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Interview 2023.01.20

【X/GFXシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・クロカワリュートと『GFX50S II』 “変わらないこと”が富士フイルムを信頼できる理由

大手企業の広告をはじめ、アーティスト、ファッションのメインビジュアル撮影など、活躍の場を広げるクロカワリュートさん(@ryuto_kurokawa)。スタジオ撮影でのキャッチーな絵作りを得意とするクロカワさんは、現在『GFX50S II』を手に現場へ臨んでいますが、XシリーズやGFXシリーズだけではなく、他社メーカー含め「30〜40種類のカメラを使ってきた」といいます。さまざまなカメラとの出会いを経て、どのように『GFX50S II』へたどり着いたのでしょうか?自身のカメラ遍歴とともに、GFXシリーズの魅力についてお聞きしました。

Interview:クロカワリュート

 

アナログチックな要素に惹かれたXシリーズとの出会い

――はじめにクロカワさんのカメラ遍歴についてお聞きしたいのですが、写真を撮り始めたのはいつ頃ですか?

20歳の時です。初めて購入したカメラは別のメーカーで、その後しばらくいろいろなメーカーのカメラを試してから、富士フイルムの『X20』にたどり着きました。

――『X20』を使うようになった理由を聞かせてください。

X20 /F3.6 /1/850秒 /ISO400
フィルムシミュレーション:モノクロ

コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)なのに電子ファインダーではなく光学ファインダーを搭載している、そのようなアナログチックな要素があるところに惹かれたんです。ルックスと持ち運びの利便性が気に入って、しばらく使っていました。
その後、日常を撮るのに使い勝手の良い『X100S』、『X100V』を購入しました。フィルムシミュレーション然り、フィルムメーカーならではの色味がやっぱり良いなと思ったんです。コンデジで撮影するときは、“帰宅して現像”というより、日常の中で写真をたくさん撮っていきたいので、元から画に対して信頼を置いているX100シリーズを愛用していました。

X20 /F5.0 /1/18秒 /ISO3200
フィルムシミュレーション:モノクロ

――2019年6月に独立をされた際は、どのカメラを使っていましたか?

当時は、『X-T2』をメインとサブの計2台で使っていました。その後『X-T3』が発売した際に、『X-T3』をメイン機としながら、『X-T2』と『X-Pro2』をサブ機に。『X-Pro2』はプライベートでも使っていましたね。

X-T3 /XF16-55mmF2.8 R LM WR /F8.0 /1/125秒 /ISO400
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

――その組み合わせに至った背景を、ぜひ知りたいです。

ちょうど独立前後に「富士フイルムが熱い!」と思う時期があったんです。シャッタースピードなどの設定を直感的に変更できるダイヤル操作に惹かれたのと、“APS-Cサイズだけれど写りの良いカメラ”という印象もあり、『X-T3』をメイン機に選びました。それに『X-T3』はオートフォーカスの精度が『X-T2』よりも上がったし、使用感も良くなっていて。画の仕上がりは、『X-T2』と『X-T3』で個人的に大きな差を感じなかったので、自然とメイン・サブの組み合わせが決まりました。

何より『X-T2』、『X-T3』、『X-Pro2』ともに、フジノンレンズが使い回せるところがミソでした。独立当初は今のようにスタジオ撮影がメインではなく、屋外や狭い場所でのお仕事が多くありました。そのため、さまざまなシチュエーションに対応できるカメラであることが決め手だったと思います。

X-T3 /XF16-55mmF2.8 R LM WR /F8.0 /1/125秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

スタジオ撮影での使い勝手からGFXシリーズに至る

――現在のようにスタジオ撮影がメインとなってからは、どういったカメラを使い始めましたか?

GFX 50S』をメイン、『GFX 50R』をサブとして使うようになりました。画質を追い求め、ある程度データサイズが大きい写真に対応できる中判サイズのカメラが欲しくなったんです。複数のメーカーから検討したうえで決めましたね。

GFX 50S /GF32-64mmF4 R LM WR /F11.0 /1/125秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

――どのような判断基準で、その二台にたどり着いたんですか?

“必要な機能が搭載されているか”と、“気持ち的に上がるか”を重視しました。

中判カメラを検討していた頃に『GFX 50R』が発売され、他社のレガシーな作りの中判カメラに比べて“今っぽい”使い勝手の良さが気に入りました。電子ビューファインダー(EVF)がある点は、特に惹かれましたね。対して『GFX 50S』は、『X-T3』の流れを汲んでいるアナログ感があるルックスに加えて、より使い勝手がアップしている点が良いなと。そういった中で、メイン機として『GFX 50S』、サブ機として日常でも持ち運べるサイズ感の中判カメラ『GFX 50R』を併用すれば面白そうだと思いました。

GFX 50R /GF120mmF4 R LM OIS WR Macro /F8.0 /1/250秒 /ISO800
フィルムシミュレーション:Velvia

その後には、広告業界でブランド力のある、いわゆる“高級カメラ”と呼ばれる中判カメラも一通り試してみたんですよ。ちょっとした興味本位でした。確かに画も綺麗だったのですが、重さや性能がどうしてもレガシーすぎて、使用していく中で細かな不満が積み重なっていきました。そうして次の機種を悩んでいたタイミングで『GFX50S II』が発売され、現在は『GFX50S II』を二台使うスタイルで落ち着いているところです。

色に忠実さを求める現場から、画的な良さを求める撮影までを網羅するカメラ

――『GFX 50S』も使用経験のあるクロカワさんだからこそお聞きしたいのですが、『GFX50S II』でアップデートを実感したのはどういったポイントになりますか?

