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Column 2019.08.16 update

『ベルリン、そして、ヨーロッパの片隅から』~番外編 ワルシャワ~コラムニスト・宮沢香奈 vol.6

空想の世界、いつかの時代へのタイムトラベル、デジャブはジークムント・フロイトが説く“すでに見た夢”なのか。
この街で過ごした数日間は、様々な角度から“非日常”だった。非日常的な出来事は、その非凡な経験から自分に何かしらの変化を齎す。それまで知らなかった世界、それまで会ったことのなかった人たち、それまで見たことのなかったものたち、それらを通して自分でも気付いていなかった奥の奥に眠る新たな自分を呼び起こすきっかけとなるのだ。

何かに掻き立てられるように旅に出るのはそういった“予期せぬ出会い”があるからなのかもしれない。正体は分からないけれど、“予期せぬ出会い”が待ち構えていることだけは分かる、だから、衝動に駆られて旅に出るのかもしれない。

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/180 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

7月、ある光栄な招待を受けて、ポーランドの首都ワルシャワへと向かった。自分の誕生日を迎えた直後のこと。

ベルリン、そして、ヨーロッパの片隅から』番外編として、“The Hotel Warszawa”で過ごした3日間とそこで開催された“Polish Thursday Dinners”パーティー、魅力溢れるワルシャワの街を、旅の友である『XF10』から写し出した“非日常”とともにお届けする。

時間に追われたビジネストリップでない限り、最近は列車やバスといった陸路で旅することを選んでいる。今まで“移動手段は飛行機”という認識だけで乗っていたのだが、実はあまり好きではないことに気付いた。今回もベルリンから長距離列車に乗り、ドイツとポーランドの田園風景を走り抜け、7時間に渡る陸路の旅を選んだ。

XF10(camera)/ F値:6.4 / シャッタースピード:1/800 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

到着したのは“Warszawa Centralna(ワルシャワ中央駅)。駅から一歩外に出ると斬新な曲線を描いたガラス張りのドームが強烈なインパクトで出迎えてくれる。ここはワルシャワ随一のショッピングセンター“ZłoteTarasy(ズウォテ・タラスィ)”、2007年に建てられたとは思えないほど近未来な風貌をしている。反して、徒歩圏内には“スターリン・ゴシック”を象徴する超高層建築が旧ソ連の面影を色濃く残している。

第二次世界大戦中に跡形もなく壊滅したこの街の旧市街地は、市民の強い意志により見事な復興を遂げ、ユネスコの世界文化遺産に登録された。長い歴史と戦争の痕跡は、バロック様式の宮殿、旧ソ連時代のブロック建築、近未来な高層ビルといった多種多様な建築が入り混じり、一体いつの時代にいるのか分からない不思議な感覚に襲われる。

XF10(camera)/ F値:7.1 / シャッタースピード:1/250 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:5.6 / シャッタースピード:1/100 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:4.5 / シャッタースピード:1/30 / モノクロ+Rフィルター(フィルムシミュレーション)

ワルシャワ中央駅からタクシーで7分という中心地に位置する“The Hotel Warszawa”は、1934年に建てられた66メートルという圧巻の高さを誇るポーランド一の高層ビル“The Prudential building”を改装したホテル。戦時中に爆撃を受けた影響でわずかに傾斜しており、斜めに傾いた5つ星ホテルという世界でも珍しく、ユニークなエピソードが付いている。そんな同ホテルの内装と142の客室は、落ち着きのあるウッド、独特な大理石、銅とオリジナルコンクリートから成るミニマルな天井、ゴージャスなシャンデリアと、いろんな要素がミックスされており、それでいて絶妙なバランスを保ち、退廃的でありながら気品に溢れている。あまりにラグジュアリーな空間は居心地が悪くなってしまうが、ここはラウンジから部屋、廊下、スパに至るまで全て解放的で無駄がなく、一切のストレスを感じなかった。

XF10(camera)/ F値:8.0 / シャッタースピード:1/320 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:13/ シャッタースピード:1/400 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

