【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・michiyoと『X-T4』 滋賀県の美しい風景を世界へと発信する
ご家族からのすすめで、仕事三昧だった日々からの変化を求めてカメラを手にしたmichiyoさん(@michiyo01130312)。『X-T20』で地元・滋賀県の風景を撮ることに楽しさを見出して以来、SNSでの発信、年に数回の写真展を通じて作品を発表し続け、いまでは各種フォトコンテストで入賞するまでに。現在の愛機は『X-T4』。仕事の行き帰りを中心に撮影するというスタイルとの親和性、滋賀県の中でも特に好きだという水郷の風景にベストマッチのフィルムシミュレーションのお話などを伺いました。
Interview:michiyo
趣味を見つけるためにInstagramをスタート
——写真をはじめたきっかけを教えてください。
以前、フィルムカメラは持っていましたが、育児や介護をきっかけに触らなくなり、その後も仕事ばかりをしていました。その様子を見た娘が心配をして、「もうちょっと息抜きしたら?」とInstagramの存在を教えてくれたんです。風景を見るのは好きでしたから、スマートフォンで地元の美しい景色を撮り、それをInstagramで公開しはじめました。すると、同じ滋賀県の写真を撮っている方たちからフォローいただけるようになり、フォロワーさんから「カメラをはじめてみたら?」と声を掛けていただいたんです。わたしも何か趣味を見つけたいと思っていたので、それなら買ってみようかなという気持ちになり、その方がお使いになっていた富士フイルムのカメラがいいなと思い、『X-T20』を購入しました。
——久々にカメラを手にしてみていかがでしたか?
もう楽しくて仕方なくて、通勤路に美しい景色がたくさんあるため、仕事の行き帰りに撮影をするようになっていきました。わたしが住んでいる近江八幡市という場所は、琵琶湖にも水郷にも近く、古い街並みなどもあり、車ですぐの場所にたくさん被写体があるんです。
——通勤路が美しいのは素晴らしいことですね。
日常の美しい景色、ふだん目にしている景色を撮りたいという思いが根底にあって、日本各地の絶景に出掛けようという欲は少ないですね。滋賀の日常風景を撮り溜めていこうかなと考えていて、その気持ちはずっと変わらないです。写真が本格的な趣味になってから8年が経過しましたが、滋賀にはまだまだ撮りたいものがたくさんあります。
——Instagramを教えてくれた娘さんも、喜んでいらっしゃるでしょうね。
もうビックリしています。娘もカメラが欲しいと言い出し、当時私が使用していたのと同じ『X-T20』を購入していました。
日没の時間でも細やかな露出調整に長けた『X-T4』
——『X-T20』から『X-T4』に買い替えたんですね。『X-T4』の使用感はいかがでしょうか?
風景写真を撮る際にローアングルからの撮影もあり、『X-T4』はバリアングル液晶で縦横自由自在に液晶モニターが可動するので、とても便利だなと感じています。また帰宅途中の薄暗くなった時間帯に夕焼けなどを撮ることが多く、そのようなときはシャッタースピードが遅くなるので、『X-T20』を使っていたときは三脚が必要となっていました。でも三脚をセットしているあいだに夕焼けの表情はどんどん変わっていってしまい、撮りたいと思った瞬間を逃すことがあったり。『X-T4』には手ブレ補正が搭載されているため、薄暗くてもサッと撮影することができます。いまは星や花火など、長秒を使うときくらいしか三脚はセットしませんね。
——X-Tシリーズへのこだわりはあったのですか?
メカにあまり強くないのと『X-T20』から入っているので、同じTシリーズだと操作を覚え直す苦労もないかなと思い、買い替えもX-Tシリーズからにしようと考えました。デザインも『X-T20』の頃から好きですし、やはりダイヤル操作はとても手に馴染んでいます。『X-T4』だとISO感度もダイヤル操作で簡単に変えられるじゃないですか。日没時に撮影していると、どんどんISO感度を変えていかないとその場の明るさの変化に対応できないですが、ファインダーを覗きながらダイヤル操作で調整ができるのは本当にありがたい。『X-T4』ならではの使いやすさだと思っています。
——レンズは『XF16-80mmF4 R OIS WR』と『XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS』の2本をお使いとのこと。それぞれのレンズの使いわけは?
『XF16-80mmF4 R OIS WR』を1本持っていれば、パッと撮りたい風景に出会ったとき、ほぼカバーできるという便利さがあります。『X-T20』のときはレンズキットで『XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS』を使っていましたが、風景を撮るときの「もうちょっと」が入りきらないときがあり、広角端が16mmになったことで痒いところに手が届くようになりました。また望遠端は80mmなので、クローズアップをして撮りたいなというときにも助かっていますが、それでも足りないときには『XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS』を使う、という感じでしょうか。
適度な鮮やかさとやわらかさが同居するASTIA
——愛用しているフィルムシミュレーションはありますか?
基本はASTIAです。自分の見たときの感覚に近い色が好きで、ASTIAがいちばんしっくりきます。夕空の色、朝焼けの色。そう言うとVelviaだろうと言われるかもしれないですが、わたしの感覚だとVeiviaは少しキツく感じるんです。逆にPROVIAだとちょっと物足りない。その中間で、しっかりと色を出しつつもやわらかさもあるというのがASTIAかなと思っています。
——SNSなどで発表している作品はJPEG撮って出しですか?
