【Xシリーズレビュー】〜料理クリエイター・Ryogo〜 Xシリーズ新製品『X-S20』で撮る、食べる前からおいしい写真
“おいしいをもっと身近に。”をテーマとしたおうちパスタ専門のレシピメディア『BINANPASTA』を運営する料理クリエイターのRyogoさん(@binanpasta)。食欲をそそる魅力的な写真と料理初心者でも手軽に作れるレシピは、SNSでも注目を集めています。現在『X-S10』を愛用しているRyogoさんに、さらに進化した『X-S20』をお使いいただき、クリエイターの視点で感想を伺いました。普段の料理がさらに映える撮影のポイントも必見です。
Interview:Ryogo
――Ryogoさんは、現在『X-S10』をご愛用とのこと。その点もふまえて、今回『X-S20』を手にされた際の第一印象から聞かせてください。
見た目と手に持った感じは『X-S10』とそんなに差はないと思うんです。このクラシカルなデザインは相変わらず好みですし、これだけコンパクトな設計でもしっかり握れる深いグリップのおかげで、操作性がすごく良いですよね。
――逆に、『X-S10』からの進化を感じた点はありましたか?
まず、一番大きな違いを感じたのはバッテリーの持ちです。僕の場合、『X-S10』で長時間撮影するときは予備バッテリーを用意することが前提でしたが、『X-S20』に関しては静止画であれば丸一日撮り切れるんじゃないかなと思います。そして、もうひとつ驚いたのは背面液晶の解像度。料理の撮影はカメラを三脚にセッティングして液晶を見ながらシャッターを切ることが多いのですが、『X-S20』は液晶に映っている段階で画がすごくきれいなんです。同じレンズをつけて『X-S10』と見比べるとその違いがより明確で、もっと撮りたい!とテンションを上げてくれるような美しさを感じました。
――普段は主に動画撮影の用途で『X-S10』をお使いとのことですが、『X-S20』は6.2K/30p動画対応、新たにVlogモードが搭載されるなど、さらに動画撮影に適した仕様にアップデートされました。
今回動画撮影も試してみましたが、Vlogモードはとても便利ですよね。商品撮影や背景ボケといったモードを使い分けてSNSとマッチさせた映像を手軽に作れるところも大きな魅力だと思います。『ETERNA』で撮影すれば、映画のような映像も撮れちゃいますよね。僕が『X-S10』を選んだ理由のひとつでもあるのですが、併用している他のカメラと比べてもXシリーズは撮影後の作業効率がいいと思っていて。フィルムシミュレーションを使えば撮影段階から仕上がりがイメージ出来るし、撮って出しで好みの世界観が表現出来るので、色調整やレタッチにかける時間がかからず助かっています。
――『X-S20』には手ブレ補正もついているので、手持ちでもストレスなく撮影出来る分、さらに効率が上がりそうですよね。Ryogoさんがよく使用するフィルムシミュレーションは何ですか?
