富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き〜フィルムシミュレーション『セピア』と高円寺へ〜
フィルム時代から90年に渡って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。今回は、ウォーム調のセピアカラーが特徴の『セピア』で写真を撮りながら、サブカルチャーの聖地・高円寺をそぞろ歩きしてきました。
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降り立ったのは、丸の内線の新高円寺駅。まずは、新高円寺通りを抜けて高円寺駅方面へ行くことにしました。
今回使った『セピア』は、色褪せた写真を再現したモードです。商店街で撮ると、昔の日本にタイムスリップしたかのよう。青とピンクの鮮やかなワンピースも、レトロ調に様変わりです。
時刻は14時過ぎ。まだ日中は暑すぎるからか、人通りはまばらです。ひっそりと佇む小道は、夜に違う顔を見せてくれそうな雰囲気でした。
このまま直進すると高円寺駅前の繁華街・パル商店街に出ますが、旧宝橋であえての右折です。かつてここにあったのは、荻窪駅〜東中野駅あたりを流れていた桃園川。桃園川は昭和40年代までに下水道化されたそうです。川があった頃はずいぶん違う景色だったのかな…と心は60年前へ。
橋のそばに、ウォールアートを発見。海の生き物と猫、そして桃という不思議な組み合わせに、しばし心が和みます。
高南通りへ出ましたが、車通りの激しい大通りだったので、左の方へと戻ります。でもそのおかげで、この地域ならではのイラストを見ることができました。今年はすでに終わってしまいましたが、高円寺と言えば阿波おどり。他にも、演芸まつりや東京百鬼夜行など様々な祭りごとが開催されているので、次は何かお祭りをやっている時に来たいものです。
パル商店街手前の一本道で右折。冒険心くすぐられる路地裏が広がり、街撮りも捗ります。
『セピア』で撮ると、いつも眺めている空が別モノのよう。電線が多ければ多いほど、味わい深い写真になります。
高円寺と言えば、古着屋さんです。路地をウネウネ進むにつれ、個性豊かな店舗たちが手招き。そこで、ヨーロピアンな雰囲気漂う『Bernet』を少し覗いてみることにしました。
店内には、アメリカやヨーロッパで厳選された一点ものの古着がずらり。様々な姿かたちの電飾や、アンティークのイラストなども飾られており、胸がときめく素敵な空間となっていました。
オーナーさんの了承も得て、お買い物中にパチリ。ジュエリーの煌めきを収めたら、ますます欲しくなってしまいました。
1階をひと通り見たら、2階へ。
展示されていたのは、デザイン性の高いヴィンテージドレスの数々。あまりの美しいラインナップに、「ここでプロムパーティーのドレスを買いたかったね」と妄想トークも弾みます。
どの商品も、持ち主たちが大切にしてきたことが感じられる逸品ばかり。どの“子”をお迎えしようかと、いつしか真剣な気持ちで吟味していたのでした。
さて、目が潤ったところで、再び街歩きへ。突き当たりの高架下で、高円寺駅を背にして進んでみました。
高円寺ストリートを通り抜けると、高円寺駅北口方面の裏路地に出ます。
小腹が空いたので、お惣菜屋さんで売っていたクリームコロッケを購入。八百屋さんの活気ある声をBGMに、しばし小休憩です。
高円寺駅北口に出ると、空が広く感じられました。でも、小道の方が面白そうなので、芸術会館通りの高架下沿いを進むことに。
途中で右折。再び、飲み屋さんが連なる景色に。高円寺に詳しい知人曰く、ここは映画ロケ地にもなった場所だとか。
高円寺駅南口まで進むと、珍風景に遭遇! バス停の屋根に、鳩たちの影アートが出現していました。
今回の終着点は高円寺駅……ではなく、事前に予約していた『旅する喫茶』。“クリームソーダ職人”として活躍するtsunekawaさん(@tsunekawa)と、旅とカレーを愛する料理人・玉置さん(@tamakicurry)が手がける喫茶店です。
扉を開ければ、スパイスの芳醇な香り。キッチンに吊るされた大小様々なフライパンに、カウンターで輝くピカピカのグラスを見て、ふわっと頭をよぎったのは“カレーとビール”の組み合わせです。
でも、それは次の機会。心に決めていたクリームソーダをいただくことにしました。メニューは、空の色にまつわる魅力的なものばかり。今回は、『夜空のクリームソーダ』を注文です。
甘いシロップが創る儚いグラデーションを、炭酸がパチパチと彩ります。『セピア』で撮ると、気泡が際立つ写真になりました。
店内の設計は、ちょっと独特。カウンターとフロアの仕切りが車窓を彷彿とさせるデザインになっています。小窓を活かせば、シックな一枚に。
クリームソーダの撮影会を終えたら、いざ実食です。バニラアイスをほろほろと溶かし、色の移ろいも楽しみながら舌鼓。
この後は古着屋を巡り倒そうか、中央線住まいの友人を誘って高架下で飲み明かそうか…そんなワクワクする“次”を思い浮かべると、さらに美味しさが口に広がっていくのでした。
model 三宅 莉穂
photo by Mio Tangstad
text by 編集部Y