ボケを使いこなそう!ボケの仕組みとその作り方〜Photoli’s Tips vol.2〜
IRODORIの読者の皆さん、こんにちは。Photoli編集部の横尾 涼(@ryopg8_tabi)です。
Photoli(@ photoli_info)は、写真の楽しさをたくさんの人に広めることを目的に、写真を撮るコツや撮影のアイデアを発信しているメディアです。
この連載では、意識すると少し写真が上手に撮れるようになるかも?というアイデアを、みなさんに分かりやすくお伝えしていきます。
第2回である今回は、“ボケ”について。
Photoliを運営していると、「いつもはスマートフォンで写真を撮っているけど、もっと背景が大きくボケた写真が撮ってみたいからデジタルカメラを買いました!」という声をよく目にします。この記事を読んでいる皆さんの中にも、同じ動機でカメラを始めた方がいるかもしれません。
たしかに背景のボケは、”カメラで撮れる写真”と”スマートフォンで撮れる写真”の大きな違いの一つです。僕もカメラを始めたばかりの頃、背景を大きくぼかした写真が撮れたときに一層写真にハマったことを覚えています。「被写体がくっきり写っていて、プロみたいな写真だ!」と感動したんです。
しかし写真をたくさん撮っていくうちに、あえてぼかさずに背景の情報をたっぷりと入れた写真にも魅力があると気づきました。
ボケはあくまで表現のひとつであり、大きくボケていれば良い写真というわけではないんです。
そこで今回は、ボケの大きさをコントロールする方法をお教えします。
ただ大きくぼかすだけではなく、ボケの大きさをコントロールできるようになれば、表現の幅が広がること間違いなしです!
ボケの大きさを決める3つの要素
ボケの大きさは、
・レンズのF値
・レンズの焦点距離
・被写体と背景の距離
の3つの要素によって決まります。
この3つをそれぞれ変化させることで、ボケの大きさを調整することができます。
難しそうに感じるかもしれませんが、一度理解してしまうととっても簡単です!実践する方法もセットで紹介するので、カメラを準備して試してみてくださいね。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
– レンズのF値
写真を撮るとき、カメラで設定する値に『F値』というものがあります。F値は光を取り込む量を表す値ですが、その仕組みによってボケにも大きく関わっています。とっても簡単に言うと、F値を小さくすればするほど、背景は大きくボケます。
F値はレンズによって、変化させられる範囲が決まっています。
富士フイルムのレンズに表記されている、
1:◯
の部分が最小F値です。このレンズの場合だと、“1:2.8”と書いてあるので最小F値は2.8ということになります。
ざっくりですが、F1.4だとかなり大きくボケる、F2.8だとまあまあボケる、F5.6以上だとボケが小さい、というイメージをなんとなく掴んでおきましょう。
お手持ちのカメラで、F8以上とF4以下などの少し離れた2つのF値でそれぞれ写真を撮ってみてください。背景のボケの大きさに変化があるはずです!
ちなみに、F値を一番小さくした状態を「開放絞り」と呼び、F値を小さくすることを「開く」、逆に大きくすることを「絞る」と言います。カメラ用語としてよく出てくるので、覚えておくと役に立ちます。
– レンズの焦点距離
それぞれのレンズには、『焦点距離』というものがあります。
焦点距離は写る範囲に関わる値ですが、この値によってもボケの大きさは変わります。
レンズに表記されている、
◯-◯mm
の部分です。このレンズでいうと、“16-55mm”が焦点距離を示しています。
焦点距離が大きくなるほど、ボケは大きくなっていきます。
もしズームレンズをお持ちでしたら、一番広角の状態(小さい数字に合わせる)で近くにあるものを撮ってみてください。それからそのまま後ろに下がり、一番ズームした状態(大きい数字に合わせる)で被写体が同じくらいの大きさに写るように撮ってみてください。
背景のボケの大きさに変化が感じられましたか?