今回の旅のメインイベント“Polish Thursday Dinners”は、同ホテル6階に位置するルーフトップで開催された。そこに集まったのは、ポーランドをはじめ、ドイツ、フランス、イタリアなど、ヨーロッパ各地で活躍するアーティストやクリエイターたち。画家、ギャラリーオーナー、ミュージシャン、ファッションデザイナー、ジャーナリスト、レストランオーナーといった顔触れが揃い、次々に挨拶を交わしながら、ミシュランシェフによるベジタリアンメニューと豊富な種類のポーランドワインを堪能した。

XF10(camera)/ F値:2.8/ シャッタースピード:1/30 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/80 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

ヨーロッパに限らず、海外ではパーティーやディナーの場で日本のような名刺交換の儀式はない(*時間のない時やどうしてもコンタクトを取りたい人には説明しながら渡しているけれど)。当然ながらお辞儀をしながらの挨拶もない。相手の目を見ながら握手を交わし、スマートな自己紹介と自己アピール、気の利いた褒め言葉、親しくなったらハグやチークキス(頬にキスすること)。これが基本。

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/100 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/160 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:6.4 / シャッタースピード:1/200 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

マキシ丈のドレスにハイヒールで颯爽と歩きながら、笑顔で全てをこなすにはまだまだ経験が足りないと実感した。そういう世界に身を置きたいかと尋ねられても正直よく分からない。パーティーは話がおもしろい人といるのが楽しいし、食事はマナーがきちんとしていて、そこに流れる空気感がふんわり心地良い人といるのが好き。幼少期から親に細かく言われていたせいか、食事のマナーだけは自分のことも他人のこともとても気になるのだ。大袈裟ではなく、食事のマナーはその人の人生が赤裸々に写し出されてしまうものだと思っている。だから、自分にとっては身だしなみと同じぐらい、もしくはそれ以上に気になることなのだ。

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/250 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

ワルシャワ滞在最終日は、アート関係者が口を揃えて絶賛していたワルシャワ国立美術館(Muzeum Narodowe w Warszawie)へと向かった。ホテルから徒歩圏内という便利な立地も良いけれど、ユーロの約4分の1に値する通貨ズウォティにまだ慣れないままチケットを買うため窓口に向かったら何と入場料は無料だった。期間展は有料なため、常設を見終えてから時間に余裕があったら観ようと考えていたら、常設だけでじっくり観るには半日は掛かる驚きの展示数と広さだった。

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/1000 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:8.0 / シャッタースピード:1/160 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:2.8/ シャッタースピード:1/160 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

古代ギリシャから中世ヨーロッパ、そして、現代美術に至るまで見事なコレクションを鑑賞しながら、ここでもまたどこかへタイムトラベルしてしまったかのような錯覚を覚えた。この不思議な現象と魅力に溢れた“ワルシャワ”をよく知るには、当然ながらたった3日間では到底足りない。短い滞在で出会った人たち、訪れた場所、時代を超えた建築の数々が一つ一つ貴重な記憶として脳裏に刻まれていくのを感じながら、また長い長い列車の旅路に就いた。

XF10(camera)/ F値:5.0 / シャッタースピード:1/500 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:3.2 / シャッタースピード:1/90 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:4.5 / シャッタースピード:1/640 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

XF10(camera)/ F値:2.8 / シャッタースピード:1/1000 / PROVIA(フィルムシミュレーション)

今回登場したカメラ

FUJIFILM XF10

Profile

宮沢香奈/Kana Miyazawa

ライター、コラムニスト、PR、コーディネーター

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’s FUDGE、繊研新聞、WWD Beauty、mixmagなどがある。
また、2019年よりPRとしての活動を本格復帰させ、国内外のアーティスト、イベント、クラブなどに携わっている。

◼︎Qetic
http://www.qetic.jp/column/kana-miyazawa/
◼︎VOGUE
http://www.vogue.co.jp/lifestyle/culture/
◼︎繊研新聞
https://senken.co.jp/categories/kmiyazawa

Blog:HOUYHNHNM
Instagram:@kanamiyazawa

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