写真家・片渕ゆりの『FSレシピ』集〜光と記憶が織りなすスナップ〜
富士フイルムXシリーズの『X-E5』や『X-T30 III』に新たに搭載された、フィルムシミュレーションと画質設定を自由に組み合わせて自分好みの『FSレシピ』として保存できるカスタム設定機能。軍艦部左側のフィルムシミュレーションダイヤルにてお気に入りの設定を3つまで登録することができ、シーンに応じて瞬時に切り替えられるように。本企画では、この機能を活かしたオリジナルの『FSレシピ』を、Xシリーズを愛用するフォトグラファーに紹介していただきます。
今回は、写真家・ライターとして、旅にまつわる文章や写真を発信している片渕ゆり(ぽんず)さん(@yuriponzuu)に、スナップをテーマに3つの『FSレシピ』を作成いただきました。日常の風景から遠い旅先の場所まで、時間と記憶の気配を写し取るための3つのレシピです。
レシピ①:“First Light”
淡い発色と、やわらかく滲む光。すこしだけ現実離れした、どこか夢見心地な空気感を表現することを意識しています。
ベースにはETERNAを選択。コントラストを抑えて全体をフラット寄りに保つことで、景色全体が自然に溶け合う印象になります。WBは雰囲気優先のオートを使いつつ、わずかに調整して青みを残しました。
シャープネスを低めにし、解像感をあえて抑制しています。そこに グレイン・エフェクトを重ねることで、デジタルらしさを薄め、スクリーンを思わせる質感を加えています。カラークローム ブルーを効かせることで空や影に含まれる青の階調が深まり、都会であってもどこか静寂を保った印象に。
世界が動き出す朝の時間を想像しながらつくったレシピなので『First Light(夜明けの光)』という名前にしましたが、夕暮れに使ってみるのもおすすめ。情緒的だけどどこか遠い思い出のように感じられて、いつもの景色をあらためて見つめ直したくなるようなレシピを目指しました。
レシピ②:“Still Warm”
思い出すたびに心を温めてくれる、やわらかな思い出。ひだまりのような記憶のワンシーンをイメージして作成しました。
フィルムシミュレーションは、その名の通り“ノスタルジック”な雰囲気が魅力のノスタルジックネガを選択。
WBを調整して赤みを抑え、わずかに青を足すことで、温度を感じさせながらもすっきりとした色合いに。シャープネスを下げて輪郭を少しやわらかくすることで、被写体が説明的になりすぎません。また、グレイン・エフェクトを重ね、時の流れが積もったような質感を加えています。
可愛らしいシェードランプ、ずっしりとしたホテルキーの重み、古いガラス窓の向こうから差し込む淡い光ーー。撮った直後よりも、しばらく時間が経ってから見返したときに、「ああ、いい時間だったな」と静かに思い出せる。『Still Warm』は、そんな余熱のためのレシピです。
レシピ③:“Quiet Quartet”
いつか行ってみたいと思っていた、大好きなドラマのロケ地で使おうと思い作成したレシピです。静かに佇む教会や、歴史ある木造建築。旅先でつい撮りたくなる建物をイメージしながらつくりました。
歴史ある建物を訪れた際に感じる特有の静けさと、背筋ののびる緊張感。それらが重なり合って生まれる空気感を、どこかミステリアスなまま写真に残すことを目指しています。
フィルムシミュレーションにはクラシックネガを選択。木材の質感や経年変化のある壁、くすんだ塗装との相性が非常によく、被写体そのものが持つ歴史を、自然と浮かび上がらせてくれます。暗部をあえて持ち上げることで、影の中に情報と気配を残しました。木材の柱や梁、夕方の街並みに落ちる影などが、単なる“暗い部分”ではなく、“余白”として写ります。
WBシフトで全体を少し冷たい方向へ寄せていることで、木の温もりや街の色味が甘くなりすぎず、張りつめるような静けさを保っています。晴れた昼間よりも、曇りの日や夕方、光が斜めに差し込む時間帯に。古い建物の前でふと立ち止まり、「この場所は、どんな時間を重ねてきたのだろう」と感じた瞬間に使っていただきたいレシピです。
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