フィルムシミュレーションを使いながらRAWも同時記録しています。でも、カメラの中で生成されたJPEGを最終的に少しいじる、というような仕上げ方をすることがほとんどです。編集はスマートフォン用のLightroomを使っていて、シャドウとハイライトなど、少し気になる部分の調整をするぐらいですね。仕事の行き帰りの明暗差が激しい状況で撮ることがどうしても多くなるので、空のハイライトを落とし、前景のシャドウを上げるなどを調整しています。
——セルフプリント写真展『日々彩』も定期的に開催しています。
写真展は2020年から続けていまして、今年で5年目になります。知人に薦められてはじめたんですけれど、いまではとても大切な活動になっていますね。プリントをするデータは、スマホで完成させたデータをパソコンに読み込んで、パソコンからA2ノビまでプリントできる自宅のプリンターで出力しています。ふつうのペーパーだけではなく和紙プリントなどにもハマっていまして、薄い和紙に印刷し、後ろから灯りを入れてバックライトで写真を透過させてみたり、少し変わった展示にも挑戦しています。
さまざまな表情を見せる水郷の風景の魅力
——滋賀県の身近な場所で特に撮りたくなるものとは?
水辺の風景が好きです。特に秋冬の水辺の風景。昼と夜の寒暖差が出てくる時期に日の出の少し前に行くと、もやもやと霧が出たりするんです。その景色を撮るために、いつもの通勤時間より早起きをして撮影に出掛けることもあります。そして冬場は琵琶湖に水鳥がたくさん来るので、水鳥がいる風景を撮っていますね。鳥本体を撮るわけではないのですが、水鳥がいる琵琶湖の風景を撮るのは好きなんです。湖北方面であれば雪景色の琵琶湖で水鳥が撮れるので、冬場になると撮影地が北上していくのがわたしのスタイルですね。
——滋賀県に興味を持たれた方に、特にオススメのスポットを教えていただけますか?
やはりオススメは水郷。琵琶湖も大好きですが、琵琶湖よりもこぢんまりとした内湖というものが周辺にたくさんありまして、わたしの家の近所には西の湖という内湖があります。そこは自然の宝庫で鳥もたくさん住んでいるし、葦(よし)がたくさん生えていてそこに生物が暮らしています。自然環境が素晴らしいのに加えて船なども行き交っており、湖と船、湖と鳥など、湖と何かを一緒に撮るのに最適な場所でイチオシのスポットです。お気に入りの1枚の彗星と廃船を撮ったのも西の湖ですし、和舟と古い街並みなど、さまざまな表情を撮ることができるのもおもしろいですね。『X-T4』なら西の湖の空気感まで感じられる写真になるので気に入っています。
空気感まで撮れるカメラを使っているからこそ、風情が素晴らしい場所を撮りたくなります。だから水辺の風景が好きなんでしょうね。『X-T20』を買って初めて撮りにいった場所も水郷でした。手漕ぎの船が水郷を進むときに、2羽の鴨がそれを出迎えているかのように見ているという写真が撮れたのですが、いまでも大好きな写真です。
——写真を撮る上でのモチベーションとは?
敢えて写真家と名乗るつもりはなくて、滋賀県をもっとみなさんに知ってほしいということが根底にあります。Instagramなどを通じて、みなさんが知らない滋賀県、こんなに美しい場所ですよということをこれからも発信していきたいです。県外の方がInstagramを楽しみにしてくださっていたり、SNSを通じて交流している方が滋賀県に旅行に来てくださったりするのもモチベーションになっていますね。
一方でフォトコンテストには挑戦していて、それは自分の作風の確認というか、世間的にわたしの写真が通用しているのかどうかを知るために、たびたび応募するようにはしています。その中で昨年は滋賀県写真展覧会で滋賀県教育委員会教育長賞をいただきまして、「ああ、このまま自分のスタイルで撮っていていいんだな」という確認になっています。評価がすべてではないですが、賞をいただければうれしいですからね。そして写真展も楽しみにしてくださっている方がいて、それも間違いなくモチベーションのひとつです。
——さまざまなモチベーションがあるのは素晴らしいことです。それを作るきっかけとしてInstagramなどのSNSは良いツールだと感じでいますか?
写真は好きなのでSNSをうまく活用できていなかったとしても撮り続けてはいたと思いますが、SNSは気軽に写真の発表の場として使えますから、良いツールなのかなと思います。特に交流が生まれるという点は素晴らしいと思っていて、Instagramで知り合った写真仲間とは飲みにも行きますし、みんなで旅行に出掛けたりもしています。フォロワーには海外の方も多く、世界中の人に滋賀県の風景を見ていただけるのはすごいこと。でも、写真を作品として考えたとき、スマホによって見ていただきたい色で表示されていない可能性もありますから、表現したい色でプリントを作っている写真展も見ていただければいいなと思っています。写真展も年々県外からお越しくださる方も多くなっていて、写真展を見て、そのまま滋賀県を満喫していただければとてもうれしいです。
text by鈴木文彦