【Xシリーズ ユーザーインタビュー】猫写真家・関由香に訊く、『X-E3』が猫撮影にうってつけなワケ
10月に公開された福士蒼汰さん主演映画『旅猫リポート』の公式写真集『旅猫アルバム』や、Y!mobileのCMで有名な“ふてニャン”の写真集『ふてやすみ』などを手がけてきた猫写真家・関由香さん。IRODORIでは、「X-E3」を使ってさまざまな土地の猫を撮りおろした「ゆるゆる猫さんぽ」の連載でおなじみです。関さんの写真は、猫ちゃんたちのほんわかとした表情やユニークなポージングが特徴的。見ていて思わずクスリとしてしまう、愛と可笑しみを感じられる作品ばかりです。今年はキャリア15周年を迎え、それを記念した大規模な個展「台湾 ねこうらら」を催されるなど、人気猫写真家として活躍の場を広げている関さん。今回は猫を撮るうえでの心構えや、連載を通して気づいた「X-E3」の魅力、そして今後の目標について語っていただきました。
INTERVIEW:関由香
「『旅猫リポート』はふだんと真逆の姿勢で挑戦」
――改めて、関さんの来歴について教えていただけますか?
もともとブライダル専門の撮影会社で4年半働いた後、26歳のころに前から夢見ていた猫写真家として独立することを決意しました。その決意を胸に、猫が多いと言われている沖縄の離島へ撮影一人旅に出ました。このときに撮影した作品集『島のねこ』が「第4回新風舎・平間至写真賞優秀賞」を受賞し、その流れで受賞作をまとめた写真集『島のねこ』を刊行してデビューを果たしたんです。それから事務所を立ち上げ、「ユーモラスで愛おしい、ねこの日常」をテーマに撮影をし続けています。
――ふだんはどのようなお仕事をされているのでしょう?
写真集制作のお仕事をメインにやっています。島の猫などの写真集を自由に撮影させていただくこともありますし、人気の猫ちゃんたちのフォトブック用に撮り下ろすこともあります。キャットフードの広告用撮影やカレンダー用の写真撮影、雑誌やウェブマガジンでの連載なども抱えていますよ。
――最近では福士蒼汰さん主演映画『旅猫リポート』のスチール撮影も担当されていましたね。
はい、最近は映画やドラマ関連のお仕事も増えてきました。わかりやすい作品名を挙げると、北村一輝さん主演作『猫侍』、イッセー尾形さん主演作『先生と迷い猫』、カンニング竹山さん主演作『ねこタクシー』にて準主役を張る猫ちゃんたちを撮影してきました。『旅猫リポート』ではメインキャラクターである猫“ナナ”関連の宣伝用スチール写真や映画公式写真集『旅猫アルバム』(扶桑社)のための撮りおろしスチール写真を担当しています。
――『旅猫リポート』の撮影はいかがでしたか?
ふだんと真逆の姿勢で挑んだので、かなり鍛えさせられた撮影でしたね。いつもは猫ちゃんを警戒させないようなるべくリラックスして撮影するよう心がけているんですけど、今回は映画撮影の合間、いつ撮影できるかわからない環境だったので、常に緊張感を保っていました。撮りたいイメージを脳内で事前に作りあげて気合満々で撮影を行なったので、それがナナにも伝わったのか、思い描いていた以上に良い表情をパパッと撮ることができました。映画の撮影班のように固定カメラではなく、自由に動いて撮影することができたので、それもあって短時間で撮れたんだと思います。でもなによりもナナが特別な猫だということが大きいですね。「次こうしてほしいな」って思うと、その動作やポージングをしてくれる。ナナには他の猫ちゃんにない才能があるって感じましたね。
――『旅猫アルバム』では、後日、写真集用の追加撮影もされたと伺いました。
そうなんです、ちょうど1年後にナナと再会して撮影を行いました。映画の撮影現場では短時間しか会えなかったこともあり、ナナには忘れられていたのですが(笑)、このタイミングにじっくりと向き合うことができてぐっと距離が近づきましたね。今回はお互いリラックスして撮影することができたと思います。ナナはすごく好奇心旺盛なアクティブ猫ちゃんなんですけど、そういった快活な表情や動きも切り取ることができました。写真集で特におすすめなのは、富士山の麓で跳ねまわっている写真です。映画では見られなかったナナの一面が垣間見られる作品だと思います。
「猫を撮影するときは、とにかく愛情を持って接することを大切に」
――先ほど“リラックスして撮影に挑む”とおっしゃっていましたが、ふだん撮影する際に気をつけていることや大切にしていることはなんですか?
