【X/GFXシリーズユーザーインタビュー】Nocchiと『X-T5』 紆余曲折を経て辿り着いた『X-T5』という唯一無二の存在
Webエンジニアをしながら、InstagramをはじめとするSNSで東京の街並みをアーティスティックに切り取ったスナップを掲載、ブログ(CameRife)では機材や撮影の解説を行い、写真を趣味にしたい人々へ有用な情報を提供しているNocchiさん(@nocchi_24)。さまざまな機種遍歴を経て、現在は『X-T5』と『X-E4』を愛用しているとのこと。その決め手となった理由、富士フイルムならではの“色”へのこだわりなどを伺いました。
Interview:Nocchi
写真を撮りはじめたときの楽しさを取り戻してくれたXシリーズ
——写真をはじめたきっかけを教えてください。
もともと写真と縁があったわけではなく、いまから10年程前、大学生のときにひとりで完結する趣味が欲しいなと思い、漠然と写真を撮りはじめました。例えば他人と旅行に行くと、予定を合わせる必要があったり、自分が行きたい場所に100%行けたりするわけではないじゃないですか。そういうことが少し面倒なときもあり(笑)、趣味でカメラをはじめました。
——ユニークなきっかけですね。なぜSNSやブログでの発信をはじめたのでしょう。
写真にのめり込んでいくにつれて、アウトプットをしていきたくなりました。たしかSNSをはじめたのは7〜8年前くらい。Instagramは存在していましたが、まだInstagram発の写真家が多くいるような時代ではなかったですね。わたし自身もアクセスを伸ばそうとかは特に考えずにはじめました。ブログを作り始めたのは最近のことです。
——Xシリーズを使いはじめた経緯は?
あらゆるメーカーのカメラを使ったのち、一時期はフルサイズ機をメインにしていましたが、写真を撮るのがどうも作品ありきになってしまっているなと。本来の撮ることの楽しさからかけ離れていっている気がして、これはまずいと思いました。撮影そのものを楽しめるカメラを探していたとき、富士フイルムのカメラを触り、これは楽しいと素直に感じたんです。スペック的なものというよりもフィーリング。感覚的な部分でXシリーズに惹かれました。
——写真との向き合い方を変えたかったのですね。
素材として撮ってしまっているなと感じる面もありましたし、無理な環境でも工夫せずに撮り、後から編集で何とかしてしまったりしているなとも思いました。休日も、撮影メインの外出をしなければ、という感覚になっていて。写真をはじめた当初は、そういう感覚で動いていなかったはずですからね。
また、現在のInstagramの投稿は東京を中心とした都市風景のスナップが主ですが、その頃は有名なインスタスポットなどに行き撮っていました。それももちろん素晴らしい経験でしたが、わたし個人としては、街を歩きながらのスナップが向いていると気付きました。
画質は変えず、目的や重量によって機種を使い分ける
——ブログでは『X-T2』の購入検討の記事をお書きになっていました。最初に購入したXシリーズは『X-T2』ですか?
実は違うんです。買いたい、という記事を書いたものの買っていません(笑)。検討しているうちに『X-T4』のことが気になりはじめ、最初に購入したのは『X-T4』でした。Xシリーズに求めていた、楽しい撮影体験やフィルムシミュレーションによるJPEG画質は期待通りのものがあり、いまの撮影スタイルの基礎を作ってくれたカメラですね。
——その後の富士フイルム遍歴を教えてください。
『X-T4』を『X-E4』に買い換え、長い間メインカメラとして使っていました。その後、『GFX50S II』を買ったものの、しばらくして手放して『X-T5』を買い、現在は『X-E4』と『X-T5』の二台体制です。
——『X-T4』から『X-E4』へという流れが興味深いです。使用感はかなり異なりますよね。
『X-T4』は機能も盛りだくさんで使いやすかったですが、わたしは動画も撮らず趣味でスナップを撮り回るくらいですから、『X-T4』の強力な手ブレ補正、バリアングル液晶、ダブルカードスロットなどまでは必要ないなと。そのうちに『X-E4』が発売され、『X-T4』と同じイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載しながらも軽快さがあり、それならば自分的にオーバースペックではない『X-E4』がいいだろうと思い買い換えました。
——Xシリーズは世代ごとに同一のイメージセンサーを搭載し、スタイルによって使い分ける楽しさがあります。まさにNocchiさんは『X-E4』のレンジファインダースタイルがしっくりきたのですね。そして一度『GFX50S II』も購入されたという点も気になります。
『X-E4』はとても軽快に使えるカメラで、逆に何でも気軽に撮ってしまいます。これこそわたしが目指した使用感だったのですが、一方で丁寧に向き合って撮るということもしたくなり、使ったことがなかった『GFX50S II』を購入したという流れです。画質は素晴らしく、SNSではその凄みが伝わりきらないというもどかしさがあるくらいでした。ですから、写真集を作成したり、写真を展示することに興味を持ち出したり。そのときに『GFX50S II』の良さが活かされると思っています。また、『GFX50S II』で撮った写真はプリントして自宅に飾ったりもしていますね。
——現在使用中の『X-T5』と『X-E4』の使い分けはどのようにしているのでしょう。
『X-T5』は4020万画素の高画素機となり、もちろんセンサーサイズの違いはあるものの、『GFX50S II』と『X-E4』の双方の良さを併せ持っているカメラだと思っています。コンパクトさを維持しながら画質も素晴らしく、撮影のテンポと被写体と向き合う感覚の両方を得ることができます。『X-T5』は、撮影がメインの外出などに使いますね。レンズは『XF33mmF1.4 R LM WR』、『XF56mmF1.2 R WR』など明るい単焦点レンズを組み合わせています。じゃあ『X-T5』ばかりを使っているかというとそうではなく、目的や重量感によって使い分けていて、ほぼ撮影量は均等かもしれません。
『X-E4』は持ちやすさ重視で、旅行や出社時などに使っています。使用レンズは『XF18mmF2 R』や『XF27mmF2.8 R WR』など薄型で軽いレンズがメインです。『X-E4』と『XF27mmF2.8 R WR』の組み合わせは、個人的にはスマホを持っているのと変わらないくらいの感覚です。写真をやらない方からすると理解できないと思いますが(笑)。
——手のひらサイズの『X-E4』と『XF27mmF2.8 R WR』の組み合わせがあれば、日々が変わりますよね。単焦点標準レンズは『XF33mmF1.4 R LM WR』を使っている理由は?
