『X100V』で撮る、心の平和を保つ何気ない日常〜オリンvol.2〜
フォトグラファー・オリン(@fujii_orin)さんが愛用カメラ『X100V』で撮影した写真とともに綴る全3回のコラム。第二回目は、X100Vで撮る様々な風景の写真について綴っていただきました。
私が風景を撮り始めたのは、上京するにあたって故郷の奄美大島から離れる事への寂しさがきっかけでした。
18年間見続けていたこの島を記録し、ホームシックならぬ島シックにならないようにと写真として収めることを決めました。
故郷にいる時は、写真の撮り方なんて全く知らなかったので「とりあえず沢山撮っておこう」と見てきた景色を自分の視線と感覚で撮っていました。
上京してから、撮り溜めていた故郷の写真を見返すと、懐かしさと愛しさのあまりついつい涙を流していました。
たった一枚の写真がここまで私の感情を揺さぶるなんて。
その時ふと思ったのです。
「写真は見たままの景色を写すだけでは無く、その日の思い出や感情を記録しているんだ」と。
その頃にどんな気持ちで撮っていたのか、脳内に当時の情景がフラッシュバックするんです。
それからは自分の日記として、写真で日常を記録するようになりました。
とは言っても毎日お出掛けするわけでも無いので、仕事に向かう途中に何となく良いなぁと感じた景色を撮り続けていましたが、その中で色々な発見がありました。
普段なら見逃しているはずの景色を知ることができたのです。
気が付いた途端、一瞬にして世界が鮮やかに美しく見えてきました。
常に好奇心を持つことが日常の楽しみにも繋がっています。
去年の夏は、コロナ感染対策を万全に行い『X100V』を片手に奄美大島に帰省をしました。
驚いたのが、X100Vを通して見ると、見慣れていたはずの景色が初めて訪れた場所のように感じられたこと。
日記のように景色の写真を撮り続けていたお陰で気が付くことも多く、全てが輝いて見えました。
こうしてみると、撮りたい景色が様々あっても、まるでそれぞれの景色を撮るために生まれたカメラであるかのように、どんなシーンにもマッチした写真が撮れるX100Vに感動してしまいます。
また、ハイビスカスの花に関しては、X100Vなら約10cmのマクロ撮影も出来るので、近寄らないと気が付けない繊細な部分も、しっかりピントが合って、まるで植物の研究をしている気分になりました。
雨上がりの日に雨にも負けず綺麗に生きていている花に生命を感じ、見惚れていました。
こちらは、川に落ちた紅葉が水面の反射とともに輝いていて紅葉の絨毯みたいでした。
また、私は基本的に自然風景を撮影することが多いのですが、都会の景色を撮ることもあります。
奄美大島の自然に慣れていた影響で建物にはあまり関心を持たなかったのですが、高い場所からカメラを通して眺めた都会の風景は思っていた以上に迫力があり、自然と共存する高層ビルがカッコよく見えました。
海外に行ったことはないですが、人生を題材にした洋画のワンシーンに出てきそうだなぁ……と。
国内旅行で訪れた高知県の景色も絶景でした。
どうしても全ての景色を収めたく”パノラマ”モードで撮影をしてみることに。
生憎の雨天でしたが、それも自然の一つだと思うと自然の象徴とも言える神秘的な空間に。
三重県のとあるフラワーパークでは、水流の模様や周りの花達が水面に反射するところまで描写された写真が撮れ、美術館の絵画として飾られていてもおかしくないのでは……と勝手に想像してしまいます。
私たちの日常では当たり前の光景も、見方や切り取り方を変えることで幻想的になるので、不思議な感覚ですね。
例えばこの夕方の川辺の写真。
目線を低くして斜めから川を見ると、夕焼け空が川辺に反射していて、鏡のようなもう一つの世界に迷い込んだみたい。
空に少し近づけた気がして、魔法使いになった気分になっていました。
撮った写真は自分の記録のためでもありますが、SNSで発信することで、フォロワーの方や知人から「心が救われたよ。ありがとう」と感謝されることも増えました。
誰かの心に癒しを届けられるって素敵ですね。直接会って話しているわけではないのに、写真を通して意思疎通ができるみたいです。
こんなにも様々な景色を見せてくれて、心の平和を保つ相棒、”X100V”と私の旅はこれからも続きます。