【Xシリーズレビュー】〜写真家・岩倉しおり〜富士フイルム『X half』で探る、視点と色彩

フィルムカメラと『GFX 50R』をシチュエーションに応じて使い分けている香川県在住の写真家・岩倉しおり(@iwakurashiori)さん。美しい風景と人物を掛け合わせた独創的な写真表現は、見る人の記憶に静かに織り込まれるような不思議な魅力を宿しています。今回は、長らくフィルムカメラに親しんできた感覚と妥協なきGFXシリーズのクリエイティブに触れている視点をもって、Xシリーズ新機種『X half』での撮影体験を語ってくださいました。
Interview:岩倉しおり
――普段は『GFX 50R』を愛用されている岩倉さん。今回手にしていただいた『X half』は、まずそのコンパクトさが印象的だったそうですね。
最初に手にしたとき、片手で撮れるくらい軽くてコンパクトなボディにとても驚きました。GFXシリーズのように重厚感のあるカメラだとどうしても撮られる側も構えちゃうところがあると思うんですけど、『X half』は見た目が可愛らしいこともあって、自然体で思い出をパシャパシャ撮れるカメラだなと思いました。
――ハーフカメラが好きな方にはグッとくるポイントが盛りだくさんの『X half』、岩倉さんがとくに面白いと感じたのはどんなところでしょう?
ハーフカメラさながらの親しみのあるデザインは持ち歩いていて気分が高まりますし、デジタルでありながらフレーム切り替えレバーを使ったアナログ操作で『2in1』撮影ができるというところも楽しいですよね。レバーを引いてから2枚目を撮影するという工程がとてもリアルで、これはフィルムカメラが好きな人たちにとっては嬉しい仕様ですし、どんな人にとっても新しい驚きや発見があるんじゃないかなと思います。
――ここからは岩倉さんが撮影してくださった作例とともに『X half』の魅力を深掘りしていきたいと思います。まずは、今お話にも出た『2in1』のお写真から。自然が織りなすグラデーションの美しさに心惹かれる一枚です。
2枚とも三豊市の海で撮影したものです。左は、干潮時にできる潮だまりで撮ったもの、右は同じタイミングで空を見上げて撮りました。もともとフィルムのハーフカメラがすごく好きだということもあって、いつもの感覚で『2in1』撮影を楽しめましたし、撮ったあとに組み合わせを考えられるデジタルだからこその面白みも感じられました。景色と人物を組みわせてもいいですし、たとえば恋人や友人同士でお互いを撮りあって2in1写真にしてもきっと素敵だと思います。
今回、『X half』に搭載された新しいフィルターもフィルムカメラ好きとしてはすぐに試してみたくなる機能でした。左の花火のアップの写真は『ライトリーク』を設定してみたのですが、撮るごとに赤くなっている部分がバラバラで、それが面白くて何枚も撮ってしまいました。赤くなっている濃淡のバランスもふまえて『2in1』の組み合わせを考えていくのもすごく楽しかったですね。フィルムだと一本丸ごと感光してしまうのでなかなか挑戦しづらいのですが、『X half』なら気兼ねなくフィルムならではの効果を表現できるので、写真のバリエーションがどんどん広がっていくのも嬉しいです。
――『X half』には“フィルム丸ごと一本分を撮り切る”という体験ができる『フィルムカメラモード』も搭載されていますが、こちらはいかがでしたか?
これも、フィルムカメラらしいすごく面白い機能が搭載されているんだなって驚きました。撮り切るまで撮影したものを確認できないという醍醐味をデジタルで体験できるところがとても大胆ですし、フィルムカメラに対する愛と遊び心が詰まったカメラだなと感じました。フィルムカメラモードでは、家族や日常の写真を撮ってみたのですが、GFXシリーズともフィルムカメラともまた違った視点が生まれる感覚がありつつ、撮影後にアプリ上で現像されるのを待っているワクワクした気持ちはフィルムカメラと共通するものがありました。
――Xシリーズ特有の色表現や描写力のもとフィルムカメラライクな撮影を体験できるという点で、利点や強みを感じる場面はありましたか?
こちらの写真は、夕日が沈んだときに撮影してみた1枚なのですが、フィルムでは難しい状況でも奥行きや微妙な色合いをとてもきれいに写し出してくれていたので、そこはさすがXシリーズだなと感じました。気軽さだけではなく、しっかり作品を撮りたいときにも応えてくれるカメラだなという信頼感がありますね。それと今回、フィルムシミュレーションの切り替えもダイヤルをスライドさせる仕様に変わっているのも撮影時に便利だなと感じました。とくに、夕暮れどきのように刻一刻と変わっていく景色を撮るときにはテンポよく操作できて嬉しいですね。
――撮影の楽しみはもちろん、専用アプリを使って画像管理やSNSでのシェアもスムーズにできる『X half』。岩倉さんはチェキ™との連携も活用してくださったそうですね。
最初は「チェキプリント™ってどうやるんだろう?」って思っていたんですけど、実際に試してみると説明を見なくても問題ないくらい簡単だったので、これだけお手軽ならどんどんプリントしたくなっちゃうなと思いました。実際に写真を手に取ると、発色もきれいだしチェキプリント™ならではの風合いが加わるので液晶で見たときよりもさらに愛着が湧きますね。プリントしたチェキ™は、デスクに飾っています。
――そのほかに、アプリの利便性を感じる場面はありましたか?
まずスマホとカメラの連携がとても簡単だということに加えて、撮影したものを撮って出しでSNSにすぐあげられる気楽さは魅力的だなと思います。普段GFXシリーズで撮影したものは一度パソコンに取り込んでレタッチ後SNSにアップするという流れなのですが、『X half』は撮って出しでも十分ですし、あえて作り込まずにパッとシェアしたくなるような親しみのある写真が撮れるカメラだなと思いました。
――こちらの楽しげなお写真も、普段の岩倉さんの作品にはないラフさがあって新鮮ですね。
そうですね。普段GFXシリーズでは撮らないような写真ってなんだろうって考えていたときに、友人と「影がいい感じだね!」と言いながら撮った一枚です。さっと片手で構えられるから気持ち的にもこういうラフな瞬間を撮りたくなるのかもしれませんね。この日、作品とあわせてこういった何気ない写真もかなりの枚数を撮ったのですが、バッテリーもちゃんと保ってくれました。
――『X half』だからこその体験を楽しまれる様子がお話からも伺えます。どんな方におすすめできるカメラだと思いますか?
すごくコンパクトで持ち運びがしやすいうえに世界観のある写真もしっかり撮影できてシェアも簡単なので、旅行好きな方にはすごくピッタリなカメラだと思います。片手でパシャパシャ撮れますし、自撮りにすれば『写ルンです』で撮影したようなお馴染みの写真が撮れるんじゃないかなと思うので、今度自分でもぜひ試してみたいですね。カメラの操作に詳しくなくても本当に直感的に素敵な写真が撮れますし、アプリの操作も簡単なので、初めての一台としてもすごく楽しめると思います。普段GFXシリーズとフィルムカメラを併用している私にとっては、フィルムカメラさながらのファインダー撮影を枚数を気にすることなくいつでも楽しめる、フィルムとデジタルのいいところを詰め込んだ常に持っておきたくなる一台です。
text by野中ミサキ(NaNo.works)
今回登場したカメラ

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