【Xシリーズユーザーインタビュー】kenji sasakiと『X-H1』 シルエット・ポートレートの作風をつくったXシリーズとの出会い
太陽が沈みゆく海や空を背景に、シルエットにこだわったポートレートを撮影しているkenji sasakiさん(@ks__1984)。初めて手にしたXシリーズである『X-H1』の画作りの素晴らしさに感動し、後継機へと買い替えることなく、いまも愛用し続けているとのこと。SNSを中心に人気を博す現在の作風を生み出したという『X-H1』と、kenji sasakiさんのフォトグラファー人生の関係性について伺いました。
Interview:kenji sasaki
感覚的に憧れたXシリーズの描写
——写真をはじめたきっかけを教えてください。
僕が20代前半の頃、宮崎あおいさん主演のカメラが登場する映画『ただ、君を愛してる』が流行ったんです。あれを観て衝撃を受けて、自分も写真をやってみたいなって。映画に登場するフィルム一眼レフは敷居が高いので、当時はデジカメをかじる程度。以来、ちょこちょこ撮ってはいましたが、本格的に撮りはじめたのは、プライベートで人生の転機のような出来事があったときですね。もう写真一本で生きていく、くらいの気持ちで写真に取り組みはじめました。
——そのような転機を迎えたあと、Xシリーズとの出会いは?
最初はデジタル一眼レフを使っていて、撮れることは撮れるんだけれども、この世界観じゃないよな……という思いが常にありつつ撮り続けていました。Instagramでのリアクションも増えてきた頃、ちょうどコロナ禍がはじまるくらいのときに、コハラタケルさんや高橋伸哉さんなどXシリーズを使っているフォトグラファーの方々の写真に憧れる気持ちがあり、乗り換える決心をしたんです。「いいな」と思える写真はだいたいXシリーズで撮られていて。どこが優れているという具体的なことは言うのは難しいのですが、感覚的に良いと思える写真を撮ることができるのがXシリーズで、自分の世界観を作れるカメラなんだろうなと思いました。
——Xシリーズのなかで『X-H1』にした理由は?
当時は『X-T3』や『X-Pro3』などが併売されていましたが、『X-H1』が比較的リーズナブルだったのと、僕は深いグリップのカメラが好きだったので決めました。もちろんボディ内手ブレ補正が搭載されていることも有利に働くだろうなと想像しましたね。
——購入後、『X-H1』を使ってみての感想はいかがでしたか?
何を撮っても、なんでこんなに良い描写で撮れるの?という感覚があり衝撃的でした。ただの葉っぱをとっても作品のように撮れる。出てくる画にテンションが上がりましたね。見た目は重量感がありゴツいですが、持ってみるとそんなに重たくないところも気に入りました。ストラップの取り付けは吊り環を使うフィルム一眼レフのような仕組みで、そこも大好きです。
『X-H1』で撮りはじめて変わったSNSの反応
——作風は『X-H1』購入前と後とでは変化がありましたか?
『X-H1』以前は、あまり積極的にスナップは撮っていませんでした。でも、『X-H1』で撮ると日常の一コマが作品のようになるので、スナップを撮る機会が圧倒的に増えたと思います。
——現在のシルエット系ポートレートを撮るようになり、SNSで注目を集めるようになったのは『X-H1』を使い始めてからですか?
そうです、2021年後半から2022年にかけてのことですね。早朝ポートレートなどは前から撮っていたものの、他にも時間帯にこだわって撮っている人は多かったので、じゃあ僕はシルエットにしたものを撮ってみようと。次第にこの作風を好きだと言ってくれる方も増え、最もバズったものだと10万いいねが付きました。そのうち、シルエット系以外の写真をアップしても良い反応をいただけるようになり、自分の写真が受け入れられた実感はありました。現在、SNSに関してはひたすらこの世界観にこだわろうと決め、シルエット写真しかアップしていません。
——そのくらいテーマ性をはっきり打ち出すことはSNSでは必要なことですか?
