“愛おしい日常”と向き合って気づく愛機との向き合い方〜tsubaki vol.2〜

“写真で世界は愛おしくなる”
前回のコラムで書かせていただいた私なりの『愛おしさという哲学。』。
写真を撮ることによって、日々の何気ない風景や出来事、身近すぎて気に留めなかったものに愛おしさを感じるというものだが、それはもちろん愛おしさを撮り溜めるカメラやレンズたちにも同様に感じる気持ちでもある。
そもそも私はかれこれ5年ほど前にXシリーズユーザーになり、それからずっと“カメラは相棒”だ。
どこに行くにも一緒だが、その日の気分や手荷物の量、撮るものが決まっているのか、ただふらふらと散歩ついでに出かけるのか……
愛機たちをシーンによって選ぶ作業はさながら“誰と出かけるか”を考えるような感覚で、一緒に過ごす時間が増えるほど愛着が沸く。そして、いつも持ち歩いているから思ってもいない瞬間や出会いに遭遇する。
カメラは道具だ。カメラ任せにしても綺麗な写真を撮ってくれる。最初は私も軍艦ダイヤルが直感的に使いやすそうで、レトロな雰囲気がいいなとシルバーの『X-T30』を購入した。

一番最初に手にしたXシリーズは『X-T30』。レトロなたたずまいが気に入っている。
X-T1 /XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS /F20.0 /2秒 /ISO400 /PROVIA
カメラで写真を撮ることが楽しく、思ったように撮れなかった頃は何度も試行錯誤したし、試行錯誤しながら上達していく過程がとても楽しかった。今でこそある程度使いこなせるようになったものの、Xシリーズの機能を余すことなく使えている訳ではないのでまだまだ発見はある。そうして一緒に過ごしていく中で単なる道具だったカメラが相棒になった。

『X-T30』を手にいれてすぐの頃は流し撮りや多重露出など、撮影のテクニックをいろいろ試したかった。
X-T30 /XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS /F5.0 /1/3.5秒 /ISO800 /Velvia
カメラがあるから写真が撮れる。たったそれだけのことだけど、十人十色の写真感がある中で、それぞれの人が様々な理由で選んで携えるカメラたちは時折“愛機”と呼ばれ道具というよりも機材として愛でられるようになる。
一度カメラに愛着が沸くと手入れをしているだけでも楽しい。
私の場合はほとんど毎日持ち歩いているので、すごくマメに手入れをしている訳ではない。
ただ写真を撮っているときにふと傷をみつけたり、汚れが気になったりする。気になったタイミングで念入りに手入れをしながらあそこに行ったな、今度はどこへ行こうかなど思いを巡らせる時間が愛おしい。
私と同じように愛機に愛着を持っている人と話すと、今まで気づいていなかった愛機の良さも再発見できることもある。
例えば私の愛機の『X-Pro3』はデュラテクトシルバーを選んだのだが、3色の中でどの色に決めるかがなかなかに難しかった。
『X-T30』をシルバーにしたので、基本はシルバーを選んでいくつもりをしていたがエイジングされた『X-Pro3』ブラックを見たときにその渋さに惹かれてドキッとした。なるべく丁寧に扱っているつもりでも常に首からぶら下げているのでどうしてもどこかに傷がついてしまう。
だったらいっそ使い込んだ軌跡を刻むくらいの使い方もアリなのかもしれないなと、私の中で新しい価値観も生まれた。
ただ、製品発表会のときに商品開発担当者の方がデュラテクトコーティングへの拘りや技術的な難しさについて話していたのを聞いて、最終的にはデュラテクトシルバーを選ぶことにした。
何事においてもそうだが、知っていることが増えると選択肢も広がる。
経験が積み重なるとそれまで考えたことがなかったことにも気付けることがある。
カメラのエイジングの格好良さに気づいた私は『X100V』を購入したときは迷わずブラックを選んだ。

ストラップで削れるのを嫌がる人もいるが、複数機種のストラップの付け替えなどの取り回しの良さを優先した結果、私の『X100V』は削れているが、私は気に入っている。
X-A7 /XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ /F3.5 /1/25秒 /ISO3200 /PROVIA
そうして考えて選んだ愛機たちにはさらに愛着が湧き、愛着があるから日々持ち出したくなるし、家の中でも目につくところにあるとなんだかわくわくする。
なぜこの機材を選んだか?その理由を深掘りしていくと機材に対しての『愛おしさという哲学。』が生まれ、撮影行動をより楽しく豊かにしてくれそうだ。
Profile
