【Xシリーズユーザーインタビュー】フォトグラファー・品川力と『X-T4』 趣ある風景を望んだ色で表現してくれる絶対的信頼感

京都をベースに撮影活動をする品川力さん(@ riki_shinagawa)は、古都はもちろん、富士山のある風景や趣のある宿場町など、歴史を感じさせる場所を独特のタッチと色のトーンで表現し、Instagramを中心に世界中で人気を博しています。プリセットも販売するほど色にこだわりがある品川さんが、作品を撮るカメラとして溺愛しているのが『X-T4』。カメラ選びで最も重要視している“色”について、そしてXシリーズへの強い信頼などについて伺いました。
Interview:品川力
“色”に魅せられてXシリーズユーザーに
——まずはじめに、品川さんは現在フォトグラファー専業ですか?
フリーランスのフォトグラファーとして主に活動していますが、マーケターもしており、企業のマーケティングや広告運用などに携わっています。前職でもB to Cのダイレクトマーケティングや飲食店の事業責任者などをしていました。
——作品を発信しているInstagramアカウントはフォロワー数17万人以上です。カメラをはじめたきっかけは?
5年ほど前に友人が企画している京都のクラブイベントに、カメラマンとして入るようになったことがきっかけです。最初の頃のSNSでは、風景写真とは真逆でクラブの写真ばかりをアップしていました(笑)。でも、コロナ禍でイベントができなくなったので、外に出て風景写真を撮ってみるかと。コロナ禍は多くの人がSNSを見ていた時期だったこともあり、世界中のたくさんの方々に見ていただけるきっかけとなりました。マーケティングの仕事でも自身の撮影技術やSNSへの取り組みを活かすこともありますが、フリーランスのフォトグラファーになろうと決意したきっかけはそこではなく、趣味でやっていたSNSアカウントから仕事をいただくようになったからですね。
——そのような写真活動の中で、Xシリーズとの出会いは?
クラブでの撮影など、写真をはじめた当初は他社の一眼レフカメラを使っていました。風景を撮ることにハマるにつれて、みんなはどんなカメラを使っているんだろうと気になって調べていくと、Xシリーズで撮られた風景写真はもちろん、スナップやポートレートの色味が好きだなと気付いて、どうしても使ってみたくなり購入したのが『X-T30』だったんです。
——具体的にXシリーズで撮られた写真のどのような色に惹かれたのですか?
保井崇志さんがXシリーズで撮った写真に強く影響を受けました。濃いシャドウに黄色や赤が映えるというイメージ。僕もそんな写真を撮りたいと思ったんです。『X-T30』を手にして本当に満足しましたし、「これだな」という感覚。特に自動販売機を撮ったときに富士フイルムの底力を感じます。あとはカラーコーン。強いシャドウの中でのコントラストが抜群で、でもビビッドすぎない。色域が広く表現力があると感じています。
——現在は『X-T4』をお使いとのこと。『X-T4』へ買い替えた理由は?
さほど画質に変化はないため『X-T30』でもいいと思っていたんですが、友人たちが『X-T3』や『X-T4』を持ち出しまして、周囲が持っているのに僕だけ違うのも嫌だなと思って背伸びをして買いました(笑)。やはり『X-T4』にしてみるとグリップが深いところ、ISOダイヤルをはじめとした軍艦部の存在感などが素晴らしく、撮影へのモチベーションはさらに高まりました。そして、ムービーとスチールの切替がレバーでサッとできるのはいいですよね。そんなに動画を撮るほうではないですが、ここは動画で残しておきたいというときにサクッと変えられるのは便利ですし、デュアルスロットで静止画のデータと分けて保存できるのも管理がしやすいです。X-Tシリーズ一桁台のカメラならではの機能面のメリットは、使えば使うほど感じていきますね。
求める色のベースとなっているPROVIA
——Xシリーズ購入の入り口は富士フイルムの色だったわけですが、愛用しているフィルムシミュレーションはありますか?
最初のうちはドキュメンタリー風のシックな色合いに憧れてクラシッククロームを、その後はPROVIAをメインに使っていました。しかし2年ほど前からはフィルムシミュレーションは調味料的に使うくらいになって、RAWデータから仕上げていくという方法に転換したんです。これはエゴのようなもので、「僕自身の色を作りたい」という思いが強くなったからです。ただフィルムシミュレーションを通さないRAWデータであっても、富士フイルムのデータは富士フイルムらしさがあると思っています。特に日本の風景を撮るなら富士フイルムじゃないと出ない色があり、それが『X-T4』をメインで使い続けている大きな理由のひとつですね。
——Adobe Lightroomのプリセットを作り販売しています。
プリセットを作るほど色への探究心を醸成してくれたのは富士フイルムのカメラと出会ったからですし、フィルムシミュレーションの色も大いにプリセットの参考にしています。プリセットの当初の目的は、どんなカメラを使っていてもXシリーズをベースにした僕の色味を再現することだったんですが、他社のカメラのRAWデータからだと少し雰囲気が変わってしまうことがあり、厳密に言うと“Xシリーズを使っていること”が僕のプリセットのベースにはあります。実際にプリセットを買ってくださった後にXシリーズを買われた方も何人かいらっしゃって、やはり多くの方が富士フイルムの色は特別だと感じているみたいですね。
——RAWがベースではありますが、撮影時のフィルムシミュレーションの選択にこだわりはありますか?
