エモーショナルでノスタルジックな“夏”を撮る・後篇〜Xシリーズで四季を撮るテクニック〜
春・夏・秋・冬、日本の四季にはその季節にしか撮れない、素敵な瞬間がたくさんあります。この企画はそれぞれの季節における様々なシーンをXシリーズで印象的に撮影するテクニックやアイデアをお届けします。
今回のテーマは、たくさんの思い出が生まれる“夏”。青い海、照りつける太陽の日差し、故郷の田園風景、夜の手持ち花火……そんなノスタルジックで夏らしいシーンを撮影するコツをフォトグラファーの鈴木文彦さんに教えていただきました。今回はPoint4〜6の後篇です。
Point4. たまにはカメラ任せにしてみる
みなさんの胸に残る夏の思い出の1枚とはどのような写真でしょう。しっかりと作り込んで撮ったものではなく、ふとした表情、何気ない瞬間、笑顔いっぱいの写真など、きっと大切な人が楽しそうにしている写真を思い浮かべた方は多いと思います。
そんな瞬間を撮るには、「あ、いいな」と思ってからカメラを用意・セッティングしていては間に合いません。電源をオンにしておくのはもちろんのこと、対応機種であれば『アドバンストSRオート』に設定し、シーンを分析して絞り値、シャッタースピード、AFモードの全てをカメラ任せにしてみましょう。
『アドバンストSRオート』が搭載されていない機種に関しては、『Pモード(プログラム)』にすることでスピーディーな撮影がおこなえます。
露出をコントロールしつつ速写性を高めたい時に『プリAF』をONにしておくと、シャッターボタンを半押ししていなくてもAFサーチがおこなわれます。瞬時の表情を収めたいときには有効なモードです。
Point5. 夜の思い出を切り取ってみる
夜祭りや花火など、夜の思い出もたくさん生まれる夏。Xシリーズは高感度の描写力も高いので、夜の撮影も簡単におこなえます。
ISO感度の設定を思い切り上げれば手ブレすることなく撮影できますが、代わりに高感度ノイズも発生してきます。通常、高感度ノイズが発生するのは嫌われますが、Xシリーズの高感度ノイズはナチュラルで嫌みのないノイズだと評されることが多く、フィルム写真の粒状感のような雰囲気を演出することができます。そのため、夜撮影では躊躇せずISO6400くらいまで使ってみましょう。そして、暗所では少し明るめに写る傾向にあるので、露出補正をマイナスにして黒を締めるといいと思います。
こちらはISO3200で撮影。わずかに高感度ノイズに起因する粒子が出現していますが、それが味わいを作ってくれます。
こちらはISO3200で撮影。花火だけの明るさでも、手持ちで問題なく撮影ができます。
Point6. ノスタルジーを喚起させる写真を撮る
田んぼの中、海岸へ続く道。そんな画になりそうな場所を背景に、ワンピースに麦わら帽子のような夏休みスタイルで佇めば、作品的なポートレートになります。“情景も込みで撮る”というところが重要ポイント。
また、懐かしさを感じさせるアイテムや場所を通じて、帰省や故郷を感じさせるのもテクニックです。不思議なもので、自分自身の記憶とは異なる風景であっても、ふっとどこかで繋がってノスタルジーを刺激できるからおもしろいですね。
以上、エモーショナルでノスタルジックな“夏”を撮るための提案でした。あまり出掛けることができない状況は続きますが、だからこそ、夏の思い出を大切に残していきたいですよね。いつか見返したとき、胸に迫るような写真をXシリーズを手に目指してみましょう!
text&photo by 鈴木文彦