ファラフェルサンドを美味しそうに撮るコツとは?〜中目黒『Ballon』〜
【フードフォトテクニックvol.5 〜中目黒・ファラフェルスタンド『Ballon』 〜】
ミラーレス一眼カメラXシリーズで“料理写真を美味しそうに切り取る”撮り方テクニックを、都内の気になるお店の情報とともに紹介する連載企画『フードフォトテクニック』。スマホのカメラでも応用できる、構図のポイントや上手に撮るためのちょっとしたコツもご紹介します。今回は、中目黒にあるファラフェルスタンド『Ballon(バロン)』さんにお邪魔しました。
今回訪れたのは中目黒のファラフェルスタンド〜Ballon〜
中目黒駅から徒歩5分ほど。山手通りから駒沢通りに入ってすぐの場所にある「Ballon」は、2017年にオープンしたファラフェルサンドとソフトクリーム専門店。『作ってあげたい彼ごはん』の著者としても知られる料理研究家のSHIORIさんがパリに訪れた際に食べたファラフェルサンドに感動したことをきっかけにスタートした、100%ヴィーガンフードを提供するお店です。
迎え入れてくれたのは、料理長を務める佐藤さん。コンパクトな店内には、カウンター席のみ。パリのカフェをイメージしたという内装は、ラフな雰囲気ながら洗練された空間。「現地のファラフェルスタンドはケバブショップのような雑多感。ここにはオーナーのこだわりがたくさん詰まっています」。
“ファラフェル”とは、細かく潰したひよこ豆にハーブやスパイスを加えて丸く揚げた、中東諸国発祥のコロッケのような食べ物。食に対する意識やライフスタイルの多様化が進んでいるパリやニューヨークといった都市では、ファラフェルサンドとして広く親しまれているのだそう。そのほか、「Ballon」でいただけるメニューはすべて動物性食品・卵・乳製品などを一切使わないヴィーガン仕様。野菜や豆、スパイスといった植物由来の材料のみで作る、こだわりのフードが味わえます。
ファラフェルの認知度が低いこととヴィーガン=ストイックな食生活というイメージも相まって、「はじめは敷居が高いお店だと思われていたみたいです(笑)」とオープン当初を振り返る佐藤さん。ファラフェルの魅力を伝えるべく、見やすいポップづくりや見た目にも美味しいメニュー開発など、試行錯誤を重ねたのだそう。その結果、現在では年齢性別を問わずお客さんが集まる、おしゃれでおいしいファラフェルスタンドとして知られるようになりました。
「オーナーとしては、ヴィーガンがメインなのではなく、食べて美味しいものにあとからヴィーガンがついてくるものにしたいーーというイメージだったみたいです。今では本当にいろんな年齢層の方が来てくださいますし、中目黒には外国人の方も多くいらっしゃるということもあって海外のヴィーガン専門の口コミサイトに書き込んでくださる方もいたり、それを見て旅行がてら食べに来てくださる方もいたり。昔パリに住んでいたというマダムが『懐かしい!』と買っていってくださったこともありました」
キッチンの様子が覗けるのも、距離感の近いカフェスタンドならでは。「こうしてお客さまの目の前で調理できるのは、ライブ感があって楽しいです」と佐藤さん。来店した記念に、とキッチンを撮られることも少なくないのだとか。ひとつひとつ丁寧に盛りつけられるカラフルな具材と漂ってくる揚げたてのファラフェルの香りに、期待と空腹感がムクムクと湧き上がります。
色選びと背景の使い方で料理の魅力を引き出すフォトテクニック
