暮らしのひとこま〜家族と日常を慈しむ時間から〜AKIPINの場合
X/GFXシリーズを通して写真を楽しむフォトグラファーたちに、愛用の日用品やこだわりの空間、大切にしている生活の一場面を紹介してもらう本企画。フォトグラファーたちがどのようなモノや時間と共に暮らしているのか。その日常にそっと目を向けます。今回は、家族、好きなモノとの時間を大切に抱えながら、写真と暮らしに向き合うAKIPINさん(@akipinnote)です。
① 富士フイルム『X-T10』
ぼくが初めて手にした富士フイルムのカメラ『X-T10』。クラシックなフォルムとフィルムシミュレーションに惹かれどうしても欲しくなって、別メーカーのカメラを使って日も浅い中、貯めた小遣いをはたいてえいやあっ!と購入しました。使ってみて、「色味によって、写真の味わいってこんなに変わるのか!こんなにも楽しくなるのか!」と知り、どんどんハマっていきました。その後、同シリーズの『X-T30 II』を経て、今は最新の『X-T50』と使い続けています。このコンパクトさとクラシックなフォルム、ひょいっと手に取って持ち出したくなる魅力は変わりません。このカメラに出会わなければ、”カメラ人生”どころか、”人生そのもの”が確実に別ものになっていた。人生の恩人(恩機?)だと確信している大切なモノです。
② シロクマのぬいぐるみ『しろ』
結婚した20年前、妻と一緒に新居にやってきた”連れ子”です。名前は『しろ』、2才の男の子。娘が生まれる前の10年間、2人でしろに話しかけて、しろからも返事があって(※しろの声優はぼくか妻)、毎日会話していました。健康面や経済面などに悩み、2人で話し合っていて行き詰まったとき。しろにそれを語りかけると、それまで思いつかなかった前向きな言葉が返ってきて何度も何度も勇気づけられました(※繰り返しますが、しろの声優はぼくか妻)。娘が生まれてからは、娘もしろが大好きになって肌身離さず連れ歩き、「しろちゃん、しろちゃん」と呼んでドレスを着せて一緒に成長しました(※いつのまにか女の子に)。今や鼻の頭がちょっと禿げ、身体の芯もくたくたなのは、愛され続けてきた証。変わらない笑顔でこれからも家に居てほしい……と、44才のおっさんが思っています。
③ リフォームしたキッチン
17年前に購入した、わが建売戸建住宅に備わっていたキッチンを4年前にリフォームしました。身長153cmとコンパクトめな妻に合わせた、オーダーメイドのキッチン。シンクの広さと深さ、蛇口までの距離、いくつかある引き出しの深さ、調理スペース、洗いかご置き場、鍋やお玉を掛けるフック。さらに、ステンレスの天板、タイル貼りの壁、無垢板のカウンター、リビングからの目隠しになるカウンターの高さ……などなど。他にもいろいろと、ぼくが考えたこともなかったような観点からの要望を妻は施工業者さんに伝えていて、「妻はこのキッチンという場所を、こんなに解像度高く見ていたのか!」と驚きました。当初、壊れてもないキッチンを交換するなんて贅沢すぎるとも思いましたが、こつこつと働いて貯めたお金をそこに使う判断は、「自分たちは、何を軸に生きていきたいか」を夫婦で確認しあい、意思決定した、大切な節目になりました。今も毎日、妻がごはんを作り、食べた食器をぼくが洗いながら、「キッチン、ええなあ」「うん。キッチン、ええよなあ」と浸っています。
④ 妻から娘への、娘からぼくらへの手紙
一つめの写真は何年か前に妻から当時7才の娘に宛てた、書き置き。”リラオ”というのは娘が宿題に使っていたテーブルのあだ名。ぼくがある日なにげなくリラオを見ると、置いてあったんです。まだ慣れていない小学生生活、いつもこのテーブルで頑張っている娘と、それを温かく見守る妻の心を感じて、いい手紙だなぁと思います。もう一枚は、8才のときの娘が結婚記念日にくれた手紙。この結婚があったから自分という子が生まれた、という巡り合わせに子ども心なりの思いを馳せ、時間の戻らなさを受け止め、楽しい時間を過ごしたいと願い、明るい未来を親に伝えてくれること……。小さな身体で、純粋無垢な笑顔で、なぜそんな過去や未来に思いを馳せることができるのか、親の未来を願うことなんてできるのか。うれしくて、ありがたくて、今でも驚きをもって読み返す手紙です。
⑤ お箸
ぼくと妻は結婚時に友達からプレゼントしてもらったお箸を20年間使っていますが、2年前に突然、「AKIPINさんが大事にしておられるそのお箸を、ぜひ、きれいに塗り直しさせていただきたい」と、InstagramのDMから連絡があったんです。話を聞くと、ぼくのInstagramにたびたび映る箸を覚えてくださっていた方が、あるお店に並んでるお箸を見て、AKIPINの箸と同じだと話してくださったそうです。その話を聞いたお店の方がぼくのInstagramを見て、「このお箸をこんなにも長年、塗装が薄れるほどに使ってくださって嬉しい。ぜひ塗り直しさせていただきたい」との思いで、連絡くださったということでした。仕事や宣伝との交換条件でもなく、純粋にこのお箸を思う気持ちからのお声がけ。ぼくと妻は感激し、2膳の塗り直しをお願いしました。新たにこのお店で購入した1膳と合わせて、ぼくと妻と娘とでこの螺鈿(らでん)が美しい3膳のお箸を毎日使っています。人がつながる喜びと、仕事を愛する思いの清々しさに浸りながら、このお箸でごはんを毎日食べています。
⑥ 大切な3冊の本
多くない趣味の中で、読書は昔から今も好きだと胸を張って言います。通勤の電車、職場の昼休み、リビングの椅子、湯船の中、布団の中……本があればぼくはとにかく大丈夫です。今までのぼくの発信物に少しでも共感くださる方がもしいらっしゃれば、この3冊をおすすめしたい。その魅力はぜひ読んで感じていただきたいです。本好きなぼくが言いたいと思うことは、一つひとつの言葉を大切に発して、書いて、生きていきたいということでしょうか……ありふれた言い方ですが。ある場面で「Aと言った」という事象は、同時に、「Bと言わなかった」という事象でもあるということ。単に「Cは良いね」と言うことは、「C以外は良くないね」と言っているのだと受け取られることもあり得ること。そこに傷つく人がいるかもしれず、その人はそれでも顔にも出さずにいるかもしれないこと。やさしくて、強い、いろんな本から、生きる喜びや奥深さを学び、味わっています。
今回登場したカメラ




















