IRODORI by X Series

Tips 2020.06.02

“⾃分らしい写真”を見つけるまで〜ウェディングフォトグラファー・渡辺未知さんの場合〜

カメラが⼿に馴染むようになってくるころ、おそらく多くの⼈が考えるのは“⾃分らしさをどう表現するか”ということではないでしょうか。現在プロとして活躍されているフォトグラファーの⽅々も、きっと「これだ!」という形に出会うまでは紆余曲折があったはず。そこでIRODORIでは、Xシリーズを愛用しているフォトグラファーの皆さんに“⾃分らしい写真”を見つけるまでのストーリーやそれを叶える機材・設定などを詳しく綴っていただきます。第3回目はウェディングフォトグラファーの渡辺未知さんです。

Vol:3:渡辺未知

X-T2/ XF10-24mmF4 R OIS/ F値:4.0 /シャッタースピード:1/100 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

私は子供の頃から映画が好きで、やがて写真にも興味を持つようになりました。 23歳の時、姉の結婚式を撮影し、アルバムを作ってプレゼントしたのが初めてのウェディングフォト体験です。その撮影が映画の一場面のようで楽しかったことと、アルバムが好評だったことでウェディングフォトにのめり込んでいきました。

平日はOLとして働き、休日にウェディングを撮影する生活を続けていたのですが、鳥取の小さな町で撮影したウェディングフォトを『晴待顔(はれまちがお)』と名付けて個展を開いたところ、確かな手応えを感じ、写真で生きていく決意をしました。そして、かねてより憧れていたイギリスへの留学を決めたのです。そこで色々なイギリスの結婚式を撮影し、帰国後、Michi Photography(未知フォトグラフィ)を起ち上げました。現在、日本とイギリスでウェディングフォトやマイヒストリーフォト(家族や個人の肖像写真)を撮影しています。

“好ましい写真”と“自分らしい写真”のバランスに悩んだ初期

『晴待顔』より引用

先にお話しした『晴待顔』には、実は後日談があり、「花嫁の写真ばかりで、新郎側は写真の出来に不満だった」という事実を知ることとなりました。イギリスの撮影でも、舞台裏で新郎新婦が一服しているシーンを撮影したところ、現地のフォトグラファーから「良い写真だがアルバムには入れないほうがいい」と言われたことがありました。

イギリスでの撮影写真より引用

このように、時として“ウェディングフォトとして好ましい写真”と“自分らしい写真”が衝突してしまうことがあります。 また、日本の結婚式(ブライダルビジネス)には独特のルールがあり、厳しい時間制限や禁止事項に従って撮影することが求められます。特に、私のようなフリーランス(持込カメラマン)は、挙式や支度風景の撮影を禁止されることもしばしば。こうした制約の中で“自分らしい”写真を撮ることには苦労や悔しさが絶えないのも事実です。

ウェディングフォトグラファーには、サービス業としてのスキルと、アートを追求するスキルの両方が必要です。この2つのスキルをバランスよく兼ね備えるのは中々難しいことですが、ただ、そんなチャレンジングな点も含めて、私はこの仕事が結局は好きなのです。

SOMETHING ELSEを仕事に

イギリスに留学した当初は、ウェディング以外の写真家を目指すことも考えていました。でも、あるとき、私の写真を見たベルギー人のミュージシャンに言われたんです。「ミチのウェディングフォトはSOMETHING ELSEだ」と。SOMETHING ELSEというのは、マイルス・デイビス(世界的なトランぺッター)の口癖で「他の誰にも真似できない特別なもの」というような意味です。 自分が好きだからというより、自分のSOMETHING ELSEを仕事にしよう。そう思ったことが、この道を選んだ大きなきっかけです。

X-E1 / XF35mmF1.4 R/ F値:2.8 /シャッタースピード:1/1500 /フィルムシミュレーション:PROVIA

ウェディングを撮影するのは、なんといっても新郎新婦のためです。写真を見返すたびに幸せを感じてもらうことが、私の幸せでもあるのです。過去に撮影した方々から「今でも写真を大切にしています」と言われるたび、なんてやり甲斐のある仕事だろうと思います。私自身の両親は離婚しているのですが、とても素敵なウェディングフォトが残っていて、それを見ると辛い記憶を乗り越えて「お父さんとお母さんが結婚して良かった」という思いが自然とこみ上げてきます。ウェディングフォトは“幸せの確かな証”として、本人やその家族にとって人生の支えになり得るのです。

X-T3/XF35mmF1.4 R / F値:2.0 /シャッタースピード:1/250 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

他方、私は、新郎新婦を知らない他人が見ても心を動かされるウェディングフォトをめざしています。私の写真を通じて、自分とは違う世界に住む人々の幸せに共感する気持ちを感じてほしい、そんな平和への願いをこめて、異文化ウェディングの撮影や、写真展の開催などにも力を注いでいます。

