先述した通り、JPEGは撮影時にデータが圧縮されており、人間の目ではほとんどわからない程度に情報が間引かれている状態です。保有する情報量が少ないため、圧縮されていないRAWと比較すると画像の調整幅には限度があります。
さらに編集や保存を繰り返すとそのたびに情報が間引かれていくため、どんどん画質が劣化し、その結果ノイズや色あせが発生することもあります。
気楽に楽しみたいならJPEGがおすすめ
JPEGは、おしゃれなカフェのドリンクやペットの寝顔など、何気ないふとした瞬間を切り取るようにカメラを気軽に楽しみたい場合におすすめです。
「撮影した写真をすぐSNSへ投稿したい」「オンライン上でアルバムを作成したい」というときにも、JPEGの手軽さは役に立つでしょう。さらに、保存容量を節約したいときにも向いており、たくさん撮影するときや連写を多く使うシーンにおいて、JPEGのコンパクトさは大きな利点です。
RAWとJPEGを両方保存する設定も可能
RAWとJPEGにはそれぞれ異なる魅力があり、どちらを選べばよいか迷う人も多いでしょう。
富士フイルムのカメラは、画質設定メニューで、画質モードをFINE+RAWまたはNORMAL+RAWを選ぶと、RAWとJPEGのデータを両方保存することができます。
また、ダブルスロットのカメラは、セットアップメニューの保存設定内にあるカードスロット設定で「分割記録」を選択することで、2枚挿入したメモリーカードにRAWとJPEGをそれぞれ保存できます。
この機能によって、用途に応じた柔軟な運用が可能となるでしょう。
RAWとJPEGの違いを理解し、自分に合った保存形式を選ぼう
RAWは豊富な情報量によって自由度の高い編集が可能であること、JPEGはデータが軽く、多様なデバイスで手軽に利用できることが強みです。
編集にこだわりたい場合はRAW、すぐに使いたい場合はJPEGを選ぶなど、目的やシチュエーションに応じて適切な保存形式を選びましょう。もちろんRAWとJPEGを両方保存する設定を使うことも1つの方法です。カメラの性能を最大限に活かし、自分が表現したい写真を撮影するための一歩を踏み出してみてください。
RAWとJPEGの使い分けや同時保存も可能な『X-T50』
富士フイルム『X-T50』は、約4020万画素の高解像度センサーと高速画像処理エンジン、ボディ内手ぶれ補正機能を搭載したミラーレスデジタルカメラです。本記事でご紹介したRAWとJPEGどちらの形式にも対応しており、RAWとJPEGの同時保存も可能です。
さらに、被写体に合わせてフィルムを再現した設定を選ぶことで、撮影時の発色や階調を変えられる『フィルムシミュレーション』機能を搭載しています。同機能を活用すれば、RAW現像や撮影後の加工を経ることなく、JPEGで撮った写真もその場でイメージ通りの写真に仕上げられます。
高い性能でありながらも、重量はメモリーカードとバッテリーを含めてもわずか438gと軽量。日々の持ち歩きにも適しているため、ふとした瞬間を鮮明に記録したい人におすすめできる1台です。
main photo by Mio Tangstad
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