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Tips 2018.11.23

おでんを美味しそうに撮るコツとは?〜三軒茶屋『奥三茶 たまや』〜

【フードフォトテクニックvol.2 〜三軒茶屋の“肉おでん”『奥三茶 たまや』〜】
ミラーレス一眼カメラXシリーズで“料理写真を美味しそうに切り取る”撮り方テクニックを、都内の気になるお店の情報とともに紹介する連載企画『フードフォトテクニック』。スマホのカメラでも応用できる、構図のポイントや上手に撮るためのちょっとしたコツもご紹介します。今回は、最新機種の「X-T3」を持って、三軒茶屋と下北沢のあいだにある、穴場なおでん屋「奥三茶 たまや」さんにお邪魔しました。

今回訪れたのは三軒茶屋のおでん屋さん〜奥三茶たまや〜

三軒茶屋と下北沢を結ぶ「茶沢通り」の真ん中あたり、三軒茶屋駅から徒歩7分ほど歩いた先に現れる、三角の真っ赤な建物。大きな窓とぼんやり灯るちょうちんが目印の『奥三茶 たまや』は、こだわりの“肉おでん”と旬の野菜を使ったおばんざい、おいしいお酒がいただける、ツウ好みのおでん屋さんです。

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PROVIA/スタンダード(フィルムシミュレーション) 

やわらかなあかりが灯る、こじんまりとした店内。団体や予約客向けにテーブル席の用意があるものの、お店の雰囲気を一番味わえるのはカウンターでの立ち飲みスタイル。「調理しながら接客させていただけるのは、料理人としての醍醐味」と語るのは、同店で腕を振るうオーナーの土屋洸太さんです。

京都に本店をもつ都内の京料理店で、料理人としてのキャリアをスタート。その後、東京屈指の人気店で経験を積み、『奥三茶 たまや』をオープンしたのは昨年10月のこと。「もともとはイタリアン志望で、大学卒業後もイタリアンの店を運営する会社に就職したんです。が、同じ会社が運営する京料理店の大将が『お前、日本人ならイタリアンをやる前にまず和食をやれ』と。それが和食を勉強してみようと思うキッカケでした。その店はカウンター席がメインだったんですけど、お客様からダイレクトにいろんなことを感じられるのが本当に面白くて。その後は、『世田谷バル』『リゾットカレースタンダード』といった店で店長を経験させてもらい、料理とカウンターでの接客を学ばせてもらいました」

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

三軒茶屋と下北沢の合間に位置する『たまや』。店名にある“奥三茶”は、お店を構える際に考えた造語なのだそう。にぎやかな駅周辺からは少し外れた落ち着きのあるこの周辺は、個性派ベーカリーやおしゃれなコーヒースタンド、オトナなバーなど、こだわりのあるお店が点在する穴場エリアです。

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PROVIA/スタンダード(フィルムシミュレーション) 

「ここに店を構えることになったのは、縁ですね。この建物の大家さんが飲食店をやりたいっていうことで人を探しているときに、繋いでくれた人がいて。三軒茶屋駅前の再開発が始まって、三茶のシンボルである三角地帯(飲食店街)がなくなっちゃうみたいなんです。そうなったときに、このエリアが盛り上がってくれればいいなと思って、三茶からは少し離れているので“奥三茶”と店名につけてスタートしました。実際の住所は太子堂なので、地元の方からすれば『ここは太子堂です』って言われちゃいますけど(笑)。うちって窓が大きいから、前を通った近隣の方が外から挨拶をしてくれたりするんです。お店に寄るわけじゃなくても自然にそういう関係性になれるこの辺のローカルな雰囲気も面白いなって思っています」

X-T3(camera)/ XF50mmF2 R WR(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

〜素材の美味しさがつたわるフォトテクニック〜

京料理、イタリアン、バルで振る舞うタパスなど、さまざまなスタイルの料理を学び腕を磨いてきた土屋さんがお店の看板メニューに選んだのが “肉おでん”。和食の技法を生かしつつ、いろんなお肉をごろごろ煮込むイタリア・ピエモンテの郷土料理、ボリートミストからヒントを得たというお店自慢の逸品です。

まずは、一番人気の「おでんの盛り合わせ」をオーダー。昆布・塩・酒がベースの極々シンプルなお出汁で炊いた『たまや』のおでん。しっかり味のしみたおおぶりの大根、たまご、ちくわぶといったおなじみの具材に加え、やわらかくほぐれた牛アキレスや弾力のあるハチノスなど、お肉の味わいと食べごたえも楽しめる大満足の一皿です。たっぷり添えられたシャキシャキのネギ、とろろ昆布も好相性のアクセント。素材の旨味が溶け出したやさしいお出汁をひとくち飲めば、身体がじんわりと温まります。

