【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・御手洗 剛とXシリーズ 「いつでも体験のそばにあるカメラ」
学生時代に目にしたあるフォトグラファーの写真をきっかけに、カメラを手にしたという御手洗 剛さん(@go_mitarai)。現在は九州を拠点に活動、SNSには日常の中にあるストリートスナップや山の風景を撮影した写真が投稿されています。『X-Pro2』に始まり、『X-H1』、『X-T4』、そして現在お使いの『X-Pro3』に至るまで数台にわたりXシリーズを使用されてきたという御手洗さんに、“ライフスタイルに寄り添うカメラ”としての魅力とカメラが自身の生活や表現にもたらした影響について語っていただきました。
Interview:御手洗 剛
――現在お使いの『X-Pro3』を手にされるまで、数台にわたってXシリーズを使用されてきたそうですね。そちらを前提に、まずは御手洗さんがカメラを始めたきっかけを教えていただけますか?
カメラを始めてみたいと思った最初のきっかけは、6年ほど前にフォトグラファーの保井崇志さんの写真をSNSで拝見したことでした。その当時、保井さんが関西にある日本らしい風景写真をたくさん撮っていらっしゃって、私も関西の大学に通っていて、京都も近かったので、そうした作品にすごく惹かれる部分がありました。それで、最初は手頃な入門機から始めてみて、その半年後に『X-Pro2』を購入しました。
――写真を見て素敵だと感じたところから、実際に行動に移されたんですね。その後、『X-H1』、『X-T3』と続くそうですが、それぞれを手にされた理由は?
入門機での撮影に満足出来なくなったというのもありますが、それよりX-Pro2の見た目のカッコ良さに惹かれたところが大きかったです。その後、ちょっとずつ動画がブームになってきて、自分もやってみようかなと思ったタイミングでX-H1に移行しました。ただ、実際にやってみると動画を撮ること自体が自分にしっくりこなくて。写真の刹那的な部分というか、一瞬を捉える方が自分に合っているなあと感じました。そこで、もう一度写真を撮ることに集中して楽しみたいと思って手にしたのがX-T3。ただ、そのときはフルサイズのカメラも併用していました。その後、今使っているX-Pro3に落ち着いた、という経緯です。
――フルサイズのカメラもお使いだったということですが、それでは満たされない点があったのでしょうか?
大きな理由としては、色表現に満足出来なくなったことと、持ち歩きのしやすさという点で自分の撮影スタイルにはXシリーズがぴったりなんだなと再認識したことですね。X-Pro3は、すごくシンプルで余計なものがないカメラ。いろいろ便利な機能が付いているカメラはたくさんありますけど、自分的にはフォーカスを合わせてF値を決めてシャッターを押せれば十分で。そうした撮影スタイルで持ちたいと思えたのがX-Pro3でした。それともうひとつ、今使っているマニュアルフォーカスのレンズに一番合うボディがX-Pro3だったというのも決め手になりました。
――これまであらゆるモデルを手にされてきた視点で感じるXシリーズの魅力とは、どういったところでしょうか?
やっぱり一番は、持ち歩きたくなるデザインとコンパクトさだと思います。写真の色みや明るさという部分は後からいくらでも調整出来るけれど、シャッターチャンスはその瞬間にしか恵まれないわけで。そう考えたときに、「常に持ち歩きたい」と思える要素としてデザインというのはとても大事なんじゃないかなと思っています。加えて物理的ダイヤルで直感的に操作出来るところも自分にはすごく合っているので、体の一部のように扱えるような感覚がXシリーズで撮っていていいなと感じる点です。
――では、現在お使いのX-Pro3についてはいかがでしょう? Xシリーズの中でもとりわけ個性的な一台ですよね。
Xシリーズは感覚としてガジェットを持っているという感じがないんですよね。ファッションとはまた違うんですけど、スタイルのひとつとして持っているというか。たとえば、X-Pro3の背面液晶が隠れているところも、僕にとってはアウトドアでの撮影シーンで万一落としても割れる心配が少ないというメリットがありますし、撮ったその場で確認する作業をしないぶん撮影に集中出来るんです。「いい写真を撮ってやるぞ!」と意気込んで持っているわけでもなくて、生活とかライフワークっていう体験のそばにしっくりハマってくれるのものだと感じています。
――体験のそばにあるカメラ、素敵です。先ほどもフルサイズのカメラから移行された理由のひとつとして“色表現”を挙げていらっしゃいましたが、富士フイルムの色表現について感じる点をご自身の言葉で表すとすれば?
他のカメラで撮影した写真と比べて、コクみたいなものがあるなと感じています。単に色彩が濃くなるわけでも明るくハッキリするわけでもなく、コクが出るんです。普段はRAWで撮影したあとに画像処理ソフトで現像しているんですけど、富士フイルムの色って理論的にマネ出来そうでも、結局再現出来ないんですよね。自分の場合はRAWで撮るとはいえ、プロファイルでPROVIAやETERNAをあてています。特にPROVIAは、赤や青をすごく上品かつ印象的にしてくれるので、重宝しています。
――初めてカメラを手にされてから現在までに被写体や表現にも変化があったかと思うのですが、そうしたご自身の変遷にXシリーズはどう影響していますか?
やっぱり最初は保井さんが撮られるような日本の美しい風景や陰影が印象的な写真を目指していていたところがあったんですけど、Xシリーズを手にしたことで持ち歩く楽しみを感じるようになって、生活の一部を切り取るような感覚に移り変わりました。良い意味で、肩の力が抜けてきた感じがありますね。パッと見の印象としても、昔の写真に比べて今の写真には柔らかさが出てきた気はしています。
――撮る楽しさに気づいたことが、写真にもいい影響をもたらしているんですね。ご自身のSNSにはX-Pro3に限らずこれまでXシリーズで撮影したものも度々アップされていらっしゃいますが、SNSでのコミュニケーションや写真の編集など撮影後の楽しみについても聞かせていただけますか?
撮影することと同じくらい、写真の編集作業も楽しみのひとつです。RAWの状態から自分が感じたものを再現していくうえで理想的な色づくりを研究するプロセス自体が好きなのかなって思っています。SNS自体コンスタントに更新するようになったのは3年ほど前で、オンラインで知り合った方と一緒に写真を撮りに行くということも本当に増えました。自分だけでは気付くことの出来ない視点や情報交換し合えるところは、SNSをやっているからこそだと思います。
ただ、SNSって“写真を見てもらうことが目的”になってしまいがちでもあって。私自身、以前はそういう部分は少なからずあり、一時期投稿を控えていたこともあります。今は、前より更新頻度は減りましたけど、ちゃんと自分の生活の一部として写真を撮ることを続けられているし、自分のペースで楽しめていると感じています。
――これまでのお話からも、ご自分のペースを大事にしていらっしゃることが伺えます。Xシリーズを持つこと、そして広義で写真を撮るということは御手洗さんの日常にもたらしているものとはなんでしょうか?
マインドフルネスという言葉がぴったりなのかもしれないなあと思っています。登山が好きなんですけど、その頂上から絶景を見るために登るというよりは、山道を歩いているときに自然の空気を感じたり土を踏みしめながら歩く。そういった行為自体が気持ちいいなって思っているのですが、写真もその感覚と近いと思っています。自分が生活している中でいいと感じた瞬間を写真に収める、その行為自体がすごく気持ち良いし、無心になれるんです。そこがなにより魅力のような気がしています。そう感じられるようになったのは毎日持ち歩きたいと思わせてくれるXシリーズを手にしたからこそだと思っています。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)