とにかく愛情を持って接することを大切にしています。あとは思い描いている画が撮れなくとも、猫ちゃんを褒めて一緒に楽しみながら写真を撮ることを心がけています。ネガティブな声色を出すとそれが猫ちゃんに伝わって、しょんぼりさせたり緊張させてしまうことがあります。なので、逆にポシティブな声がけをすると、猫ちゃんも気持ちよく撮影に応じてくれるんです。
――猫ちゃんを撮影する際のコツなどはありますか?
いろいろな撮影を経て感じたのですが、飼い猫の一番素敵な表情を撮れるのは飼い主さんなんです。家族として撮り、撮られるからなんでしょうね。だから飼い猫の場合は、飼い主さんだけに見せる仕草や表情をみつけ、その仕草のどのカットを切り取るか意識して撮るのが一種のコツかもしれません。外猫の場合は、見つけたらすぐに追いかけたりせずにその場でじっと待つこと。つい追いかけちゃうと思うのですが、そうすると逃げてしまうことが多いので、気持ちに余裕を持って忍耐強く待つというのもある意味コツと言えるかもしれません。あと、小さな音を鳴らして注意を引いたり、動きがあるときは連写で撮影しておくことで、良い表情を捉えやすいかと思います。猫のペースにあわせて、自分が動いて撮影するというのも重要なポイントですよ。
「X-E3は猫の撮影にうってつけ」
――IRODORIでは全5回のコラムをご一緒させていただきました。連載していて印象深かったことなど教えていただけますか?
飼い主さんと看板猫の深い絆を感じることができたり、地域の方々と外猫の心地いい共存関係が伺えるような温かみある写真を撮りたいと思って場所の選定をしていったのですが、そういった場所は情報が少なかったりするので、リサーチなどは少し大変だったかもしれません。でも楽しい苦労です(笑)。1記事2部構成にして、後半に取り上げる猫ちゃんは編集部の皆さんとロケハンして決めていったのですが、突如看板猫を発見して飼い主さんにお声がけし快諾いただいたり、猫を追っている様子を見て地元の方がその土地の猫情報を教えて下さったりして、そういった皆さんの温かい気持ちが一番印象に残っていますね。また看板猫ちゃんの撮影においては、その子たちだけというより、その子たちのいる暖かい家族の景色を撮らせていただいたと感じています。今でも思い出してはほっこりとした気持ちになっています。
――連載では「X-E3」を使用いただきましたが、現場でよく“使いやすい”とおっしゃっていた記憶があります。関さんにとって「X-E3」はどんなところが魅力的ですか?
とにかく軽いところが魅力的でした。ずっとカメラを持っていても苦じゃないですし、俊敏な猫ちゃんたちを追うのがものすごく楽。シャッター音も静かでピントが合う精度も高いので、猫の撮影にうってつけだと感じましたね。動きが多い撮影では一分一秒が大切ですが、タッチパネル液晶を使えば拡大縮小・ピント合わせ・シャッターを切るという動作が一瞬でできてありがたかったです。それに、1回のシャッターで3段階の明るさ(露出)の写真を撮ることができる「AEブラケティング」の機能も重宝しました。お気に入りの写真をワイヤレスでチェキプリント化できるのも遊び心あって楽しいし嬉しいですよね。
――フィルムシミュレーションもいくつか使用されていましたね。どのテイストがお気に入りでしたか?
いろいろな組み合わせを楽しみながら撮影していたのですが、なかでも「vol.4〜三ノ輪篇〜」と「vol.05 〜都筑篇〜」のときに設定していた「クラシッククローム」が好みでした。特に昔ながらの喫茶店“白鳥さん”にはぴったりハマって、お店が持つレトロっぽい雰囲気の写真が撮影できたと思います。
――最後に、次の15年間で挑戦したいことを教えてください。
童話に出てきそうな海外のかわいい村や街や島に行き、現地の猫ちゃんたちを撮影して写真集を作ること。またそれとは別で、昔ながらの雰囲気が残っている場所で、猫写真家として“家族の景色”をテーマにモノクロームで表現していくこと。あと、東京オペラシティのアートギャラリーで個展を開催することも密かな野望なんです(笑)。
Photo by 関由香
text by Yuka Yamane
interview photo by 編集部