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Trip 2025.08.29

富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き〜コハラタケル×フィルムシミュレーション『ACROS』×長崎〜

フィルム時代から90年以上に渡って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。今回は、日常の風景やポートレートを通して“等身大の美しさ”を切り取るフォトグラファー・コハラタケルさん(@takerukohara_sono1)に、『ACROS』で写真を撮りながら、長崎をそぞろ歩きしてもらいました。町はほんの少しずつ、確実に変わっていく。かつての記憶と今が溶け合うその景色を、『ACROS』が静かにそして繊細に映し出します。

コハラタケルさんの他記事はこちら





故郷の長崎へ帰るときはいつも成田空港を利用している。理由は単純で、そのほうが安いから。

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「飛び立つ瞬間は心躍る!」という感じはなく、長崎の海が見え始めると、徐々に帰ってきたという気持ちになり、何度も窓の外を眺める。カラーで撮るのも良いけれど、ACROSのようにモノクロで撮る海も好きだ。色情報がないので、海や空の滑らかな諧調をより深く知ることができる。

僕の地元に帰るまでは飛行機 → 船 → バス を利用しなければいけない。まだ写真を撮り始めていない20代の頃は船の移動が面倒くさいと思っていた。飛行機に乗って、ようやく長崎空港に着いたかと思いきやそこから船での移動。陸路でそのまま行ければ良いのにと。

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写真を撮り始めてからは「こんなにありがたいことない」と思っている。船に乗って地元に帰れるなんて最高じゃないかと。

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時津港に到着後、船はすぐに空港行きへと切り替わる。

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この日は取り壊されたあとの祖父母の家を見に行こうと決めていた。遺品整理のとき、僕は母と一緒にじいじ(うちはじいちゃんのことを「じいじ」と呼んでいた)の家に行った。

僕はそのときカメラを持って行かなかった。当時は写真を撮り始めたばかりの頃で、常にカメラを持ち歩くということを意識していなかったのだ。

そもそも写真を撮るつもりがなかったのだと思う。今だったら考えられないことだが、写真を撮ることに対しての意識がまだ低かった。

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兄は取り壊す前のじいじの家を肉眼で見ることができなかった。兄から連絡が来て、写真を撮っておいて欲しいと言われた。そのときにようやく僕は後悔した。なんでカメラを持ってこなかったんだろうと。

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仕方なくスマートフォンで撮影。僕は「カメラだったらもっと上手く撮れたはずなのに……」と思いながら兄に写真を送った。兄は「ありがとう」と言ってくれた。

そのときの罪滅ぼしというわけでもないのだが、自分自身、じいじの家がどうなったのかを見てみたかった。この日の気温は35度。長崎の夏は暑い。何度も見てきた道を少しずつ進んでいく。

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じいじの家が近づくにつれ、僕はワクワクしていた。当時よりも写真の経験値は上がっている。跡地を見ることで、自分が感じ取れるものがたくさんあるのでないかと思ったのだ。

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家の場所に到着した瞬間、あまりの殺風景さに言葉を失った。跡地には駐車場と有限会社の建物が建ててあった。もっとじいじの家があったときの風景を思い出せると思ったのだが、少しも思い出せる要素がない。庭にあった桜の木も伐採されていた。

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僕は「せっかく見に行くのだから自分が納得いく写真を撮ろう」と決めていたのだけど、どこから見ても微妙だった。少し高いところから見下ろしたらどうだろうかと思い、坂道と階段を上った。それでも全然、パッとしなかった。

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このときはショックだったのだけど、今、こうして文章を書いて写真を見返していると、見に行って良かったと思った。確かにじいじの家は変わってしまったけれど、まわりの景色や帰り道で歩いた脇道は変わっていない場所もたくさんあったからだ。

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翌日。AM4:30。滑る石と書いて、滑石(なめし)。僕の実家がある町だ。