– カメラと被写体の距離
ボケに関わる3つの要素の中で最も重要なのが、カメラと被写体の距離です。
先に紹介した2つの要素にはレンズが大きく影響していましたが、ここではレンズは関係ありません。
単純に、被写体に近づけば近づくほど、背景のボケは大きくなります。
同じ被写体を、離れたところから撮ったあと、近づいて撮ってみてください!写真を見比べると、背景のボケの大きさが変わっているのがわかると思います。
まとめると、背景を大きくぼかすには、F値を小さくし、焦点距離を大きくし、被写体に近づきます。それを逆にすると、背景までくっきりと写すことができるというわけです。
ボケの大きさのコントロールのしかたが、わかっていただけましたか?
玉ボケと前ボケにチャレンジ!
ボケの基本がわかってきたら、ボケを使った代表的な表現『玉ボケ』と『前ボケ』にチャレンジしてみましょう!
レンズを通すことで作りだせるこれらの表現は、景色を新鮮なものに変えてくれます。
– 玉ボケ
玉ボケは、小さな点状の光源をぼかすと撮ることができます。
こちらの写真では、光を反射している水面をぼかして玉ボケを作っています。
木漏れ日や雨粒、夜景、イルミネーションなど、キラキラしている場所をぼかしてみましょう。
こちらは展望台から撮った一枚。遠くに見える夜景をぼかしました。
遠くにある街の光はとても小さな点なので、被写体に近づき背景を思い切りぼかすことで玉ボケになりました。
光を反射する葉も玉ボケポイントです。
以下の写真では、奥の葉が玉ボケを作っています。奥に玉ボケを作ることで、晴れた日の木陰の心地よさが伝わってきます。
Gマウントレンズのピント面のシャープさが際立つ一枚になりました。
– 前ボケ
ボケは背景だけではなく、手前に作ることもできます!
“前ボケ”を使い、背景と被写体の手前にもう一層プラスすることで、写真に奥行き感や立体感がでます。
こちらは茂みの中で佇む猫。右手前に葉を入れることで”茂みの中にいる感”を表現しました。
ごちゃごちゃとした場所では、GFXシリーズの大きなセンサーサイズならではの被写体が浮き上がるような描写力が活かされます。
また、背景までの距離が取りづらい狭い場所でも、手前にボケを作ることによって奥行き感を作り出すことができます。よく使っているレンズ 『GF55mmF1.7 R WR』は、F1.7による豊かで大きなボケ味が魅力。窓からやわらかい光が入る室内にて、逆光で撮影するというシチュエーションで力を発揮しました。
前ボケさせるものは思い切ってレンズに近づけたほうが、印象的なボケを作ることができます。こちらの写真ではレンズの前、ごく近くに葉がかかるように撮っています。
手前にどんなものを持ってくるかによって前ボケの色や形が変わるのも、楽しいポイントです!
ぼかさないことの魅力、ボケればボケるほどいい写真というわけではない
ボケの作り方を覚えると、どんなシーンでもついつい背景をぼかしたくなります。しかし、前述の通りボケていればいい写真になる……というわけではありません。
背景をぼかすことの大きな魅力は、被写体が際立つことです。逆にいうと、背景は目に入ってこなくなります。背景も含めたその場の状況を切り取りたいときには、むしろボケが邪魔になってくることもあるんです。
同じ場所でF値を変えて撮ってみました。この小麦畑の写真、みなさんはどちらが好みですか?
F値が大きい方はボケが少なく、多くの小麦にピントが合っています。F値が小さい方は中心あたりの小麦にのみピントが合っていて、奥や手前の小麦はボケています。どちらにも良さがあり、表現したいことによって使い分ける必要があります。
今、自分が撮ろうとしているのは、被写体だけなのか?それとも被写体と背景の関係なのか?それはどれくらい分離していると表現できるのか?という基準で、ボケの大きさを決めてみましょう。ボケの大きさをコントロールできるようになると、写真がグッと上達します。
思い切りぼかしたり、印象的なボケを作ってみたり、あえてぼかさなかったり。ひとくちに“ボケ”といっても、色々な表現があることが伝わりましたでしょうか?ボケをうまくコントロールして、自分の世界観をより写真に反映させてみてくださいね!
次回は、“カフェ写真をちょっと素敵に撮るコツ”についてお伝えします!