【Xシリーズユーザーインタビュー】Kimura Hinamiと『X-Pro3』 冷たかった景色が、輝いて見えた理由
日常のなかに潜む柔らかな光と、その場の温度まで伝わるような空気感を切り取るKimura Hinamiさん(@hngrm_2)。2025年8月に理学療法士からフォトグラファーへと転身し、現在はフリーランスとして活動の幅を広げています。そんなKimuraさんが、かつて写真を素直に楽しめなくなった時期に救いとなったのが、憧れの写真家をきっかけに手にした『X-Pro3』。同機の持ち味であるフィルムカメラライクな操作感の面白み、ファインダーを覗いて風景を丁寧に掬い取っていく心地よさを感じているのだといいます。現在の撮影スタイルに辿り着くまでの過程と、身体の一部のように感じているという『X-Pro3』との出会いから現在のスタイルに至るまでを伺いました。
Interview:Kimura Hinami
「撮りたい気持ち」が動き出す。
X-Pro3で再発見した写真の楽しさ
——まずは、Kimuraさんのご経歴を教えてください。現在は、撮影のお仕事をメインにされているそうですね。
2025年の8月にフリーランスフォトグラファーとして活動を始めて、今は写真のお仕事をしています。以前は、理学療法士としてお年寄りのお宅を訪問してリハビリをサポートするお仕事をしていました。しばらくは写真の活動と仕事を並行していたのですが、カメラのお仕事を少しずついただけるようになったので、思いきって転身を決めました。
——カメラ自体は、いつ頃から始められたのですか?
カメラ歴でいうと9年くらいですね。大学生のときに周りでカメラが流行っていて、友達が撮った写真を見たことがきっかけでした。スマホとは全然違うボケ感とか独特の空気感に「こんなにきれいに撮れるんだ」って感動したんです。自分でもこんな写真を撮ってみたいという気持ちで、一眼レフカメラを買いました。
——初めて手にした一眼レフカメラから現在愛用中の『X-Pro3』を手にするまでには、どのような経緯があったのでしょうか?
最初に買った一眼レフカメラを4年ほど使ったあと、社会人になって動画にも興味をもったので、他メーカーのフルサイズミラーレスカメラに乗り換えました。ただ、その機種だと自分の中にあるイメージがレタッチでもうまく表現できなかったんです。実は、同じ時期に富士フイルムの色味に憧れて『X-T4』を手にしたこともあったのですが、映像をメインに撮りたい当時の自分には使い心地の面でしっくりこなくて、短い期間で手放してしまいました。
——『X-Pro3』以前に富士フイルムのカメラを手にされていたんですね。その後、再びXシリーズの魅力に触れたきっかけとは?
フォトグラファーへの転身後、地元の関西から上京して写真館で働くことになったのですが、仕事で毎日カメラを扱っていると写真を素直に楽しめないというか、プライベートでまったく撮らなくなってしまって。「これはまずいな……」と思っていたときに、ある写真家の方が『X-Pro3』で撮影した作品をSNSで見て「同じカメラを使えば、自分にもこんな写真が撮れるんじゃないか」って久しぶりに気持ちが高揚したんです。それで、当時すでに廃盤だった『X-Pro3』を必死に探して、その方が使っていた『NOKTON 35mm F1.2 Xマウント』レンズとの組み合わせも、そのままマネしました。
デジタルで味わう、現像を待つワクワク感。
ファインダーを覗いて掬い取る“今”
——実際に『X-Pro3』を手にしてみて、写真との向き合い方に変化はありましたか?
それまでのカメラは、いいクオリティを出すための仕事道具という認識だったんですけど、『X-Pro3』を買ってからはどこに行くにも持ち歩きたくなるし、自分の好きなものを撮りたいという気持ちが大きくなりました。このがっしり頼もしいボディもシャッター音もお気に入り。『X-T4』を使ったことはありましたが、写真の楽しさをもう一度教えてくれた『X-Pro3』との出会いによって富士フイルムのカメラの魅力を知ることができたように感じています。
——背面液晶をあえて隠した『X-Pro3』は、Xシリーズの中でもかなりユニークな一台。そうした部分にも惹かれる理由があるのでは?
