“瞬きをするようにシャッターを切ろう。~ゆっくりと時が流れる町〜”写真家・渡邉真弓 vol.04
カメラを始めてから日々の暮らしがすこし変わった。
行きかえりの道に咲く花が可愛かったり、空は毎日同じではないこと。
ファインダーを通して見る私の世界は、ささやかな発見の連続だ。
陽射しの優しいある日、
ふと気になった駅で降りてみることにした。
ひらがなで「ぴっぷ」。
響きがかわいい。
初めての場所ではまずカフェを探す。
駅からすぐそばのカフェで早めのランチ。
ぴっぷは「比布」と書いて、アイヌ語のピプまたはピピから出たもので「沼の多いところ」あるいは「石の多いところ」の意味だそう。
可愛らしいガイドブックも発見。
リュックには、レンズ3本とカメラがスタンバイ。
今日のラインナップは「XF14mmF2.8 R」、「XF35mmF1.4 R」、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」、そして「X-T2」。
まずは高台へ。
広い山脈が横にぐーんと続く。
大雪山が世界一きれいに見える町。
どこまでも続く畑も空の広さも北海道らしくて好き。
思い切り手を広げて息を吸い込んでみる。
田園風景の中に、大正ロマン漂う建物が。
鈴木邸と呼ばれるこの建物は今でも地元の方が利用して、時を刻んでいる。
ふと足元を見ると、時がここにも積み重なっていた。
窓に映る景色は今だけれど、窓の奥には積み重なった時間が漂う。
過去と現在が交じり合う。
光がひっそりと咲く花にスポットをあてる。
こういう光に出会うとドキドキする。
庭先に揺れるブランコ。
お話を聞くと、近くの子供たちが遊びにくるとか。
のんびりとした良い時間が漂う。
さらにぐんぐん歩くと、
縁結びのパワースポット・比布神社が。
誰もいない静かで贅沢な時間。
お参りをして、写真を撮っていたら、光が降り注いできた。
ファインダー越しに、光と会話をする。
いちごとスキーの町ということで、いちごの飾りが。
かわいいなあと思って、よく見ると、街灯もさりげなくいちごのカタチ。
あっ、あそこにも、いちごを発見!
西日があたって、いちご模様のガラスが透けてきれい。
雲と山に沈んでゆく夕焼けにドキドキする。
沈んだあとの余韻のような美しさ。
思わず見とれてしまう。
山肌をほんのり染めて今日が終わる。
帰り道を、ぽわんと浮いた月と星たちが照らす。
そして、ぐんぐん進む列車がわたしを日常へ連れ戻す。
ふらりと降り立つだけで、出会える光景や体験がある。
日常と非日常が混在する時間。
さて、次はどこへ行こう。
撮影MEMO
・今回のお供は「XF14mmF2.8 R」、「XF35mmF1.4 R」、「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」
・XF14mmF2.8 R・・・広大さを表現したいときや星空撮影で使用
・XF35mmF1.4 R・・・カフェや街歩きにぴったり
・XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR・・・夕陽撮影、互いの距離がすこし離れているものを組み合わせて撮影するときなどで活躍
・比布町は旭川市に隣接する町。旭川市からJRで約30分
・比布駅、比布神社、いいながめ台(冬はスキー場)、鈴木邸など見どころたくさん。帰りは遊湯ぴっぷの温泉でのんびり♡
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