【Xシリーズユーザーインタビュー】『X-T4』とフォトグラファー宵月絃 花のある風景写真に宿る、あたたかな感情。
どこか懐かしさを感じさせるファンタジックな花と風景写真が注目を集めている宵月絃(@__yoii_to)さん。もとはSNSでXユーザーの写真を眺めていたという彼女を写真の楽しさへ導いてくれたのは、同じくSNSで知り合った富士フイルムを愛する人々だったといいます。絵が趣味だという宵月さんが写真表現に惹かれた理由や標準ズームレンズ1本で風景から花まで撮りきるスタイルについて、そして自身の内面の変化に寄り添ってきたカメラのお話を伺いました。
Interview:宵月絃
自分が表現してみたい世界観や温度感を写すなら、富士フイルムのカメラ
――宵月さんは、もともと絵が趣味だったそうですね。今のように写真表現を楽しむようになったのにはどんな経緯が?
描いた絵をSNSで発信していたのですが、そこで繋がったお友だちが撮ったお花や風景の写真を見るたびに自分もこんな写真を撮ってみたいなって。スマホのカメラで日常の思い出を写すということはしていたんですけど、一眼レフならもっと自分が理想とするボケ感や光の具合が表現出来るんじゃないかという気持ちが膨らんでいきました。はじめに、家電量販店でおすすめしてもらった初心者でも扱いやすい入門機の標準・望遠レンズセットをお迎えしました。今は、そのあとに購入した小型軽量のミラーレスカメラと『X-T4』の計3台を使っています。
――そうしたなかで、Xシリーズとの出会いはどんなふうに訪れたのでしょうか?
当初は一人で写真を撮ってSNSに投稿してっていう感じで楽しんでいたんですけど、途中からSNSで知り合った方が撮影に誘ってくれたりして。そんなふうに知人と一緒に撮りに行く機会が増えていろんな方のカメラを見てみると、富士フイルム率がすごく高かったんです。Xシリーズのカメラらしいデザインにすごく惹かれましたし、実際に触らせてもらったりファインダーを覗かせてもらったりするうちに、自分もこれで写真を撮ってみたいなと思うようになりました。
――SNSでの繋がりがさまざまなきっかけをくれたんですね。
はい。古性のちさんが『X-T3』をメインで使っていらっしゃったときの写真もよく拝見していて、すごく好きなフォトグラファーの方が使っているのを見ると自分もその世界観に触れてみたいっていう憧れもあって。毎年、富士フイルムの生誕祭をお祝いするタグを見にいくのもすごく楽しみで、そこに投稿された写真を見れば見るほど自分が表現してみたい世界観や写真の温度感を写すなら、富士フイルムのカメラなんだろうなと思うようになりました。
外に連れ出したくなるカメラ『X-T4』
――数あるなかから『X-T4』を手にされたのは?
いろんなXユーザーの方からお話を聞いたり調べたり、IRODORIに掲載されていたyasukaさんが書かれた『X-T4』のレビュー記事を読んで、2021年の3月に『X-T4』をお迎えしました。その記事には、今使っているレンズも登場していて。
――『XF16-55mmF2.8 R LM WR』ですね。
お友だちのなかには一度の撮影に3〜4本レンズを持ってきている方もいるんですけど、私は基本このレンズ一本なので驚かれることも。ですが、お花畑の全景からお花にグッと寄ったものまで撮れるというのがすごく嬉しいですし、背景のボケ感がすごく柔らかくてきれいで、私にとっては同じ構図でボケ感にこだわって何枚でも撮りたくなるようなレンズです。
――『X-T4』とこのレンズは宵月さんにとって現時点でベストな組み合わせなんですね。では、『X-T4』本体のどんなところが気に入っていらっしゃいますか?