撮ってすぐに確認せずに、おうちに帰ってからのお楽しみ的なワクワク感を味わえるところも自分のスタイルに合っていると感じますし、フィルムカメラを扱っているときに近い感覚で撮影できるところがすごく面白いです。撮影するときに必ずファインダーを覗かないといけないので「写真を撮ってる」って強く実感させてくれますし、一枚一枚丁寧に撮ろうって思わせてくれるカメラですね。
——もともと好印象をお持ちだった色表現についてはいかがですか?
ずっと悩んでいたレタッチの問題が、フィルムシミュレーションのおかげでようやく解決しました。とくにクラシックネガは、自分の感性とすごく相性が良くて、撮影後のレタッチもコントラストの強弱を自分なりに調整するくらい。ファインダーを覗いた瞬間に「あ、これこれ」と納得できる世界が出来上がっているんです。光の柔らかさとかあたたかい空気感とか、自分が残したいと感じたものをそのまま写し出してくれる安心感があります。
些細な日常を愛おしむ。
カメラが与えてくれた新しい視点
——Kimuraさんの作品からは、何気ない風景の機微が伝わってきます。現在の撮影スタイルに辿り着くまでの経緯を教えてください。
もともとはポートレートばかり撮っていたのですが、上京してすぐのころは友達も少なくて、被写体になってくれる人がいなかったんです。そんなときに『X-Pro3』を持って家の周りを散歩し始めたことが今のスタイルにつながりました。道端に咲いている花とか、放置された自転車とか、ふとした光の入り具合とか。それまではスナップや風景にはあまり興味がなかったんですけど、このカメラを持ち歩くようになってから、些細な光景がすごく愛おしく感じるようになったんです。
——カメラによって、日常の捉え方が変わったのですね。
最初は「東京って冷たいなあ」なんて思っていたんですけど、『X-Pro3』を持って歩いているうちに、「この街にもこんなにきれいな光があるんだ」って気づくことができて。今振り返ると、この街を好きになるきっかけをカメラがくれたんだなって思います。
——自分がどんなときに「素敵だ」と感じているのかを教えてくれる、そういったところも写真を撮ることの醍醐味ですよね。
そうですね。なので、普段撮影するときは「これを撮りに行こう」って決めすぎないようにしています。目的地も決めずに、光のありそうな場所へふらっと歩いていって。そこで偶然出会ったものに対して、しっかり足を止めて、マニュアルで露出をじっくり決めて撮る。パッと切り取るスナップというよりは、一枚一枚丁寧に、その場の空気や光を掬い取っていくような感覚です。
——昨年開催された初の写真展『In Light, I Live』。展示作品のほとんどが『X-Pro3』で撮影されたものだったそうですね。
12点のうち11点が『X-Pro3』で撮ったものでした。今回、個展に向けて“今の自分が見てもらいたい作品”を選んでいったら、自然と『X-Pro3』で撮ったものばかりになっていました。SNSで流れていくのとは違って、大きくプリントした作品を前に、来てくださった方たちと会話することも新鮮で。会場に『X-Pro3』を持参していたので「このカメラで撮りました!」なんてやり取りもありました。本当に、やってよかったなと心から思える経験でした。
——Kimuraさんにとって『X-Pro3』は、撮る楽しさを教えてくれたカメラであり、可能性を広げてくれるパートナーのような存在なんですね。
寝る、食べる、と同じように“写真を撮る”ことが生活の一部になっていて、その中心にいつもこのカメラがあります。もう愛着が湧きすぎていて、たとえ液晶の一部が映らなくなっても、中身が無事なら使い続けたい。自分にとっては、なくてはならないものであり、身体の一部みたいに大切な存在ですね。
——『X-Pro3』とともにどんな表現が生まれるのか、今後も楽しみです。
近い将来、地元の関西でも個展をやりたいですし、自分がどういう視点で日常を見ているかを伝えるためにPOV動画の発信も広げていきたいなと思っています。これからもこのカメラと一緒に、日常のなかにある美しい光景を探し続けていきたいです。
text by 野中ミサキ/NaNo.works



