マーケティングの話になると、よくリールの必要性や3投稿をセットにしよう、などの話が出ますが、僕はただ自分の世界観の写真をアップしているだけ。少し特殊な成功例かもしれないですね。でも世界観を作り込むことは大切なことだと思います。
青のグラデーションのこだわる現像作業
——撮影場所選びはどのようにしていますか?
2Dの絵画のように撮りたいというイメージがあり、背景の抜け感や広さにはこだわります。広島で暮らしていた頃は撮る場所がある程度は決まっていましたが、東京に来てからはGoogleマップなどで探し、一度下見に行くなどしていますね。
——夕焼けも重要な要素ですから、天気や時間帯にも左右されますね。
時期によって夕暮れの時間が変わりますし、焼ける時間の長さも変わるので、どのシーズンにどう撮るのかも重要なこと。グラデーションの出方も季節によって違いは出ますし、太陽が落ちる位置も違いがあるので、『日の出・日の入りナビ』のようなサービスは必需品です。特にいまは電車移動のため身軽に移動はできないので、夕陽が落ちる場所を背にできる場所を目指すようにしています。
——撮影方法、仕上げ方を教えてください。
露出は絞り優先オートに設定し、背景のグラデーションが後から出るようにアンダー目に撮るように心掛けています。ホワイトバランスもオートで、後からイメージに合う色温度にしていますね。現像ソフトはAdobe Lightroom CC。自分のプリセットを適用して微調整をするというやり方で、特に深い青のグラデーションの表現を大切にしていますが、『X-H1』のRAWデータと僕のプリセットの組み合わせの場合、ほぼ一発で好みの青が出ますね。
シルエット系ではない作品撮りの場合は、『X-H1』の落ち着いた緑の表現が好きなので、緑の背景に赤い衣装などを合わせて人物が映えるような撮り方をすることも多いです。プリセットを作るのは大変でした。バージョン16くらいまで作ったんじゃないでしょうか。
使用頻度が抜群に高い『XF23mm f1.4 R』
——フィルムシミュレーションは使いますか?
RAWからの調整が染みついているものの、SNSなどにアップしていない日常的な写真については、RAWで撮り、Lightroom CC上でフィルムシミュレーションを適用して書き出して完成、というような使い方もしています。使用頻度はクラシッククロームが多いものの、最近はPROVIAを使うことも多いですし、シネマチック的にしたいときはETERNAも使います。このようなシルエット系以外の写真は公開することなく寝かせまくってしまっているので、そろそろ何とかしないとマズイなと。せっかくなので、今回はそれらの写真も掲載できたらいいなと思っています。
——『XF23mm f1.4 R』、『XF33mmF1.4 R LM WR』、『XF56mm F1.2 R』の3本のレンズをお持ちとのこと。一番使うレンズは?
最も使用頻度が高いのは『XF23mm f1.4 R』。シルエット系の撮影はほとんどがこれですね。最強だと思います。スナップも撮れるし、風景も撮れるし、ポートレートも撮れる。クセもなく、とても使いやすいです。僕は写真に情報を入れたいという気持ちは強いので、23mmの焦点距離という選択肢に自然と落ち着いていった感じですね。
——『X-H1』から『X-H2』に買い替えない理由は?
世界観を『X-H1』で作り、その世界観に満足しているので、敢えて変える必要はないだろうと。だったら、もっと他の表現ができるかもしれないGFXシリーズなどに憧れますね。僕はビューティーも撮るので、ラージフォーマットで撮ったらすごいことになるんじゃないかって。
——最後に、Xシリーズが気になっている方へメッセージをお願いします。
僕の作品を見て、真似をして『X-H1』を買いましたと言ってくれる人たちもいて、とても嬉しく思っています。富士フイルムのカメラでしか出せない何かがあって、それを僕の作品で感じ取ってもらって、Xシリーズが欲しいと思ってもらえれば光栄です!
text by 鈴木文彦