【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・しふぉんとXシリーズ 小さなカメラが描き出す、柔らかく美しい世界
都市の風景をパステルカラー調の色彩で写し出すシティスケープや人の目には見えない世界を捉えた赤外線写真が、SNSで大きな反響を呼んでいるフォトグラファーのしふぉんさん(@shiifoncake)。大学生のとき出会った東京の夜景を撮るべく一眼レフを手にしたことから、写真の世界にのめり込んでいったと言います。そんな彼女が新たに手にしたのは、Xシリーズの原点という『X100シリーズ』の4代目、『X100F』。繊細で柔らかな描写力が人気の同機種は、しふぉんさんにとって“撮りたいものをしっかりと残せるカメラ”だそう。今回は、さまざまなカメラを併用してきた中で感じるX100Fの魅力を語っていただきました。
Interview:しふぉん
--しふぉんさんが初めて一眼カメラを手にされたのは2018年とのこと。きっかけは、東京の夜景だったそうですね。
地元の佐賀県は、高い場所からでも夜景という夜景が見えないんですよね。その状況に慣れていたので、上京して、東京の夜がどこもキラキラしていることに感動して、その綺麗な夜景を撮りたいと考えるようになりました。それ以前も出掛けた先で風景やご飯、友だちとの時間をスマホで撮ってはいたのですが、「夜景をきれいに撮るなら」と家電量販店でオススメされたAPS-Cセンサー搭載の他社製ミラーレス一眼を購入しました。
--その後、フルサイズ機も含めて数台購入され、現在は3台を使い分けているとのことですが、カメラを選ぶうえでなにを重視されていたんですか?
そうですね。ただ、最初こそ夜景を撮影するためにセンサーサイズは大きいものが欲しいと思っていたのですが、私の場合、撮ったものはほぼ必ずトリミングするということもあり、少しでも高画素で撮れるものがいいなとは思っています。
--APS-CサイズというセンサーサイズもXシリーズに注目された大きな理由だとは思うのですが、レンズ一体型で単焦点のX100シリーズを手に取られたのは何故でしょう?
友人と遊ぶときに、機材自体のサイズ感も大きいフルサイズのカメラを持ち歩いて間近で撮るのは少し気が引けるなあと思っていたので、コンパクトでレンズ一体型のものを探していました。そのなかでも『X100F』は、私くらいの年代の女性が持ち歩きやすいデザインで、ずば抜けて可愛いしカッコいいですよね。周りで使用している方々が口を揃えて「写りもいい」と言っているのも聞いていましたし、いわゆる“富士の色”を体験したいという気持ちもありました。それでX100Fを購入したのですが、実は今使っているのは2代目。購入して一度手放して、また買い戻したんです。
--それはまた、どうしてでしょう?
最初に購入したのは2020年の初め頃だったんですけど、すぐにステイホーム期間に入ってしまったことでX100Fを使う機会がなくなってしまったんです。だけど、年末頃になってやっぱりまた使いたくなって。X100Fで撮影していて「いいなあ」と感じるのは、コンパクトだけど求めている画質で撮れるし、RAW現像するにしても撮ったそのままの雰囲気が出ているところ。X100Fで撮ったものは、撮影後の色調整が最小限で済むんです。手放したことでそういった魅力を改めて感じて、2020年の終わり頃に買い戻しました。
--色みに大変なこだわりがあると感じていたので、X100Fで撮影されたものはあまり調整をしないと伺って、少し意外です。
そうですね、あまり色を触らずに済むことが多いです。例えると、他社製のカメラで撮った写真は、元の素材を色塗りして仕上げていく感覚なのですが、X100Fは撮って出しでも十分だと感じられることが多いですね。特に富士フイルムの色の良さを感じるのは、雨の日や逆光で撮影するとき。光や湿度から生まれる雰囲気の柔らかさが細部まで表現されているところが好きですね。撮りたいものをしっかり写真に残せているなあと感じられるカメラです。
--柔らかな風合いを生み出すレンズは歴代X100シリーズの大きな特徴でもありますよね。ちなみに、他のカメラとの使い分けは?
基本的にX100Fを使うのは、ちょっとした散歩や友だちと出かけるとき。どちらかというと、SNSにあげるものより自分の手元にそのまま残しておきたい写真を撮ることが多いです。機動性も携帯性も高いし、レンズ一体型という点もすごくいいなと思っていて。レンズを複数持っていると、すべて使って撮りたくなってしまうし、付け替えることで時間をロスしてしまうんです。だけど、レンズ一体型であればそこを割り切ることが出来ますよね。また、個人的に23mm(35mm判換算:約35mm相当)はスナップにちょうど良いと感じています。
--主にプライベートな場面で活躍しているんですね。シティスケープや赤外線写真など、SNSで注目されている自身の代名詞的な写真を撮られようになったのには、いつ頃どんなきっかけがあったのでしょう?
カメラを始めて2ヶ月くらいのとき、晴海埠頭で夕焼けを見たんです。それがすごくきれいに撮れて、そこから夕景や夜景を撮ることにハマって。最初はそれで良かったのですが、1年くらい経つとinstagramで見る自分の写真がどれも同じ場所・同じ色みのものばかりで、面白くないなあと感じるようになりました。
そんなときにTwitterを見てみたら、ミニマルフォトやシティスケープといったそれまで私が知らなかったような写真がたくさん流れてきて、とても興味を惹かれました。そこから半年くらいは自分の写真表現というものがわからなかったんですけど、自粛期間に入っていつも撮っている東京の景色を撮影出来なくなってしまったときに、窓から見える空や電柱、送電塔を撮るようになったんです。赤外線写真に出会ったのもその頃です。同時に、家にこもってレタッチ作業をしていたことが、よく「しふぉんさんらしい」と言っていただく色を発見するきっかけにはなったのかなと思っています。
--外へ出られないことが、結果的に新しい表現との出会いや自分らしさを深めることにつながったんですね。今後、なにか挑戦してみたいと思うことはありますか?
「とりあえずなんでもやってみたい!」と思う気持ちは強いのですが、機材に対しては今は手持ちのお気に入りのカメラやレンズで満足しているので、これからは今やっていることのレベルをもっともっと上げていけたらいいなと思っています。今後、安心して出かけられるようになったら、日本各地や世界中、色々なところに写真を撮る旅に出たいです。また、フォトグラファーとして、地方創生のお仕事にも携わりたいと考えています。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)