そこはPROVIA一択ですね。プリセットを当てたときにどうなるかという想像ができるのがPROVIAの色なんです。シャッターを切った瞬間に自分の色編集の完成形が見えているんですが、そのベースにあるのはPROVIAの色。他のフィルムシミュレーションにしてしまうと、編集がしっくりこない原因になってしまうんです。自分の記憶色から外れるような感覚。きっとPROVIAが僕の記憶色に近いフィルムシミュレーションなんでしょうね。いまはフィルムシミュレーションをあてて動画を撮ることもありますが、やはり僕の記憶の色に近い。中山道の妻籠宿などにある古い建物や郵便局の看板などを、ビビッドにならず忠実かつ昔のカラー写真の素朴な色合いで残してくれます。僕の記憶にある昭和や平成のレトロな色そのものです。
1投稿10枚の写真での投稿を支えるズームレンズ群
——品川さんはInstagramでの発信が主戦場です。作風を自分なりに分析するとどのような感じでしょう。
Instagramで投稿している作品の90%は富士フイルムのカメラで撮ったもの。最近は冬の写真が多かったのでブルートーンが多いものの、全体的には暖色系のトーンにハマっています。春先になってくると、桜や新緑の写真が多くなりますが、色温度7000Kなどに設定したときに、青色があまりにも暖色になりすぎないくらいの絶妙なバランス感を研究しています。被写体は古いものが写っている写真が好きで、これは作品スタイルの軸としてあると思います。富士山のような日本の象徴のようなものもそうですし、東京で撮影するときであっても古い看板があったほうが好みですね。もちろん京都なども大好きで、歴史を感じられる場所やレトロな場所に心は動きます。
——海外の方からの反響も大きいのでは?
フォロワーは海外の方がほとんどです。富士吉田市のようにインバウンド人気が高い場所の写真もアップしていますが、僕のようなアカウントが海外の方の情報収集のひとつのコンテンツになっているんだろうなとも思っています。表現は大切にしながらも、このような需要を見据えたマーケティング的な考え方もあったのは事実で、撮影場所の情報が見ていただく起点になることは多いのも自覚していますね。
——Instagramの1回の投稿の枚数の多さも特徴的です。
僕はストーリー仕立てで写真を見せるのが好きで、10枚を一度に投稿するのをルールにしています。有名な場所で撮っていても、自分なりにどのような表現ができるかを模索していて、メイン画像があって、それ以外の写真は余白があるものだったり、広角で緊張感のあるスナップだったり、横写真を2枚組で投稿したり、内容がばらけるように心掛けています。
——『XF16-55mmF2.8 R LM WR』『XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR』『XF10-24mm F4 R』の3本のズームレンズをお使いです。使い分けはいかがでしょうか?
僕の中で利便性というものはとても重要で、メインレンズの『XF16-55mmF2.8 R LM WR』はとても気に入っています。35mm判換算で24mmから84mm相当。フルサイズの標準ズームで一般的な24-70mmよりも長いんですね。この絶妙に長いところが僕の中では非常に大きくて、10mmの差のために持ち続けているといっても過言ではない。投稿は10枚それぞれ異なった見え方をする写真で構成しますが、これを単焦点レンズで表現するのは難しいじゃないですか。画角を広くカバーしてくれる『XF16-55mmF2.8 R LM WR』を軸にし、足りない場合は『XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR』『XF10-24mm F4 R』を使うという感じです。
——Instagramを拝見すると画角は幅広く使われていますが、作品に統一感があるのは、色やモチーフが揺るがないからだと感じます。
『XF16-55mmF2.8 R LM WR』と同じ画角のレンズが他社で発売されたとしても、富士フイルムの色が欲しいから『X-T4』を使うというのは間違いのないことですね。完成した構図で撮りたいという思いがありつつも、自販機の赤を画角の中になんとかして入れることを優先するタイプですから、それは写真における色のプライオリティの高さの証しかもしれないです。
Xシリーズの撮影体験の楽しさが原動力
——品川さんの作品に興味をお持ちの方にアドバイスはありますか?
僕は憧れの写真家と同じようなものが撮りたいと真似をする時間が長くありました。真似をしていくと、段々と欲が出てきて、自分だけの表現をしてみたいと思うようになり、そこがひとつの壁になるのかなと思います。ここで止めてしまう人もいるかもしれないですが、自分が納得できる写真が撮れるようになって評価も伴ってくると、成功体験となります。成功体験ができてしまえばそこからはトントン拍子。助走期間は長くなりますが、乗り越えればとても楽しくなると思います。
——そのような品川さんのハングリー精神にXシリーズはどのように応えてくれたでしょうか。
僕の中ではやっぱり“色”ですね。圧倒的に色がモチベーションを上げてくれますし、撮影体験そのものが圧倒的に楽しいんです。友人と一緒に撮りにいくと、最後に見せ合いっこをするんですね。そのときに心から自分の写真こそがカッコイイと思えるんですよ(笑)。同じ場所で撮っていてもXシリーズならではのしっくり感みたいなものがあり、その要因は色であることが多くて、この写真にはこの赤が入っているからイケてるよなとか、色が起点となってモチベーションを上げてくれます。僕は褒められて伸びるタイプ。Xシリーズのカメラは、「ようこの色を撮ったな」と言ってくれているみたいで、それが気持ちいいんです(笑)。ぜひ皆さんも、Xシリーズに盛り上げてもらいながら写真を楽しんでいただきたいですね。
text by 鈴木文彦