まず、『X-T4』のフィルムカメラのようなデザインと、ダイヤル操作の楽しさですね。うまく撮れないなっていう日でもダイヤルを触っているだけで満足できるし、外に連れ出したくなるカメラというのがすごく自分にとっては大きなポイントです。今も一人で撮影に出掛けることが多いのですが、知らない方から「そのカメラいいですね」って『X-T4』をきっかけに話が弾んだり。ほどよく重厚感があるので、手ブレが出やすい暗いところでの撮影時もしっかり構えられますし、加えて『X-T4』には手ブレ補正も搭載されているということなので三脚を使わなくても安心して撮影出来ています。
――『X-T4』には背面にバリアングル液晶が搭載されています。その点は、お花の撮影でも利便性を発揮しているのではないでしょうか?
そうですね。私の場合、長いときだと早朝から夕方まで撮影するのですが、ファインダーを覗いて撮ると電池の消耗が少し早いなと感じていて。そういった効率的な意味で液晶を見ながら撮影することもありますし、水面に近いアングルや足場の悪い場所など自分が覗けないようなところではバリアングルだとすごくラクに撮影出来るので重宝しています。
――撮影方法の選択肢があることで表現の幅も広がりますよね。表現といった点で、富士フイルムの色表現についてはどんな印象をお持ちですか?
『X-T4』と併用している2台のカメラは、暖色が強く出たり色自体のコントラストが鮮やかだったり、それぞれに特徴があってどれも好きだなって感じているんですけど、自分の中では『X-T4』で撮る青色がすごく好きな表現に近い青色で。澄んだ青から夏の焼けた夕暮れどきの青とかグラデーションっていうのが、鮮やかさの中にちゃんと優しい温度があってすごく好きです。お花と空って一緒に写したくなるので。レタッチをするにしても、もともとの色が好きだとその過程が楽しくなるって感じますね。
――普段フィルムシミュレーションは活用していらっしゃいますか?
お花の撮影では、お花そのものを生かした写真を撮りたいので基本的にはPROVIAで撮影して、レタッチもお花の色に合わせています。カフェやテーブルフォトを撮るときには、その場の雰囲気に合わせてクラシッククロームに設定したりすることもあるのですが、フィルムシミュレーションについては慣れも必要なのかなって感じているので、これから少しずつ使いこなせるようになっていけたらいいなと思っています。
ーー先ほどお話にも出た、現在お持ちのカメラの使い分けについてもぜひ教えてください。
1台目に買ったカメラでは、花と夜空や月を撮ることが多いですね。自分の好きな世界観をちゃんと写真で表現出来るようになったのはそのカメラがあったからなので、今でも初めてお迎えしたカメラがこれで良かったなと思っています。私は観光地や有名なお花畑というよりは自分の身近にある環境で撮影することがメインなので、2台目の小型軽量なカメラを使っています。
その場所にあるあたたかさや懐かしさを大事に残したい
――それぞれのカメラの良いところを踏まえてシチュエーションごとに使い分けをされているんですね。初めてカメラを手にしたときから現在に至るまで、撮影すること自体や表現に対する考え方に変化などはありましたか?
撮り始めの頃は風景の写真がほぼなくて、お花の個性に執着していた部分があったし、自分の悲しさや痛みのような負の感情を写真のうえで儚さや優しさに変換させているところがあったんです。もともと外のものに触れられない精神状態が続いていたんですけれど、カメラを持ち続けることで外に出られるようになったという過程があって、そこから撮りたいものが変化していったように思います。
――前向きな変化のそばに『X-T4』があったというのは、とても喜ばしいお話です。今はどんな気持ちで写真を撮っていらっしゃいますか?
とにかく自分の世界の中でお花を撮っていたんですけれど、撮りたいものが花だけではなくなったというのも『X-T4』をお迎えした理由でした。今は自分一人の感情だけではなくて、自分が知らない誰かの思い出とか記憶とか、その場所にあるあたたかさや懐かしさを大事に残したい気持ちが多くなってきています。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)