台湾料理を美味しそうに撮るコツとは?〜吉祥寺台湾カフェ『台湾茶藝館 月和茶』〜
【フードフォトテクニックvol.6〜吉祥寺台湾カフェ・台湾茶藝館 月和茶〜】
「X-T30」で“料理写真を美味しそうに切り取る”撮り方テクニックを、都内の気になる素敵なお店の情報とともに紹介する連載企画『フードフォトテクニック』。スマホのカメラにも応用できる、構図のポイントや上手に撮るためのちょっとしたコツもご紹介します。今回は、吉祥寺にある女性に大人気の台湾カフェ『台湾茶藝館 月和茶(ユエフウチャ)』さんにお邪魔しました。
今回訪れたのは吉祥寺の古民家台湾カフェ〜台湾茶藝館 月和茶〜
吉祥寺駅から徒歩7分ほど、大型百貨店のすぐそばにひっそりと佇む「月和茶」は、知る人ぞ知る台湾カフェ。こだわり抜かれた台湾茶と台湾料理を目当てに訪れるお客さんで連日にぎわう、創業20周年の人気店です。
台南出身のオーナー・楊さんがデザイン関係の仕事を経て、世田谷区経堂に「月和茶」をオープンしたのは1999年のこと。「自分が慣れ親しんだ台湾のお茶や料理を日本の人にも味わってほしい」との思いで始めたお店でしたが、開店当初は台湾の食や文化がそれほど浸透しておらず、今では大人気のタピオカも認知度はほぼゼロ。特に、台湾で親しまれている「茶藝」と日本人にとっての「お茶」の感覚の違いには少々苦戦したといいます。「最初のうちは“烏龍茶にお金を払うんですか?”って驚かれたこともありますよ(笑)」。そのうち、その美味しさとお店の魅力に惚れ込む人がじわじわと増え、「月和茶」は都内で数少ない本格的な台湾茶と台湾料理を楽しめる場として知られるようになりました。
2008年、経堂から現在お店を構える吉祥寺に移転。往来の多い路地にありながら、ここだけ時間が止まったかのような佇まいの古民家は、2ヶ月半物件探しを続けた楊さんが「もう諦めようか」と思った折に出会った建物なのだそう。入り口すぐの階段を上った先には、自ら手と時間をかけて作ったという台湾の古き良き民家を再現した空間が。どこか懐かしく心がほどけるような、やさしい時間が流れています。
料理のシズル感を伝えるフォトテクニック
「月和茶」でいただけるのは、楊さんが幼いころから慣れ親しんでいる家庭の味にオリジナルのエッセンスを加えた台湾料理。豊富なメニューのなかから、今回は「肉味噌の汁ビーフン(肉醤青菜米粉湯)」と「小籠包」をオーダー。細いながらもコシのある麺に絡むのは、独自に調合した澄んだ喉ごしの薬膳スープ。旨味たっぷりの肉味噌、シャキシャキの白ネギと青菜が食欲をそそります。どんぶり一杯、なかなかのボリュームながらスルッと入っちゃう絶品汁ビーフン。もちもちの皮に柔らかな餡とスープが詰まった小籠包と一緒にいただきました。
ここでは全体を写すことにこだわらず、「XF35mmF1.4」の単焦点レンズを使って、臨場感たっぷりに具材の質感を切り取るのがポイント。このレンズの特徴である優しいボケ感が料理の魅力をより引き立ててくれます。
食後は、「月和茶」オリジナルの「八宝茶」を。台湾で縁起がいいとされている八宝にちなみ、血液をきれいにしてくれる白木耳、冷えによいとされるクコの実など8種をブレンドした身体にうれしいお茶です。茶葉を入れた茶壺(ポット)の3分目までお湯を入れて蒸らすこと約2分、お茶は茶海(ピッチャー)に一度移し、茶杯(コップ)に注いでいただきます。素材ごとに味や香りの抽出タイミングが異なるため、一煎目・二煎目・三煎目と風味が変化していくのだそう。一度に四〜五煎ほど楽しめます。
色みの鮮やかさを引き出しつつ、趣のある画づくりを叶えてくれるフィルムシミュレーション「Velvia/ビビッド」で撮影。ポイントは、コントラストと明暗差。テーブルに反射する光と影を画面内に納めることで、メリハリをつけています。影と影のあいだにメインの被写体を置くことで、その存在感がより強調されました。
「台湾でお茶は、ゆっくり気を休める時に飲むもの。お茶の時間はどちらかというと昼より夜。昔は24時間の茶藝館もたくさんあったんですよ」と楊さん。ぼんやり茶杯を傾ける時間は、とても豊かで穏やかです。
忘れてはいけない「月和茶」の人気メニューが、台湾の定番スイーツ・「豆花(トウファ)」。とろりとやさしい口どけのお豆腐に、黒糖タピオカに茹でピーナッツ、ココナツが原材料の白タピオカ、お芋の団子、マンゴー餅といった南国らしい具材をトッピング。ほんのり甘くて、初めて食べるのにどこか懐かしい、思わず頬がゆるむ不思議なスイーツです。具材はその時々で変わるそう、期間限定のシーズナルメニューも。もちろん、すべてお店の自家製です。
ここでは「XF60mmF2.4」のマクロレンズを使用。被写体をクローズアップし、宝石箱のような豆花の美しさを切り取りました。また、スプーンですくい、動きをつけることでシズル感を演出。ワンパターンになってしまいがちな料理写真に変化をつけたいときにも使えるテクニックです。
「台湾の茶藝や食の魅力をベースに、台湾では見かけないようなものを自分なりの発想で作っていきたい」という楊さん。お母さんの味をそのまま受け継いだ「月和茶」の大定番・楊家魯肉飯をはじめ、オリジナルブレンドのお茶や創作と豆花など、ここでしか味わうことのできない台湾の魅力が吉祥寺にありました。
今回は、茶藝文化や薬膳を取り入れた家庭料理・スイーツを楽しめる台湾カフェ「月和茶」をご紹介しました。次の休日は、吉祥寺でショートトリップしてみませんか? 引戸を潜れば、そこはもう台湾です。
【今回登場したテクニック】
・料理の全体像を写すことにこだわらず部分的に切り取ることで臨場感を与える
・マクロレンズでクローズアップすることで具材の質感まで伝わる写真に
・カラフルなドリンクはVelvia/ビビッドに設定し、魅力的な鮮やかさを引き出す
・スプーンですくう等、動きをつけてシズル感を演出
Spot Information
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by 大石隼土