GFX 50S /GF63mmF2.8 R WR /F8.0 /1/125秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:ASTIA

かなりニッチな変化になるのですが、『Capture One』という現場のPCから撮って出しを確認できる現像ソフトウェアで、ライブビューを出しながらそのままシャッターを切れるようになったのが嬉しかったです。『GFX 50S』では、PC上でシャッターを切る時に一度PC上に出しているライブビューをオフにする必要がありました。シャッターを切るまでに数秒のタイムラグと手間が発生していたので、『GFX50S II』ではそういった手間がなくなり、精密さを求められる撮影では非常に便利になりました。富士フイルムがそういった“細かいけれど現場にニーズがあるところ”を改善してくれるのは、かなり助かっています。仕事で欠かせないカメラです。あとはボディの厚みが薄くなって小さくなったことも大きいですね。

――普段、『GFX50S II』を使うときはどのようなレンズを組み合わせることが多いですか?

GF35-70mmF4.5-5.6 WR』が、キットレンズと侮ることなかれ、しっかり写るので重宝しています。小さくて持ち運びも便利。あと、僕は手前から奥までしっかりピントの合った撮影が多く、F8〜F16あたりをよく使うのでレンズ自体の明るさはあまり重視しておらず、『GF35-70mmF4.5-5.6 WR』がちょうどいいのかなと。

『GFX 50S』、『GFX 50R』時代から使っているのは『GF120mmF4 R LM OIS WR Macro』。モデルさんのバストアップ以上に寄って撮る時に距離感がちょうど良いのと、端正な描写を表現できるので、モノの質感を表現したい時に活躍していますね。

GFX 50R /GF120mmF4 R LM OIS WR Macro /F11.0 /1/100秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

――スタジオ撮影の現場で、フィルムシミュレーションを活用することはありますか?

仕事の撮影では“エモーショナルさ”ではなく“色の正しさ”が求められるので、基本的にはPROVIAを当てた上で細かい調整をすることが多いです。GFXシリーズはデータ量も豊富で白飛びや黒つぶれなどの破綻はしづらいですし、階調の変な癖もなくて色調や階調が整った商用に耐えうるしっかりとした写真を作りやすいです。

かえって色の厳密さよりも画的な良さを求める時は、クラシッククロームやクラシックネガ、PRO Neg. Stdを使います。フィルムシミュレーションはベースの味を整える、出汁のような役割だと思っているので、フィルムシミュレーションを当てた上でさらに自分好みに調整をかけています。フィルムシミュレーションそのままでも良いですし、自分なりのカスタマイズがしやすいのも自由度が高くて気に入っているポイントです。

X-T3 /XF16-55mmF2.8 R LM WR /F5.6 /1/125秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:PRO Neg. Hi

「変わらないこと」が富士フイルムの魅力

――クロカワさんにとって一番思い入れがある富士フイルムのカメラを一台挙げるなら?

実は『X-Pro2』なんです。もちろんGFXシリーズへの愛着もありますが、あくまで仕事のパートナー。『X-Pro2』は仕事・プライベートともに楽しんで使っていました。

X-Pro2 /XF35mmF2 R WR /F4.0 /1/250秒 /ISO6400
フィルムシミュレーション:クラシッククローム

――では、後継機である『X-Pro3』の購入を検討したこともありますか?

単純に仕事で使わないから、という理由で本格的に購入は検討していないのですが、やっぱりカメラ屋さんで触るたびに「良いな、懐かしいな」と感じます。そのくらいX-Proシリーズには好感を持っていて、幼馴染に再会した感覚に近いです(笑)。仮に今、中古で『X-Pro2』を購入しても満足度が高いと思うんですよね。

X-Pro2 / XF23mmF2 R /F2.8 /1/250秒 /ISO200
フィルムシミュレーション:クラシッククローム

――これまでさまざまなメーカーのカメラを使用してきたクロカワさんが、最終的に富士フイルムのカメラに落ち着いている要因は、一体どこにあると思いますか?

X-Pro2 /XF90mmF2 R LM WR /F3.2 /1/2000秒 /ISO400
フィルムシミュレーション:クラシッククローム

まずはプロのフォトグラファーに対するサポートが充実していたり、現場に寄り添ったアップデートがあったりすることでしょうか。カメラを仕事にしている人間にとって、目の前に撮りたいものがあるのに撮れないことが一番辛いですから。

そして、個人的に感じている富士フイルムのカメラの魅力は“変わらないこと”。画質や機能などのスペック面を優先したアップデートを重ねるメーカーが多いなか、趣向性が高く、良い意味で変化の少ないカメラを作り続けてくれるんです。もちろん新機種が出るたびにスペックのアップデートはされているんですが、どれだけアップデートを重ねても、アナログ感のあるデザインを貫いている。中身は最新スペックで外観はノスタルジック、大好物です。(笑)

ユーザーに寄り添いながらも“ノスタルジックに浸れるカメラ”であり続けることは、富士フイルム最大の特徴。スタイルを貫くことは難しいですが、これからもカメラが好きな人に対し、使い方を委ねられるようなカメラをたくさん作ってほしいです。

GFX 50S /GF120mmF4 R LM OIS WR Macro /F8.0 /1/125秒 /ISO100
フィルムシミュレーション:ACROS

text by 高木 望


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