【Xシリーズユーザーインタビュー】サイクリスト・斎藤将崇と『X-T5』 カメラ×自転車のいい関係

自転車ショップに勤め、自宅から勤務先まで毎日20kmをロードバイクで走るという斎藤将崇さん(@ masa_guell)。SNSには、『X-T5』で撮影されたペダルを漕いで辿り着いた先で目にした風景や愛車、ストリートスナップが投稿されています。もともとの趣味であるサイクリングの楽しさを加速させてくれたという理想のカメラ。そんな『X-T5』との出会いは、斎藤さんにとって“記録すること”以上の喜びを感じさせてくれるものだったといいます。斎藤さんのカメラ×自転車ライフから、好きなものを掛け合わせてより深く楽しむためのヒントが見えてきました。
Interview:斎藤将崇
理想を叶えてくれるカメラとの出会いを
機に見直した、自分の撮りたいもの。
――斎藤さんの現在の本職は自転車ショップのスタッフだそうですね。自転車とカメラ、のめり込んだのはどちらが先だったのでしょう?
自転車ですね。学生時代に音楽の道を志してロサンゼルスに留学していた時期があったのですが、帰国しきたときに「なにか音楽とはまったく違うことをやりたい」という気持ちが湧いたんです。そこで、運動も兼ねて自転車に乗ってみようかなと。もともとサイクリングは好きだったのですが、この機会にと長距離を走れるスポーツバイクを購入してみたら見事にハマってしまい、専門店に就職して10年ほど経ちます。
――そこから現在の“自転車×カメラ”という撮影スタイルに至った経緯を教えてください。
ショップに勤めていますので、たとえば新型車やサイクリングのアイテムの写真を撮ってお店のブログにアップする機会が多いんですけども、そういったときは店が所有している一眼レフカメラを使っていたんです。そのうち、自分もキレイな写真を撮れるカメラが欲しいなと思うようになりました。初めて購入した一眼レフカメラは他メーカーのいわゆるエントリーモデルのレンズキット。右も左もわからない状態だったので、最初はずっとプログラムオートモードでズームリングを回すだけの撮影を数年続けていました。そこから4〜5年くらい経ってInstagramを始めたことを機に、そろそろちゃんと写真のことや撮影技法を勉強しようと。今の時代、インターネットで調べればなんでも情報が出てきますので、独学でカメラについて勉強を続けています。
――現在お使いの『X-T5』は2台目のカメラとのこと。撮影技法などを学ぶなかで新しいカメラへ興味が向いての購入だったのでしょうか?
Xシリーズに興味を持ったきっかけは、SNSを見ていて自分が惹かれる写真のほとんどが富士フイルムのカメラで撮影された写真だったと知ったことでした。それまでのカメラでは撮った写真をパソコンに転送してRAW現像して理想に近づけていくという工程をふんでいたのですが、撮って出しで自分の理想が叶えられる機種があるのかと。これから写真を続けていくなら思い切って富士フイルムに変えたほうがいいんじゃないかと思い、それまで持っていた機材はすべて手放して『X-T5』を購入しました。
――実質5年ほど使用していたカメラから、他メーカーの新しいカメラに替えるのは思い切った決断でしたね。『X-T5』を選んだ理由、決め手は?「撮って出しで自分の理想が叶えられる機種」というお話がありましたが、買い換えるにあたって機能や操作面でカメラに求めるものはなにかありましたか?
サイクリングをしながら撮影するので、持ち運びやすさというのはなによりも重視していました。買い替えにあたって、検討したのは『X-T5』と『X-H2』の2機種。『X-H2』もすごく魅力的に感じたのですが、やっぱりなによりも惹かれたのが『X-T5』の軍艦部のダイヤルでした。実は、X100シリーズとX-Proシリーズにも少し興味が湧いていたのですが、結果的に『X-T5』は自分にとってのベストチョイスだったと思っています。以前は、フルサイズのボディと望遠ズームレンズを肩に下げて、トータル2〜3kgぐらいの装備を抱えてわざわざ100kmも200kmも走ったりしていたんですけども、案の定腰をやられてしまいまして。そもそも自分が撮りたいものの撮影に、こんなに重たいレンズが必要なのか?と。それで『X-T5』を購入するときに、自分のスタイルとして単焦点レンズ縛りというルールを設けました。それも大成功で、限られた画角でサイクリング中の記憶を切り取るっていうのが本当に楽しくて。
――装備を見直したことで、撮影という行為そのものの楽しみが増したんですね。普段、サイクリング中はどのようにカメラを携帯しているんですか?
