富士フイルムXシリーズとそぞろ歩き~ひより×フィルムシミュレーション『クラシッククローム』×神戸・須磨~
フィルム時代から90年以上に亘って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルムならではの、20種類のフィルムシミュレーション。
今回Xシリーズと一緒にそぞろ歩きをしていただいたのは、中華圏読者向け日本観光ガイド『日和 HIYORI』を運営している台湾出身ブロガーのひよりさん(@_hiyori)。現在の活動拠点である兵庫県神戸・須磨のゆるやかな空気感を『クラシッククローム』で切り取ってくださいました。
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神戸の人は「山は北、海は南」という特有の“常識”がある。
その中でも、須磨は富士フイルムのファインダー越しに歩くと“色”がいちだんと面白いエリアだと思う。
今回使用するカメラは、『X-T4』。
『XF35mmF1.4 R』と『XF16mmF1.4 R WR』の組み合わせで、距離感と抜け感を意識して切り取る。
東京から神戸に来て4年目に入った。
最初は地図アプリ片手にうろうろしていたよそ者だったけれど、今は撮った写真の色と匂いで、だいたい場所がわかるくらいには馴染んだ気がする。
須磨駅の後ろにあるトンネルを抜けて、須磨海岸、山陽電車が走る海岸線を一望できるたぬき坂を進む。
ここは、まちの人が行き交う日常の通り道。
富士フイルムのクラシッククロームは、神戸の冬晴れとの相性が良い。
彩度を一段落とし、影を少し締めると、空の淡い青と海の鉛色、斜面に重なる家々の土壁や瓦のグレーが、しっとりと調和してくれる。
季節が変われば、選ぶフィルムシミュレーションも変わるのがまた楽しい。
以前に南仏を旅したとき、電柱のない街路に驚いた。地震の多い日本では地中化が難しい分、電線が走る。その景色には、人々の暮らしの温もりが静かに宿る。
それもまた、この街の個性なのだと、思わず好きになった。
はじめてカメラを携えてこのエリアを歩いた日、潮見台西小公園の脇にひらける海に、思わず息を呑んだ。
須磨がふっと、尾道の個性を纏う瞬間を切り取った一枚。
坂の斜度が想像よりも急だったけれど、頂上まで登って振り返ると、丘の起伏に寄り添うように、海と電車の風景が重なった、 まるで尾道にいるようなひとときに出会えた。
ちょっと不思議な、ガレージ兼ギャラリー。
電車も海も砂浜も一枚に収めたくて、一の谷の路地を縫うように歩く。
石段を一気に登ると、夫婦楠と、手仕事のぬくもりが滲む案内板に出会った。
須磨の山側に住むことは、どこかロマンだと思う。駅からは少し距離があり、店も多くはない。それでも“不便を愉しむ”という感覚に、この地らしい美学を見る。
住宅地の懐にひっそりと佇む一の谷公園。
園内東北側には安徳天皇を祀る安徳宮がある。昭和の面影を残す遊具も健在で、時間があれば須磨浦公園まで足を延ばすのも良い。
12月半ばに差しかかっても、まだ色のいい紅葉に出会えた。
散歩のささやかな喜びは、木漏れ日を見つけること。35mmの大口径は、光が少ない冬の午後でもシャッターを切りやすく、陰影の階調がなめらかに残るのがうれしい。背景はふわりとほどけて、視線が自然と主役に集まる。
路地裏を抜けてふと顔を上げたら、こんな景色が広がっていたなんて……と思わず息が止まる。
今回の散策の終点は、JR須磨駅前の老舗喫茶『白馬』。一杯の珈琲でこのカメラ旅を締めくくる。
創業は昭和40年。今は年配の店主がひとりで切り盛りし、壁には昔の白馬岳の写真が静かに並ぶ。バブル期は満席続きで、当時は従業員を連れて白馬岳へ旅したこともあるのだとか。
2階席は現在使われていないが、撮影してもよいか尋ねると、店主がそっと灯りを点けてくれる。
クラシッククロームで刻んだ温度と物語。須磨に来たなら、ここでの手淹れと景色をぜひ。
神戸のまちは、撮れば撮るほど、暮らしの色に近づいていく。クラシッククロームで切り取る須磨は、冬の色と気配が静かに立ち上る。
今回使用したフィルムシミュレーション






































