写真家・加藤秀の『FSレシピ』集〜高原の湖畔〜

富士フイルムXシリーズの最新機種『X-E5』から新たに搭載された、フィルムシミュレーションと画質設定を自由に組み合わせて自分好みの『FSレシピ』として保存できるカスタム設定機能。軍艦部左側のフィルムシミュレーションダイヤルにてお気に入りの設定を3つまで登録することができ、シーンに応じて瞬時に切り替えられるように。本企画では、この機能を活かしたオリジナルの『FSレシピ』を、Xシリーズを愛用するフォトグラファーに紹介していただきます。
今回は、風景とそこに暮らす人々の暮らしや文化をテーマに、国内外で作品を撮る旅する写真家・加藤秀さんに、高原の湖畔をテーマに3つの『FSレシピ』を作成いただきました。色付き始めた木々や夜明け前の時間、朝陽の温もりなど――、3つのレシピで映し出す富士山西麓の湖畔の風景をぜひご覧ください。
レシピ① :“AUTUMN”
夏が過ぎ去り秋を迎えた頃、高原の湖畔を撮影しました。高原は平地に比べると少しだけ季節が早く進んでいました。まだ紅葉の盛りには早いものの、色付き始めた木々をより印象的に収めようと思いフィルムシミュレーションにはPRO Neg. Hiを選択しました。
黄葉の雰囲気をより前に出すためにWBシフトにて黄赤の方向へシフトしています。グレインエフェクトを加え古めかしさを加味し、トーンカーブで微調整を行いました。静かな湖畔に佇む廃バスの淋しさをより印象的にするために、華やかな紅葉風景ではなく落ち着いた暗めの作品に仕上げ、しっとりとした秋のレシピにしてみました。レシピ名を自由に登録できるのでFSカスタムがより楽しくなりました。
レシピ② :“LOCH DAWN”
夜明け前の湖畔には静かな時間が流れています。ひんやりとした空気の中、誰もいない水辺は鳥たちもまだ目覚める前。湖岸には係留されたペダルボートが並び、少しの風に揺れて桟橋に軋む音が小さく聞こえていました。空が白み、少しずつ光が湖面を染めてゆきます。
選んだフィルムシミュレーションはクラシックネガです。低彩度ながらハイコントラストの色彩は、思い出の中の色褪せた記憶と重なるように思え、そんな空気感がとても気に入っているフィルムシミュレーションです。クラシックネガは元よりややマゼンダ寄りですが、WBシフトでさらに赤方向へシフト。グレインエフェクトは粒子を大きく強めに加え、フィルム写真の質感に近づけています。レシピ名はLOCH DAWN(夜明けの湖)。どこか懐かしい雰囲気のレシピに仕上げました。
レシピ③ :“LONGING”
日の出の時間が訪れ、厚い雲の隙間を縫うようにして光輝く太陽が現れました。湖には日の出の少し前からサップを漕ぐ人たちがやってきました。彼らは沖まで行くと手を休めそのまま湖面に佇み、次第に明けゆく朝陽を静かに眺めていました。緩やかなひと時を楽しんだのでしょう。
雲間から覗く低い太陽の光量はそれでも強く、光に染まる雲や湖面とまだ暗い背景の山々との明暗の差は大きくなります。コントラストと彩度を引き立たせるようフィルムシミュレーションにはVelviaを使用しました。WBは色温度を少し下げ、WBシフトでさらに黄寄りにシフトしています。清らかな朝の空気と柔らかな陽光の温もりを感じさせる雰囲気に仕上げました。
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