【GFXシリーズユーザーインタビュー】写真家・岩倉しおりとGFXシリーズ フィルム愛があるからこそ選んだデジタル一眼
シリーズ最高峰の1億2百万画素ラージフォーマットセンサーを搭載した『GFX100S』。今回は、四季と人物を掛け合わせた情緒溢れる表現が注目を集める香川県在住の写真家・岩倉しおり(@iwakurashiori)さんに、その圧倒的な解像度と描写力を体感していただきました。普段からフィルムカメラと『GFX 50R』をシチュエーションに応じて使い分けているという岩倉さん。今回はGFXの1億画素モデルGFX100Sでの撮りおろし作品の紹介とともに、フィルムに親しんできた感覚とユーザーの視点でGFXの魅力を語ってくださいました。
Interview:岩倉しおり
――長らくフィルムカメラを愛用なさっている岩倉さんですが、そもそもは高校生のときにご友人に誘われて写真部に入部されたことがカメラを持つキッカケだったそうですね。
入部して最初のころは部室にあったカメラを借りて、目についたものをひたすらなんでも撮っていました。その後フィルムの一眼レフカメラを購入して、高校を卒業してからはグループ展に参加したり地元の方たちが見に来てくださる規模感の個展を開いてみたり。SNSを始めたことで、一気にたくさんの方に写真を見てもらえるようになりました。
――岩倉さんの写真は、自然の放つ色彩の美しさとドラマ性のある描写がとても印象的です。現在のような写真表現に行き着くまでの経緯をぜひ聞かせてください。
自然が多い地域に住んでいるということもあって、カメラを持ち始めたころから身近にある四季の風景を撮っていたのですが、写真をSNSで公開するようになってからはより撮りたいもののイメージが定まってきた感覚はあります。好きなものはずっと変わらないんですけど、写真を見てくださる方が“私=四季の写真”というイメージを持ってくださっていますね。
――現在はフィルムカメラとGFX 50Rを併用されているとのことですが、デジタル一眼カメラを手にするにあたって、さまざまなメーカーの機種をひと通りお試しになったそうですね。
ずっと同じフィルムカメラを使ってきて、これからも撮り続けていきたい反面、フィルムの価格が上がってきたという現実的な理由でデジタルを視野に入れたときに、「フィルムの表現に近くて自分に一番しっくりくるデジタル一眼ってどれだろう?」という視点で本当にいろいろ試しました。その中で、最後に行き着いたのが富士フイルムだったんです。
――さまざまなカメラを検討した結果GFX 50Rに落ち着いた決め手はなんだったのでしょう?
個人的に、フィルムに比べてデジタルで撮った写真は平面的になってしまう印象があったんですけど、GFXで撮った写真は立体感がしっかりと表現されていてデジタルっぽさをそこまで感じなかったんです。これならこれからも写真をたくさん撮り続けられるという嬉しさがありましたし、SNSでいろんな方の写真を見ている中で富士フイルムの色表現や質感に惹かれるところがありました。私にとってフィルムと同じように一枚一枚を大切に撮ろうという気持ちになれるカメラです。
――今お話に出た“富士フイルムの色表現”という点で魅力を感じる部分とは?
デジタルってどうしても彩度が高くてコントラストが強いバキッとした写真になってしまう印象があったんですけど、GFXで撮る写真は柔らかいですね。ひと通りいろんなシチュエーションで撮ってみた中で、グレーや白のトーンが豊かですし、グリーンはフィルムの色味に近いなと感じました。それと、デジタルの場合は撮影後レタッチ作業に追われることが普通だと思っていたんですけど、GFXを手にしてからの仕上げは微調整程度になりました。フィルムシミュレーションは、自分の表現したい色と近いクラシックロームとクラシックネガをよく使っています。ファインダーを覗いた状態で出来上がりのイメージが目に見えるので、撮っている瞬間からすでに楽しいです。
――今回1億画素モデルのGFX100Sで撮影していただきましたが、お手持ちのGFX 50Rと違いを感じる点などはありましたか?
レンズが違うのではっきりとは言えないのですが、第一印象で立体感と鮮明さがさらにアップしたなと感じました。それと、映像と写真の切り替えボタンが左端に配置されているのもすごく便利ですね。実は、もともとはGFX100Sもいいなあと思っていたんです。
――そうだったんですね!では、ここからはお写真を拝見しながらGFX100Sでの撮影について伺っていけたらと思います。
こちらの海辺での写真は、日が沈んで間も無くの時間帯に空から夕陽の色が消えるまで待って、青い世界の中で花火がきれいに見える感じで撮れたらなあと。フィルムで撮った写真に近くなるんじゃないかという理由でずっとオールドレンズを装着していて、ここでも普段愛用しているオールドレンズを使って撮影しました。
続いての写真は、本来なら晴れてほしいシチュエーションなのですが、この日はあいにくの曇り。だけど、撮ってみたらすごく雰囲気が出たので、これはGFX100Sの立体感と描写力だなと感じました。また、レンズは『GF80mmF1.7 R WR』を使用したのですが、実は純正レンズを使うのは今回が初めて。フィルムに近い質感を表現したくてずっとオールドレンズを使ってきましたが、純正レンズにも光の取り込みや質感といったところでフィルムに通じるものを感じましたし、水面の滑らかさもしっかり表現されていて、すごくいい意味でデジタルっぽさを感じない写真が撮れたと思います。
最後に、香川から見た岡山の海です。遠くに入道雲が出ていて、本当はもう少し広い画角で撮った写真をトリミングしています。GFXは解像度がすごく高いので、拡大してもすごくキレイじゃないですか。本来は切り取ってしまうと画質が落ちてしまうのでなかなかそういうことはしないのですが、今回のようにひとまず撮ったものをあとからトリミングすることが出来れば写真表現の幅と可能性が広がるなあと思いました。前途のとおり、実は購入するにあたって、GFX100Sも検討したんです。パソコンの容量面も考えてGFX50Rを選びましたが、今回GFX100Sの立体感と描写力、トリミング耐性を体験して、改めてGFX100Sを使ってみたいなと感じました。
――今回の撮影を通して改めて感じたGFXの魅力や新たに浮かんだインスピレーションなどはありましたか?
GFXは写真が上手くなったと錯覚して、撮るのが楽しくなっちゃうカメラだなと思いました(笑)。普段、フィルムカメラとGFXを併用するなかで「このシチュエーションならGFXだけで大丈夫」という場面もわかってきて。たとえば、曇りの日や冬の景色。私の中でデジタルは白の表現が狭いイメージがあって。フィルムだと白でもちゃんと光が映った白なんですけど、デジタルの「真っ白な白!」っていう感覚がすごく苦手だったんです。だけど、GFXを使うようになって、ちゃんと白の中にも表現の幅があるなと感じられました。それで昨年の冬もGFX 50Rでたくさん撮影したのですが、フィルムカメラがなくてもイケるなっていう感覚があったし、私もそれをすごく期待していて。なので今年の冬もGFXで撮りたいですし、自分の中の撮影メモがまだまだあるので、これからもGFXでたくさん写真を楽しみたいなと思っています。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)