富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き〜御手洗 剛×フィルムシミュレーション『ETERNA』×別府〜

フィルム時代から90年以上に渡って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。今回は、日常のスナップや山の風景を切り取る、九州拠点のフォトグラファー・御手洗 剛さん(@go_mitarai)に、『ETERNA』で写真を撮りながら、大分・別府をそぞろ歩きしてもらいました。『ETERNA』の落ち着いたトーンで丁寧に描き出された、湯けむりに包まれる街の空気感やどこか懐かしさを感じる風景。その一枚一枚から、別府の街の魅力が見えてきます。
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今回使用するカメラは、『X-H2S』と『XF35mmF1.4 R』の組み合わせ。スナップ写真を撮るときは、換算50mm固定でやや切り取るように撮影するのが僕は好きです。
本日撮影するのは、複数のフェリーの発着場所でもある別府。夜行フェリーで早朝に到着した気分で、まずは別府港から歩きはじめます。
写真をはじめたのは大学1年生のときでしたが、当時は学生でお金がなかったこともあり、写真を撮りに旅に出るときはいつも夜行バスでした。だからこそ目的地へ到着するのは決まっていつも早朝。朝の柔らかい光、気持ちの良い空気を感じながら人気の少ない観光地を撮り歩く時間が心地良く、久しぶりにその感覚を思い出しました。
フェリー乗り場特有のレトロな雰囲気が好きです。潮風を浴びて古びたガラスのお陰で、差し込む光が良い具合にディフューズされています。今回使用するフィルムシミュレーション『ETERNA』は落ち着いた発色が特徴で、色褪せた椅子との相性の良さを感じます。
様々な映画の印象的な場面を思い返すと、海での撮影シーンが多いように感じます。ETERNAは映画用フィルムをもとにしたフィルムシミュレーションであることから、どこか海を撮りたくなるのかもしれません。
4月末の別府は新緑の美しい季節。秋の紅葉も良いですが新緑の季節がいちばん好きです。生命の芽吹きに喜びを感じます。
歩みを進めて餅ヶ浜までやってきました。別府というと温泉のイメージが強いですが、海辺には複数のビーチが点在しています。
ここの浜辺には桟橋がかかっていて、上から砂浜を見おろすことができます。スナップ写真を撮っていて写真が単調になってきたなと感じたら、高いところに登ったり逆に下から見あげたりすることで、視点が変わり面白い画が撮れることが多いです。
次に別府八湯のなかでも最も人気のあるエリア、鉄輪温泉に移動してきました。石畳の温泉街に情緒を感じます。
本当に町のいたる所から湯けむりが立ちのぼっています。一般の家庭にも温泉を引いているところが多く、毎晩自宅で温泉に浸かれるなんて贅沢ですよね。メンテナンスは大変らしいですが……。
初めて富士フイルムのカメラを手にしたときに合わせて購入したのが『XF35mmF1.4 R』でした。10年以上前のレンズになりますが、『X-H2S』と組み合わせることで快適なオートフォーカス性能が得られます。個人的には現代的でシャープな写りが苦手なのですが、このレンズはオールドレンズのような光の柔らかさや線の細さが感じられるので、とても気に入っています。
あっちももくもく。
こっちももくもく。
煙や湯気のような白い被写体は、背景が暗くなるように画角を調整してあげるとよりその存在が際立ちます。
丘の上から街を見おろした写真。
スナップ写真を撮るときは、自分の嗅覚を大事にしながらとにかく歩きまくることが重要です。この場所も有名な展望スポットではありませんが、直感の赴くままに歩いた先でたまたま見つけることができました。
良い街とはどういった街でしょうか?私は、「(神戸や長崎のような)坂のある街」と答えます。坂があるということは、海と山の距離が近いということです。海と山の距離が離れていると、その間で大規模な街が開発され自然から遠ざかってしまうことがあります。一方で、別府のような街は海側から山が見え、山側からも海が見え、いつでも自然を近くに感じることができます。
昼間の強い光で撮るのが苦手なので、朝の柔らかい光で撮影したあとコーヒーブレイクを挟んで、夕方再始動することが多いです。夏が近づいてきて最近は夕方でも日差しが強くなってきました。そんなときは、建物や木を上手く使って直射日光を和らげるのがオススメです。
下の2枚は明暗差が激しくハイライトに露出を合わせたため、普通ならシャドウが黒つぶれしそうですが、ETERNAの柔らかな階調のお陰でシャドウ側の情報量も保っています。
ストリートスナップでは、ちょっとした違和感を探すのが楽しく、見る人にとっても気になる“引っかかり”を作ることができます。
ETERNAが写し出すグリーンが好きです。無理をしていない自然な緑色。
全体のホワイトバランスを少しグリーンに寄せてあげると、よりシネマ感が出るように感じます。
気づけば再び海辺に下りてきました。「写真撮りは困ったら海辺に向かえ」理論はやはり正しいと感じます。
大分市方面を望む大好きな風景で締めくくり。
今回使用したフィルムシミュレーション

今回登場したカメラ