『X-T5』と『XF33mmF1.4 R LM WR』のマッチングの素晴らしさです。XF33mmはとてもシャープなレンズで、高画素の『X-T5』の画質と合わさると相乗効果が生まれ、驚くほどの描写力を発揮します。思い込みの部分もあるかもしれませんが、大好きな描写です。
——現在、ズームレンズは使っていますか?また、気になっているレンズはありますか?
『XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS』と『XF16-55mmF2.8 R LM WR』の2本の標準ズームレンズ、望遠ズームレンズの『XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR』を使っています。外出や旅行で荷物は増やしたくはないけれどもベストな焦点距離は読めないというときはXF18-55mm、仕事の撮影でレンズ交換している余裕がなさそうなときはXF16-55mmを使います。
気になったレンズがあると、買うか借りるかして使うようにしていて、その結果として残ったお気に入りのレンズがいまのレンズたちなんです。ですから、狙っているレンズというものはないのですが、XF56mmF1.2 R APDの後継レンズが発売されればうれしいなとは思っています。大好きな描写をするのですがAF性能が更新されればありがたいなと。
上品な色を再現できるXシリーズのRAWデータ
——さて、Xシリーズを愛用する最大の理由をひとつ挙げるとすれば何ですか?
僕の場合は“色”ですね。僕はそもそも色で見せる写真が好きなんですが、色が強めでコントラストが高めではあっても、飽和せずに上品さのある色が好きで、それを出せるのがXシリーズだと思っています。他社のカメラを使っていたときは、少し人工的な色になってしまっていたんです。色の強さとナチュラル加減がうまく両立できず……。でも私の場合、Xシリーズならうまくその色が表現できるんです。
特にこだわっている色は、“深緑”です。例えば、晴れている日、曇りの日、雨の日の深緑は全く異なります。特に暗い日の深緑は黒に近く描写されることがありますが、そんなときであってもグラデーションが美しく、肉眼で見たままの深緑に表現できるのがXシリーズですね。
——NocchiさんはRAWからの編集が基本とのことですが、お気に入りのフィルムシミュレーションはありますか?
PROVIA、クラシッククローム、PRO Neg.Hi、PRO Neg.Stdを気分や天候で使い分けています。曇りや雨の日、しっとりした気分のときはクラシッククロームだなとか。撮影する瞬間の楽しさを求めて使い分けている感じですね。
——RAWのデータにも、富士フイルムならではの色の良さが感じられるのですね。
仕組みの詳しいことはわかりませんが、私にとっては富士フイルムのイメージセンサーと画像処理エンジンが作るRAWデータは、とても編集しやすいですし、自分の好みになりやすいと感じています。
紆余曲折を経て辿り着いた愛機『X-T5』
——SNSを精力的に更新されていますが、作品セレクトのコツはありますか?
投稿する際には逆に人に見られることは意識せずに選ぶようにしています。いいねの数や保存数を意識してしまうと、撮影そのものにも影響しますから。SNSの中だけで生きているわけではないじゃないので、自己表現として自分が好きな写真を公開できる場にしていきたいなと思っています。自分が100点と思った写真が他人にとっては20点だったり、またその逆もあったりするので、あまり意識しないことを意識する。そんなことを考えながら日々取り組んでいます。
——ブログでは主に機材レビューや撮影術などを記事にされていますが、これから写真をもっと楽しみたいという方々にメッセージをお願いします。
とにかくXシリーズの素晴らしさ、楽しさを多くの方に知っていただきたいという思いがあります。わたし自身、『X-T5』は間違いなく過去最高にハマっているカメラで、使っていて不満もなくほぼ完璧なカメラといえます。Xシリーズに一貫して言えるのは、どこにでも持ち歩けるサイズ感、描写力、色の表現の素晴らしさ。試行錯誤をしないとわからないこともありますし、いろんなカメラを使う楽しさも理解できますが、様々なカメラ遍歴、紆余曲折を経て導き出した答えが僕にとっては『X-T5』だったということは、ぜひ参考にしていただきたいと思っています。本当にたくさんの方に使っていただきたいカメラです。
text by 鈴木文彦