Xシリーズは単なる機材を超えた相棒

私は、ウェディングフォトはドキュメンタリーだと思っています。被写体に一歩でも近づき、話しかけて感情を引き出しながら、あるいは被写体と同じ目線に立って見たもの感じたことを撮影するのがドキュメンタリーの基本です。また、ポーズ写真やお決まりのシーンだけでなく、自然なショットや舞台裏まで密着撮影するので、ずっとカメラから目が離せません。そんな私には、被写体に威圧感を与えない、長時間ホールドしても疲れない、コンパクトな機材が必要です。もちろん、ウェディングは“美しく”撮れることがマストなのは言うまでもありません。

X-T1/ XF56mmF1.2 R/ F値:2.2 /シャッタースピード:1/4000 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

私が初めて手にしたXシリーズのカメラは『X-E1』ですが、2014年に『X-T1』が発売されて以来、X-Tシリーズを仕事のメインカメラにしています。当時、ミラーレスで撮影している同業者は周囲に誰もいませんでしたが、ケヴィン・ムリンズはじめイギリスで知り合った同業者達や、写真家の内田ユキオさんから叡智を得ながら自分流の使い方をマスターしていきました。

X-T1/ XF56mmF1.2 R/ F値:16/シャッタースピード:1/8 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

X-Tシリーズは、コンパクトさと堅牢さ、そして操作性の良さが魅力です。私の場合、とにかくメカはシンプルに使いたいので、常に絞り優先、あとは±補正と測光形式を切り換えて露出をコントロールしますが、この3つがアナログ式ダイヤルで手早く、分かりやすく(電源を入れる前から)セットできるところが特に気に入っています。

フィルムシミュレーションはPRO Neg.Hi。カスタム設定は{NR:-1/H Tone:-2/S Tone:-2/Color:+2/Sharp:+1}をデフォルトにしています。Xシリーズのカメラは、とろけるように滑らかに写るので、逆に私は少し“粗”をプラスしてフィルムのような“写真の手ざわり”をだすようにしています。
レンズは『XF10-24mmF4 R OIS』、『XF35mmF1.4 R』、『XF56mmF1.2 R』をメインに、必要に応じて『XF14mmF2.8 R』や『XF90mmF2 R LM WR』を使います。

X-T1/ XF10-24mmF4 R OIS/ F値:10 /シャッタースピード:1/500 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

Xシリーズの描写・発色の美しさは、とりわけプリントしたときに驚くほど威力を発揮します。
不思議なことに、Xシリーズを使いはじめたと同時にイギリスで撮影する機会が増え、『ハレの日のロンドン』というXシリーズだけで撮影したウェディングフォトの写真展も開催することができました。この、コンパクトでありながら最高に美しく撮れる機材でなければ、フットワーク軽く旅先で撮影することも、理想の結果を残すこともできなかったことでしょう。このように、かけがえのない縁とチャンスをもたらしてくれるXシリーズのカメラは、私にとって単なる機材を越えた愛しい相棒なのです。

今こそ、ウェディングフォトを人⽣の宝物に

X-T2/XF35mmF1.4 R/ F値:1.4 /シャッタースピード:1/2500 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

現在、コロナショックの影響で結婚式がなかなか挙げづらい状況になっています。それに伴いウェディングフォトグラファーも思うように仕事ができず、正直、私も気持ちが挫けそうになります。しかし、今すぐ結婚式を挙げるのが難しくても、例えば記念写真を残すこと(フォトウェディング)は可能です。どんな状況でも、まずは「ウェディングをあきらめないこと」が大切ではないでしょうか。

私自身は、これから“最高のフォトアルバムを残すためのウェディング”を提案したいと思っています。まず、最初に「どんなアルバムを作りたいか」を新郎新婦とフォトグラファーが一緒に考え、そのイメージに合わせて撮影場所、衣装、プロットを決めていくという発想です。そして、私のスタジオ等で、ささやかであってもちゃんと結婚式を挙げて、その思い出をアルバムに残し、コロナ以後の人生を支える宝物にしてほしい。これまでイギリスで撮影してきたような自由でクリエイティブなウェディングフォトを、これからは日本でも撮影していきたいのです。
今こそ、写真の力でウェディングを元気にする――むしろ、前よりもっと素敵なウェディングフォトを日本に広めるチャンスにしたい、私はそう考えています。

X-T3/ XF56mmF1.2 R// F値:2.8 /シャッタースピード:1/350 /フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi

※記事内に登場する人物には掲載許可を取っています
※2020年4月以前に撮影された作品です

Profile

渡辺未知

Michi Photography(未知フォトグラフィ)
熊本生まれ、京都在住。

「旅するウェディングフォトグラファー」として関西を拠点に全国各地、ときどきイギリスで活動。
お決まりの婚礼写真とは異なる、花嫁の支度風景など自然でドラマチックな情景を細やかにとらえた「さりげなく、深い」写真が持ち味。
クライアントワークの他、写真展、フォトエッセイなどのアートワークにも積極的に取り組んでいる。
イギリス王立写真協会(RPS)正会員
日本ウエディングフォトグラファーズ協会(JWPA)現副理事長

HP:https://camera-ai.com/
Instagram:@photomichi
Facebook:https://www.facebook.com/michi.watanabe.photography/
Note:https://note.com/w_p_m

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