メインの自転車はロードバイクで前傾姿勢が強めなので、ストラップをたすき掛けにしてカメラは背中に乗せる感じで走っています。出かけるときは、「今日はこのルートで、あの山を登りに行こう」とか「梅が咲いてるあたりまで行ってみよう」というふうに基本的にはまずどこへ走りに行きたいかを決めます。その道中で気になるものがあったら、少し止まって撮影したりというスタイルです。
――あくまで、主体はサイクリングなんですね。
もちろん「あれを撮りに行こう」と思い立って自転車に乗ることもありますが、基本はどこを走りたいか。サイクリングにカメラを持って行くことで好きな趣味を掛け合わせて一度に楽しめる時間なので、僕からするとまさに一石二鳥です。
――先ほど“単焦点縛り”というお話もありましたが、使用レンズについても教えてください。現在所有しているフジノンレンズは、『XF35mmF1.4 R』と『XF60mmF2.4 R Macro』とのこと。
メインで使用しているのは『XF35mmF1.4 R』。風景から車体の撮影まで自分が撮りたいものは、ある程度この一本でカバーできています。『XF60mmF2.4 R Macro』は、寄った狭い画を撮りたいというときに。『X-T5』との組み合わせでクロップしても充分に使えますので、それぞれのレンズで1.4倍した絵を頭に入れておけば、いろいろ撮れるというところで重宝しています。
毎日20kmの道のりの中で
チャンスを撮り逃さない『X-T5』の強み
――斎藤さんのお写真は、どこか映画の1シーンのような物語性を感じさせる色づかいが印象的です。ご自身の作風に『X-T5』はどう影響していますか?
1台目のカメラで撮っていたものは、良くも悪くも“キレイな記録”といった感じだったのですが、『X-T5』のフィルムライクな色合いや質感は自分の撮りたいもののイメージにピッタリ重なっている感覚があります。普段は、フィルムシミュレーションのクラシックネガをベースに、編集ソフトで仕上げをしています。以前の写真と『X-T5』の写真とを比較して、色合い以外で大きな違いを感じるのが、シャドウの出方。暗い部分の描写がすごくきれいなんです。とくに保井崇志さんの写真で表現されている光と影がすごく魅力的で。他の方の作品でも明暗のバランスがいいなと感じる写真が多いですし、さまざまな写真を見ているうちに撮影への意欲が高まることも多いです。
――ちなみに、SNSの投稿は自転車で出掛けられた先や道中でのお写真がメインですが、プライベートでポートレートなどご家族の思い出を撮られることもあるのでしょうか?
そうですね、instagramは投稿テーマをなるべく統一したいということで自転車に関することが大半なのですが、普段は家族や子どもたちと出掛けたときのワンショットだったりも『X-T5』で撮影する事がほとんどです。僕の場合、今の生活スタイルの中で写真を撮りやすい時間帯はというと通勤時間なんですね。毎日20km走って出勤しているんですけど、その20kmのなかでストリートスナップや風景の撮影をしています。仕事のあと、家に帰って記録的な感じで夜ご飯を撮影したりすることも。ですので、生活の中に常に『X-T5』は生活があることが自然になっているというのは感じています。
――では、サイクリストだからこそ感じる『X-T5』の優位性はありますか?
たとえば、走行中のサイクリストを撮影するときなどには『X-T5』のオートフォーカスの追従性にかなり助けられています。併せて便利だなと感じているのは、電源がオフの状態、もしくはスリープモードの状態で撮影したいものを見越して絞りや露出をダイヤル操作で設定しておけること。あらかじめ調整しておけることで、撮りたい瞬間を逃さずに済むというのは本当にXシリーズの強みだと思います。
好奇心を高めてくれるモノがある日常
――冒頭で「良くも悪くもキレイな記録」というお話もありましたが、斎藤さんが今『X-T5』で撮影していらっしゃるものを言葉で表現するとしたらなんでしょう?
僕の場合は、自転車のなかでも専門性の高いマニアックな部類に入ってしまうので、限られたコミュニティにはなるのですが、ロードバイクの造形美であったり、自分が好きな自転車をテーマに美しい風景や光と影を写しとっているという感覚です。
あとは、こういう言い方は少しヘンかもしれないですけど、今は全世界がスマートフォン時代なので、スマホで簡単に撮れてしまうことに抗っていきたいという気持ちもあります。そういう面でもXシリーズの色みというのは、自分にとってかなり強みになっています。カメラそのものも決して安いものではないので、買ったからにはしっかり使いたいという気持ちがあります。防湿庫に入れているだけではかわいそうなので。雨の日や路面コンディションが悪くて自転車に乗れないときは電車とバスで通勤するんですけども、そうした“生活から自転車が切り離される時間”でもカメラは身につけているので、写真を撮ることを純粋に楽しめている毎日です。
――『X-T5』で写真を撮ることは趣味をこえてライフワークになりつつあるんですね。
そうですね。自分の好きなものを撮る以外に、サイクリングに行った先で知り合った人やお店のお客さまのバイクを撮ったりもするのですが、やっぱり撮った写真を渡すといろんなところで喜んでいただけるんですね。そういった、撮影することで共有できる嬉しさもあるなっていうのを『X-T5』を通して感じています。僕の周りのサイクリストでカメラを持って走っている方はまだ少ないのですが、山を走るヒルクライムで坂の上から景色を撮っているときに、すれ違ったサイクリストが富士フイルムのカメラを背負っているみたいなことも何度かあったので、これから自転車×カメラの楽しみ方がもっと広まっていけば嬉しいなと思っています。
text by野中ミサキ(NaNo.works)
今回登場したカメラ