カラフルな野菜と揚げたてのファラフェル4つをもちもちのピタパンで包んだ「ファラフェルサンド(レギュラーサイズ)」は、男性でも大満足のボリューム感! レタス、にんじん・キャベツのマリネに、舞茸や揚げナスといった日本人にも親しみのある具材をプラス。フムス(ひよこ豆のペースト)をノンマヨネーズのマッシュポテトに置き換えるなど、ファラフェルサンドに親しみの薄い方にも美味しく食べてもらうための工夫が詰まっています。練りごまベースのタヒニソースとほんのり辛味のある秘伝のアリッサソースが味のアクセント。野菜のみずみずしさとファラフェルのサクッとした食感がたっぷり堪能できる一品です。なお、ピタパンはプレーンor今月のパンの2種類からチョイス可。今回は干し椎茸や昆布を使ったじんわり沁みるやさしいトマトスープも一緒にいただきました。
ブーケのように彩り豊かなファラフェルサンドは、フィルムシミュレーション
また、豆乳と甘酒をベースに作られた、乳製品・砂糖不使用の「ヴィーガンソフトクリーム」もお店の看板メニュー。4種類のソースと5種のトッピングで自由にカスタマイズが可能です。この日は、パッションフルーツソース×クランブルをチョイス。ノーマルなソフトクリームに負けないコクとすっきりとした口どけ、甘酒由来の自然な甘みがほんのり口の中に広がります。「アレルギーのあるお子さんがここで初めてのソフトクリームを食べてくれたりっていうことも。そういうときは、思わず『どう!?』って声をかけちゃいます」と佐藤さん。どんな人でもおもわず笑顔がこぼれる、スペシャルなソフトクリームです。
ここでは、フィルムシミュレーションを<クラシッククローム>に設定。背景のブルーを基準に、ふんわりと淡いトーンで撮影することで、やさしい口どけを連想させる写真になりました。立体感を演出してくれる影の効果、アンティーク感のあるくすんだ背景色とビビッドなソースのコントラストも強い印象を生むポイントのひとつです。
食後は、豊富なドリンクメニューの中から「季節のフルーツソーダ」をセレクト。4種のベリーの甘酸っぱさとアガベシロップ・テン菜糖の甘みがシュワシュワと溶け合う、清涼感たっぷりの一杯です。フルーツは季節によって変わるそう。そのときどきのシーズナルドリンクを楽しみに訪れるお客さんも少なくないのだとか。
こちらは、魅力的な鮮やかさを引き出してくれるフィルムシミュレーション<Velvia/ビビッド>で撮影。窓から入る自然光を透過させるとともに、F値を2.0に設定し、背景を大胆にぼかすことで、フルーツソーダの清涼感とカラーを最大限に強調しました。
「ヴィーガンと聞くと限られた方に向けたイメージがあるかもしれませんが、実際に私自身ヴィーガンではありません。誰が食べても、美味しいと感じてもらえるメニュー作りをBallonでは大切にしています」。“どんな人にもおなかいっぱい食べて満足してもらいたい”という気持ちが詰まった「Ballon」のヴィーガンフード。バレエ用語で「弾むように軽やかなジャンプ」を意味する店名そのまま、食べることで心と身体が軽やかになっていくような喜びを体験できるお店です。
今回は、ファラフェルサンドをはじめ目にも美味しいヴィーガンフードを「X-T20」で切り取ってみました。ヘルスコンシャスな人はもちろん、食いしん坊も大満足な「Ballon」のメニュー。おしゃれな店内でいただくだけでなく、テイクアウトして中目黒の街を歩きながら味わうのもおすすめです。撮らずにはいられないフォトジェニックなファラフェルサンド、春は満開の桜並木と一緒にどうぞ。
【今回登場したテクニック】
・余白を残した構図でお店の雰囲気まで伝える写真に
・ソフトクリームはクラシッククロームで撮影することでやさしい口どけを表現
・カラフルなドリンクはVelvia/ビビッドに設定し、魅力的な鮮やかさを引き出す
・被写体を窓際に置き、背景を大胆にぼかすことで被写体の存在感を強調した印象的な写真に
Spot Information
今回登場したカメラ
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by こばやしかをる