【Xシリーズユーザーインタビュー】レンズ越しに見つける生活中的美好事物(生活の中の美しいもの)。ブロガー・ひよりと『X-T4』
台湾や香港など中華圏の方々に向けて発信する自身のメディア『日和 HIYORI』を立ち上げ、日本国内の観光スポットやレトロな喫茶店を独自の視点とフォトジェニックな写真で紹介している台湾出身のブロガー・ひよりさん(@_hiyori)。全国各地にある素敵な場所を自らの足で訪ね、リアルな視点をもって綴られる内容は、観光情報とはひと味違う魅力があると注目を集めています。もともとはアートの道へ進もうと考えていたというひよりさんが自身のセンスを投影した美術作品のような写真もブログの見どころのひとつ。今回は、初めて手にした一眼カメラ『X-T20』と現在愛用中の『X-T4』のお話を軸に、写真にこめられたこだわりと“生活のなかで好きなもの見つけることの楽しさ”について伺いました。
Interview:ひより
――ひよりさんは、日本に住まれて7年ほどになるそうですね。現在のようにブロガーとして活動されるようになったきっかけは?
大学2年生のときに交換留学生として鹿児島で一年間を過ごし、台湾に戻って大学を卒業。2016年に東京で就職し、インバウンド系メディアを運営する旅行会社に編集者として入社しました。仕事でいろいろなところへ取材に行くなかで自分のメディアも持ちたいという気持ちが生まれ、そこから自分のブログを立ち上げてブロガーとしての活動をスタートさせたのが2018年のことです。その後、コロナ禍で一時的に台湾へ戻りましたが、2022年の夏ごろ神戸に引っ越してきました。
――ブログでは主に中華圏の方々に向けた日本国内の観光地やレトロな喫茶店などのレポートと併せて、さまざまなテレビドラマのロケ地が紹介されていますね。
子どものころから日本のテレビドラマが大好きで、7歳上の兄と一緒によく観ていました。とくに坂元裕二さんの脚本作品は本当にたくさん観ています。一番思い入れのある作品は『東京ラブストーリー 2020』。ブログでも紹介していますが、湘南の鎌倉海浜公園で撮影されたシーンの「最高の瞬間はつねに未来にしかない」というセリフが大好きなんです。
――ブログからもテレビドラマに対する愛情が伝わってきます。さまざまなスポットを素敵なお写真とともに紹介されていますが、もともとカメラがお好きだったんですか?
小さいころから写真を撮ることも好きでしたが、ずっと絵を描いていて大学でも美術を専攻していました。大人になるにつれ絵を描く時間が減り、生活の中で美しいと感じる瞬間をカメラで記録するようになりました。自分で最初にカメラを買ったのは大学生のとき。2019年に購入した『X-T20』が私にとって初めての本格的な一眼カメラでした。
――アートに触れてきた視点がお写真にも活かされているんですね。一眼カメラを手にするにうえで、なぜ富士フイルムに?
カメラを買うなら富士フイルムと決めていました。というのも好きなYouTuberのかつをさんがXシリーズを使っていて、写真の色みがとても素敵だったんです。富士フイルムのカメラならその場で見たまま感じたままの自然な色を表現できるんじゃないかなと思いました。私の場合、撮影シチュエーションに応じたプリセットをいくつか作っていて撮影後は時間をかけて編集をしています。ただし、どんなカメラでも自分らしい写真になるかというとそうではなく、富士フイルムのカメラで撮ることが前提です。たまに友人のカメラを使わせてもらう機会がありますが、色みの調整をしているとやっぱり撮りたい写真を表現できるのは富士フイルムらしい色みと質感があってこそだと感じています。
――具体的にどんなところに富士フイルムらしさを感じていらっしゃいますか?