動画撮影ではクラシッククローム、静止画ではクラシックネガを好んで使っています。とくにクラシッククロームは、特徴的な“淡さ”を生かしつつ少し彩度を上げるだけで好みの色合いになるので、撮影後の編集にかかる工程の少なさも含めて気に入っています。フィルムシミュレーションをダイヤルで変えられるのもすごく便利ですよね。とくに料理撮影は一刻を争う場面が結構あるので(笑)。
――では、ここからは『X-S20』で撮影してくださった写真を拝見しながら、撮影時の工夫なども含めてお話を伺いたいと思います。
今回は、“1日”をテーマに撮ってみました。まずは、朝ごはんをつくるところから。卵をおいしそうに見せるために意識したことは、まず黄身の色。もうひとつが、白身の焼け具合の表現です。黄身の淡いオレンジ色をきれいに見せつつ、雰囲気も演出してくれるクラシックネガで撮影しました。高温で一気に焼けるスキレットを使って、カリカリに焼いた白身の質感と黄身のとろっとした半熟具合がしっかり伝わる写真になったかなと思います。
次の写真は、構図と午前中の光の入り方がいいなと思って、今回撮影したなかでとくに気に入っている一枚。自然の中にあるさまざまな緑色が集約されていて、明暗をつけるだけではなくどこか風情が感じられるところが富士フイルムならではの色表現の素晴らしさだと思います。普段こういったスナップ写真を撮る機会はあまりないのですが、『X-S20』はコンパクトかつバッテリーの持ちも良いので、外に持ち出すハードルがぐっと下がりますよね。
こちらの写真は、お昼ごはんのパスタをノスタルジックネガで撮影してみました。こういったシンプルな料理はお皿だけを撮ると単調になってしまうのでフォークを持った手元を写すことで動きをつけています。僕にとってフィルムシミュレーションは、世界観や空気感を際立たせるためのもの。料理そのものを美味しそうに見せるため以上に、イメージを増長させるものとしてフィルムシミュレーションと料理の相性をその都度考えています。
晩ごはんの買い出しへ。玉ボケを撮ってみたくて暗くなってきた時間帯に撮影しましたが、ブレもなくきれいに写せていると思います。足元の写真は、スニーカーの風合いと佇まいがXシリーズで写す写真の雰囲気と合うんじゃないかなと思って撮ってみました。
次の写真は、晩ごはんの準備中です。こちらは、手元が入らないとかなり質素な画になっちゃうんです。そういったときは、臨場感を出すという意味でも、写真のように作業工程がわかる撮り方をしています。手元を写すときはセルフタイマーで連写したり、人の手を借りたり。動画から切り取ることもありますが、4Kでも十分なので6.2Kだとさらに表現の可能性が広がりそうですね。
撮影するときは、どの角度から撮ると一番美味しそうに見えるか、見せたいイメージの通りに見えるかっていうことを考えています。たとえば、先ほどの目玉焼きトーストを横から撮ると黄身の部分に光が反射してしまって魅力が半減してしまうのですが、逆にこちらの写真では横から撮ることで陰影をつけて、お米のつぶ感がより際立つような撮り方をしています。
こちらの写真だと、ちょうど焼き鮭の皮目の油をまとったところに光が反射するような感じで撮りたいなと。手前にボケを入れることで、盛り付ける作業の流れを見せつつ鮭をメインで見せられるように意識しました。ノスタルジックネガは、すごく好きなフィルムシミュレーション。アンバーな色味が、落ち着いた暖色系の明かりや夜のキッチンで作業している空気感とすごくマッチするなと思いました。
――作品には日常でごはんを撮るときに真似したいテクニックがたくさん詰まっていました。素敵な盛りつけもぜひ参考にしたいです。
盛りつけは誰に教わったわけでもなく、すべてフィーリング。手を抜くとぐちゃぐちゃになっちゃいます(笑)。盛りつけって、考え方的には洋服やインテリアのレイアウトとかとあまり変わらないんじゃないかなと思っていて、意識していることは大まかに“色数・バランス・形“の3つ。プロの方に教わっていない分、自分の中での「やってはいけないこと」っていうのがあんまりないんです。
――こうした工夫を取り入れて作ったものを写真に残すことは、料理のモチベーションにもなりそうですね。
たとえば写真をSNSにアップすることが料理のモチベーションを上げる理由になるのであれば、それはそれですごくいいことだなと思います。僕のやっているサイトは“誰でも簡単においしく作れる”がコンセプトの1つなのですが、レシピどおりにつくっておいしいのは当たり前。つくる前段階からおいしそうと感じられる写真を載せたいと思っています。自分でもつくってみようかなと思う入り口として写真があると思うし、『BINANPASTA』が料理を楽しむきっかけになれたら嬉しいですね。
――そうしたRyogoさんの発信スタイルは、どんな人でも本格的な撮影を気軽に楽しめる『X-S20』とも共通しているように感じます。
僕自身『X-S20』を使ってみたことで、風景やポートレートなど料理以外の撮影にももっとトライしてみたいなと思いました。いろんなシチュエーションでフィルムシミュレーションを試してみたいというのはもちろん、バッテリーの持ちといったところで、これまで少し億劫だなと感じていた面がクリアになったので、『X-S20』を活用するならどんどん外に持ち出してみたいですね。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)