X-T3(camera)/ XF50mmF2 R WR(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

具材たっぷりのボリューミーな「おでんの盛り合わせ」は、リアルな色味と素材感を表現してくれるフィルムシミュレーション『PRO Neg Hi』で撮影。壁を利用してシンプルな背景にすることでより素材感が引き立ちました。また、お皿の向きも気にしたいポイント。基本的には、お店の方から提供されたお皿の正面が一番美味しそうに見える角度です。たくさんの食材が一皿に盛られている料理の場合、一番手前にフォーカスを合わせるのがベター。ここでは 手前に盛られたお肉に焦点を当て、“肉おでん”の特徴を捉えました。

「たまや」もうひとつの自慢が、新潟の契約農家から直送された新鮮野菜を使った、おばんざいの数々。届いた野菜によって変わるバリエーション豊富なおばんざいは、単品はもちろん3種盛り/5種盛りでいただくことができます。この日の5種盛りは、右から、しゃきしゃき食感をお出汁で味わう「寒締めほうれん草のおひたし」をはじめ「きのこの佃煮」「オレンジ白菜の松前漬け」「赤かぶと長ネギの昆布じめ」そしてほんのり苦みがクセになる「塩レモンのマカロニサラダ」。「普段野菜を食べる機会が少ない人にも、一日の終わりの一杯と小粋な野菜のおつまみを食べて帰ってもらいたい」という想いが込められた品々は、心身ともにうれしい美味しさ。素材の風味と食感が、旬を感じさせてくれます。

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PRO Neg.Hi(フィルムシミュレーション)

おばんざいは、盛り合わせの全体像が見えるように素材感や器の絵柄、高く盛りつけられた料理の見栄えを生かして真横に近い角度から撮影しました。フォーカスは絞り気味にして撮影しています。

日本各地のご当地カップ酒や自家製ジンジャーエールを使ったサワー、グラスワインなど種類豊富なお酒のなかから「女性には特におすすめです」と出していただいたのは、グラスから溢れたスパークリングワインを升いっぱいになみなみと注いでくれる、その名も「こぼれ泡酒」。見た目の豪快さと“おでん×スパークリング”の組み合わせにビックリ!と思いきや、食べごたえのある「肉おでん」やヘルシーなおばんざいとの相性はバツグン。ひのきの香りがする升をぐいっと飲み干せば、なんだかツウな大人になれた気分。

X-T3(camera)/ XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(lens)/ PROVIA/スタンダード(フィルムシミュレーション)

「僕にとっての飲食店は、お客様と接する場。食べものや飲みものは楽しんでもらうためのツールという感覚です。そして、お店の雰囲気を作るのは、お客様。席があると『ここからは僕の席だから』ってテリトリーができてしまうけど、立ち飲みだからみんなで譲り合ったり、コミュニケーションが生まれやすくなる。そんな様子を見てるのが楽しいんです。別に一杯一食だけでもいいからちょっと立ち寄って、日頃たまっているものを少しでも解消してもらえれば、それでいいのかなって思ってやっています(土屋さん)」。シンプルで奥深い、お出汁の文化を気軽に味わえる『奥三茶 たまや』。人と人とが肩を並べておでんを頬張る店内には、身も心もほぐれるようなやさしい香りと湯気が漂っています。

今回は、これからの季節に味わいたい“肉おでん”と彩り豊かなおばんざいを「X-T3」で切り取ってみました。気軽に立ち寄れる雰囲気は、ひとり呑みデビューにもぴったり。いつもの街から一歩奥へ踏み込んだ人にしか味わえない、とっておきの肉おでんとおばんざいが、奥三茶で待っていますよ。

【今回登場したテクニック】

・おでんの素材感を『PRO Neg Hi』で表現。
・グラスにシャンパンを注ぐタイミングを狙うなら、連写機能を使うと◎
・たくさんの具材が盛られている時は、一番手前にフォーカスを。
・真横に近い角度から狙うことで盛り付けの高さも伝わる写真に。

Spot Information

奥三茶 たまや

住所:〒154-0004 東京都世田谷区太子堂5-16-7
電話番号:03-6805-4688
公式Facebook

今回登場したカメラ

FUJIFILM X-T3

「フードフォトテクニック」の記事はこちら

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text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by こばやしかをる

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