きっとXシリーズユーザーみんなに共通する感覚だとは思うのですが、フィルムカメラに通じるどこか懐かしくて安心感のある雰囲気と色表現です。私はカフェ巡りが好きで、ブログでもレトロ喫茶を発信しているのですが、富士フイルムのカメラはそうしたスポットとの相性もすごくいいですよね。同じように、昔ながらの街並みが残る台湾の風景とも相性がいいと思います。とくにおすすめしたいのは、台北の北側にある“迪化街”というスポット。喫茶店やお寺があり、少し移動すると淡水という夕日のきれいな海岸もあります。カメラを持って歩くときっと楽しいですよ。
――写真を撮りたくなるスポットがたくさん見つかりそうですね。ひよりさんは現在『X-T4』をメインに使用されていらっしゃるそうですが、『X-T20』から移行された理由とは?
2021年から動画も撮るようになったので、よりコンパクトで動画撮影にも適した『X-T4』を使うようになりました。いつでも写真を撮りたいから結構大きなバッグを持って出掛けることが多いのですが、機材というよりアイテムとして持っているだけで気分が高まるデザインもXシリーズを気に入っている理由のひとつです。『X-T20』では主に中望遠レンズを使っていたのですが、『X-T4』と一緒に単焦点の『XF16mmF1.4 R』と『XF35mmF1.4 R』を購入して写真がすごく明るくなりました。また、コンパクトで軽いので動画もすごく撮りやすくなったと感じています。
――それぞれのレンズの使用シチュエーションについても教えてください。
メインで使っているのは、やっぱり『XF16mmF1.4 R』と『XF35mmF1.4 R』です。とくに『XF35mmF1.4 R』 のボケ感がとても気に入っています。テーブルフォト撮影にも適していますし、カフェで友人と向かい合わせに座ったときにも撮りやすいレンズですね。『XF16mmF1.4 R』はお店の内観を撮るときによく使用しています。
最近は出番が少なくなってしまいましたが、『XF60mmF2.4 R Macro』は広い風景を撮るときに活躍してくれます。最近だとこのレンズで岡山県の高梁市に雲海の写真を撮りに行きました。遠い風景を撮るだけではなく、アクセサリーなど小物を撮るときにも使うことがあります。次に欲しいのは、『XF23mmF2 R WR』。富士フイルムのカメラを持つきっかけになったかつをさんの写真集を拝見させていただいてとても素敵だったので、購入を予定しています。
――素敵な景色やおしゃれなスポットの魅力を伝えるうえで、ひよりさんが意識していらっしゃることとは?
まずブログで発信するうえでこだわっているのは、自分がいいなと思ったコンテンツのみ発信することです。日本に来たばかりのころはあんまり詳しくなくて、よく日本国内のメディアで情報収集をしていましたが、今ではInstagramなどを参考に素敵だなと思ったところへ実際に足を運んで取材しています。
私の場合、写真はすべて独学なので、ブロガーになってからはお店の外観やメニューなどの撮影に慣れるまですごく時間がかかりました。カフェで撮影する際は室内の光量が少ないので、手ブレをおこしやすくなります。そのため、カフェに着いたら、なるべく窓の近くに座ることを意識しています。食べ物や飲み物を撮るときに、明るい背景を選ぶと透明感が出せます。よく“何を一番見せたいのか”を考えながら、被写体が良く見えるポイントを探しています。動画撮影も今はまだ勉強中ですが、今年は本格的にYouTubeチャンネルを始めようかなと思っています。
――動画での活動も楽しみです。ひよりさんのブログを見ていると、好きなものや素敵だなと思う気持ちをストレートに表現できる写真の魅力を改めて感じます。ご自身は、写真の面白さとはどんなところに感じていらっしゃいますか?
私のブログの一番上に中国語で書いている「致力於發覺生活中的美好事物」という言葉は、「生活の中にある美しいものを発見することに尽くす」という意味です。カメラがあるからこそ、素敵なものとの出会いを記録できると考えています。また目の前の魅力を伝えるため、その時しかない瞬間を残しておけることが写真の魅力だと思います。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)