今回の企画を聞いて、地元を撮ることが決まったときから早朝に撮影したいと思っていた。僕の夏休みの思い出といえば、一番頭によぎるのがラジオ体操だからだ。

X-Pro3 /XF35mmF1.4 R /F1.4 /1/30秒 /ISO800 /ACROS

さすがにここまで朝早くはなかったが、何度も上った坂道を当時となるべく同じ状況で見てみたかった。小学校低学年のときのラジオ体操はとにかくツラくて眠くて。でも、朝の青白く湿った空気感の世界はなんとも心地が良くて、自分の今の写真の原動力となっている。

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ラジオ体操は小学校の裏門側のグラウンドで行われていた。当時は“関係者立ち入り禁止”といった看板もなく、中学生の頃は抜け道として利用したりしていたが、今は立ち入ることはできない。新しくフェンスも立っているし、プレハブ小屋も造られていた。

子どもの頃の風景とは随分と変わってしまった。でも、変わらないものもある。小学校の裏門側のすぐ近くに神社がある。学校と神社の間に流れている側溝にはザリガニもいて、よく捕まえていた。

X-Pro3 /XF35mmF1.4 R /F1.4 /1/30秒 /ISO800 /ACROS

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友達と登ることもあったけれど、僕はひとりでこの神社に行くことのほうが多かった。この神社だけは何ひとつ変わっていない。木々もそのままで朝からセミが鳴き、蚊がたくさんいた。東京に来てから蚊に噛まれる機会が減ったので「歳をとって自分の血が不味くなった」と冗談で言っていたが、長崎ではたくさん噛まれてしまった。地元の蚊とはまだまだ仲が良いらしい。

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さらに坂を登る。見慣れた公園の姿はもうなくて、バスケットゴールができていた。広い敷地にひとつだけしかなかったので、夏休みであるこの時期は子どもたちの争奪戦になるのではないかと思う。

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それにしても地元は坂が多い。子どもの頃は何も思っていなかったけれど、坂と公園しかない。小さくてブランコしかない公園もあった。ブランコしかないのにどうやって遊ぶんだと思うのだけど、朝から夕方まで友達と一緒に遊んでいた。

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フィルムシミュレーションと画質設定の話もしよう。今回掲載している写真はjpegで撮ったものをそのまま掲載している。ただし、トーンカーブの設定を変えていて、ハイライト −2 シャドウ −2 に調整。この設定はACROSに限らず、どのフィルムシミュレーションでも同じ設定にしている。

X-Pro3 /XF35mmF1.4 R /F2.8 /1/60秒 /ISO400 /ACROS

さらに坂を登る。町を見下ろせる場所まで。

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岩屋山という山まで登ったほうが一望できるのだけど、自分が住んでいた町で可能な限り見渡せる場所に行きたかった。AM6:00。この時間になるとすっかり陽が登ってしまう。

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昔は早朝でも人がいたけれど、今はほとんどいない。この日もすれ違った人は10人もいなかった。

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あんなにキツかった坂道も下るとあっという間だ。

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僕の勝手な想像かもしれないけれど、集合住宅は増えたのに活気は減った気がする。子どもの数が減ったというのもあるだろうけど、家で遊ぶ子も増えたのではないだろうか。僕が通学していた小学校の1年生の人数を調べてみると、僕が通学していたときに比べ、半分の人数になっていた。

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これ以上、町の景観が変わって欲しくないなと思いつつも、今は住んでもいない自分がいうのは身勝手な意見なんだろう。少し歩けば、工事中の建物がすぐに見つかる。

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カメラを通して見た景色は、過去と今をより深く繋いでくれる気がする。

もう一度歩く。もう一度撮る。

僕の地元の町は神社と公園と坂道しかない。町はほんの少しずつ、確実に変わっていくけど、僕にとってはずっと好きな場所だ。

X-Pro3 /XF35mmF1.4 R /F8.0 /1/60秒 /ISO200 /ACROS

今回使用したフィルムシミュレーション

ACROS
モノクロながらディテールの再現が得意で、“美しいモノクロ”を目指して設計されたフィルムシミュレーション。

 
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