暮らしのひとこま〜四季の移ろう北海道からpachicoの場合〜

X/GFXシリーズを通して写真を楽しむフォトグラファーたちに、愛用の日用品やこだわりの空間、大切にしている生活の一場面を紹介してもらう本企画。フォトグラファーたちがどのようなモノや時間と共に暮らしているのか。その日常にそっと目を向けます。今回は、IRODORIでコラムを執筆いただいたpachicoさん(@pachico_nikki)に、北海道での暮らしをご紹介してもらいました。
① エプロン
「きゅっ」
エプロンの腰紐を結ぶ時、自分の中のスイッチが切り替わります。こちらのエプロンを作っている作家さんの存在はSNSを通して知り、長く憧れていました。昨年の秋、私の住む北海道で展示会をされるということで、実際に作家さんとお会いし、自分の目で見て選んだのがこちらの白い綿のエプロンです。糸も含めて天然素材のみで作られたというこだわりが詰まった優しい風合いのエプロンを纏うことで私自身もお菓子作りと正面から向き合いたいと自然に思うことができます。お洗濯をすることで、日々纏うことで、自分の身体に少しずつ馴染んでいく感覚が愛おしくてたまらない、一生大切にしたい宝物です。
② お茶の時間
食事を終えた後のお茶やコーヒーは、その幸せなひとときをほんの少しだけ延長してくれる、魔法の一杯だと思います。隣にいる人と「おいしかったね」と笑い合う瞬間、傍にはいつも、湯気の立った美味しいコーヒーや紅茶があります。それを飲みながらいつまでも食事の余韻に浸っていることこそが、私の日常にある一番の幸せです。写真は前日の仕事が予定よりも大幅に押してしまったことで翌日の朝に思うような朝活ができず落ち込んでいたのですが、いつもより丁寧に淹れたネルドリップコーヒーとホットケーキを口にした時「こんな日もあっていいのだ」と知らないうちに背負っていた大きな荷物を下ろして、身軽になれた時の一枚です。肩肘張らないで、ありのままの自分を大切にすることって難しいけれど、そのきっかけをくれる飲みものの存在がありがたいです。
③ 曲げわっぱのお弁当箱
甘い味付けの卵焼き、ひじきの煮物、ほうれん草のソテー。私が学生の頃にもみじ柄のお弁当包みをひらいて丸いお弁当箱の蓋をぱかりと開けた時、いつも並んでいた大好きな定番のおかずたち。曲げわっぱのお弁当箱は社会人になって会社で働いていた頃に仕事中唯一の楽しみだったお昼休憩の時間をもっと楽しく美味しいものにしたいと思い購入しました。白木の香りがご飯に移ることで冷やご飯も驚くくらい美味しくて、初めて口にした時の衝撃は今でも忘れられません。以前と比べるとお弁当を作る機会は減ってしまいましたが、たまに作るワクワク感は薄れないものですね。これから少しずつ夏野菜の収穫が畑で始まります。種から育てた野菜たちを料理してお弁当を作るのが楽しみで仕方ない最近の日常です。
④ 北海道の自然の風景
本州から北海道へ移住してもうすぐ2年になります。日々の仕事や作業に追われているうちにあっという間に流れる年月に驚くと同時に、仕事が終わってへとへとな中で家の窓から見える景色に癒されることがこの2年で何度もありました。草の香り、トラクターに乗り作物の世話や収穫をする農家さんの大きな背中、水が張った田んぼの美しさ、蛙の大合唱。自然の美しさを五感で感じられることのできる日常がありがたく、四季の移ろいを強く感じられる北海道という土地を愛おしく思います。惜しくもあっという間に桜が散りました。いよいよ新緑の美しい季節です。今しか見られない景色を探しに、今日もカメラを片手に。行ってきます。