富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き〜渡邉真弓×フィルムシミュレーション『ASTIA』×北海道浦河町〜

フィルム時代から90年以上に亘って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。今回は、北海道各地で写真教室や地域プロジェクトを手がけるX-Photographer・渡邉真弓さん(@allo_mayumi)に『ASTIA』で写真を撮りながら、北海道浦河町をそぞろ歩きしてもらいました。秋の気配をまといはじめた、太平洋を望む丘や花々が咲き誇る風景、あたたかい人の営み。柔らかなトーンと繊細な色づかいが魅力の『ASTIA』で、その穏やかな時間を切り取ります。
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「ただいま」と言える場所があることは、とても幸せなことだなと思う。
北海道浦河町は、私にとってそんな場所のひとつだ。
浦河町は太平洋と雄大な日高山脈にかこまれた自然豊かなまち。
馬産地としても知られ、町内には約3,000頭のサラブレッドがいる。
海で獲れる新鮮な幸も絶品で、札幌から南東へ車でおよそ2時間50分。
少し遠出すればたどり着ける距離感もまた、ちょうどいい。
出会いは10年前。
写真で地域の魅力を発信する活動を始めるきっかけをくれたのが、このまちだった。
通うたびに人とのつながりが広がり、今では友人や知り合いの顔がたくさん浮かぶ、親しい場所になった。
横道に入ると、すぐ海が広がる。
朝の浜辺では昆布漁がおこなわれ、イカ釣り漁船は夜の出航を待っている。
浦河町に行くと必ず立ち寄る場所がある。
それはルピナスの丘。
ルピナスの丘はスポーツ施設『ゼロネクストワンアリーナ』の裏手にあって、太平洋を一望できる。
名のとおり、初夏にはルピナスが咲き誇り、季節ごとにコスモスやさまざまな花が彩りを添える。
ここは澤谷さんご夫妻の私有地で、ご厚意によって一般に開放されている。
澤谷さんはほぼ毎日ルピナスの丘に通って、手入れしたり新しく種をまいたり、大切に大切に育てている。
だから、ファンも多く、例えばこの看板は、この夏に浦河町に滞在した方が廃材で作られたそう。
なんだかくすっと笑える可愛い看板!
他にも可愛いものがいろいろある。
来るたびにどこかが新しくなっていて、その話を澤谷さんから伺うのも楽しみのひとつ。
ふと見上げると気になるエリアが目に入った。
近づいてみる。
アートの丘と名付けられた一角に、油絵の野外展示が行われていた。
実はこの油絵は澤谷さんとその師匠の作品だそう。
作品を今後どうしていこうか考えたときに、ふと、ここで見てもらおうと思ったそう。
雨風や太陽に照らされ、自然に還っていく様子もアートだ。
今回の相棒は、『X-T5』と『XF16-55mmF2.8 R LM WR II』。
XF16-55mmF2.8 R LM WR IIは、35mm判換算で24-84mm相当。ズーム全域で絞り開放F2.8。日常の光景から旅先の風景まで、幅広く応えてくれる。
しかも最短撮影距離がズーム全域で0.3mなのもお気に入り。
澤谷さん手作りの道。
季節は、気づかぬうちに秋の気配をまとっていた。
フィルムシミュレーション『ASTIA』は、やわらかな階調と自然な発色でその変化を映す。
花の色も、海の青も、派手すぎず穏やかに。
光に透ける花びらの透明感や、丘を渡る風の涼しさまで写し込んでくれるようだった。
「考え事をしたいときに、ここに来るんです」
かつて誰かがそう教えてくれた景色を眺めながら、私はその言葉を思い出す。
心の還る場所。
写真を通して、たくさんの出会いをもらってきた。
いろいろな場所に会いたい人や風景があること、それは奇跡みたいなものだ。
これからも丁寧にシャッターを切っていこう。そう思った。
今回使用したフィルムシミュレーション

今回登場したカメラ
