【Xシリーズユーザーインタビュー】インフルエンサー・kaoriと『X-T50』いつか大きくなったあなたへ手渡したい、写真で紡ぐやさしい記憶

5歳になるお子さんとワンちゃんとの穏やかな家族の日常を中心に、ファッションやトレンドなど等身大のライフスタイルをInstagramで綴っているkaoriさん(@kaoriririn15)。やさしい雰囲気と親近感のある写真で、同世代の女性を中心に支持されている注目のインフルエンサーです。仕事としてではなく、あくまで自分の記録として写真を撮り始めたという『X-T50』ユーザーのkaoriさんは、結婚・出産・子育てを通じて、カメラの役割や撮影の視点が変化してきたといいます。そして今、写し出したいのは自分が目にした素敵な世界といつか子どもに思い出してほしいあたたかな時間の記憶。お話から、日常の一コマこそ精彩な写真残すことの大切さに触れることができました。
Interview:kaori
写真は記憶のしおり。
カメラを再び手にした理由
――kaoriさんは現在『X-T50』をご愛用中とのこと。まずはカメラを始められたきっかけについてお話を聞かせてください。
なにか大きなきっかけがあったわけではないのですが、自分の目に映る日常のふとした瞬間や大好きな家族とのあたたかい時間をきれいな写真で残したいなっていう気持ちからカメラに興味を持ちました。当時は高校を卒業したばかりだったのですぐにカメラを購入する資金もなくて。現像する機会は少なかったので携帯で写真を撮ったりしていたのですが、繊細なところまでは映せないし、これでは私がその場で感じたものは残せないんだなって思ったんです。そんな様子を見ていた両親がプレゼントしてくれたカメラが私にとってはじめての本格的な一台でした。そこからは、日々の中の忘れたくない瞬間を撮るようになりました。写真を見返すたびに、そのときの感情や空気感が蘇る感覚がすごく好きです。
――kaoriさんにとって写真は、心が動いた瞬間を振り返るための記憶のしおりのような役割があるんですね。はじめての一台を手にされてからはどんなカメラライフを送ってこられたのでしょう?
実際にカメラを手にして撮影していくなかで、自分が残したいものや世界を写真で表現することの難しさを感じるようになりました。画質はきれいだけど、撮りたいものや雰囲気を表しきれないというか、ただシャッターを切って記録を続けているような気がしてしまって。そうした期間が1年くらいあって、結局カメラを手放してしまいました。そこから数年経って結婚をして子どもが生まれて、もう一度カメラで自分の人生の記録を残していきたいという気持ちになって、今に至ります。
――今のkaoriさんから見て、カメラを手放してしまった当時の「思うように表現できない」と感じていた理由はどんなところにあったと思いますか?
あのころの私は、ただ本当に自分の見ている世界を残したいという気持ちだけでカメラを手にしたので、誰かの作品を見たり素敵に切り取る方法を学んだりというインプットがいろいろと足りていなかったんだと思います。15年ほど前の当時と今とでは見ているものや視点が違っていますが、撮りたい絵のイメージがすごく具体的に湧くようになりました。
――きっとSNSや動画メディアでのインプットがしやすくなったことも大きいのではないでしょうか。今ではkaoriさんご自身がインスピレーションを与える側にいらっしゃると思うのですが、SNS投稿でなにか意識されていることはありますか?
一時期は、より見てもらえる写真を考えたりフォローしてくださる方の人数を気にしていたのですが、そこに意識を向けることに疲れてしまったというか、Instagramは自分の人生の記録のようなものとして残していきたいなと思うようになったところもあって。写真と一緒に言葉を綴る、一冊の本みたいなものにできたらいいなっていう感覚です。
撮る楽しさを教えてくれた『X-T30』と
表現の幅を広げてくれた『X-T50』
――そういった姿勢が親近感につながっているのかもしれませんね。写真を撮ることに再び向き合うようになり、まず手にしたのはコンパクトデジタルカメラだったそうですね。そこから現在お使いの『X-T50』を手にするまでの経緯を教えてください。
実は、もう一度カメラをやってみようと思ったときに、カメラをやっている友人が「『X-T30』いいよ!」って勧めてくれていたんです。ただ、そのときは生まれたばかりの子どものケアをしながら片手で撮れる扱いやすいものをということでコンデジを選びました。それからしばらくして、子どもも自分で歩けるようになってきたタイミングで、もっといろいろな撮り方を楽しめるカメラが欲しいなと思ったときにピンときたのが『X-T30』でした。
――『X-T50』の前に、『X-T30』を使用されていたんですね。
はい。『X-T30』はレンタルサービスを利用して使っていたのですが、1日たりとも手放したくないというくらい気に入ってしまって、気がついたらレンタル期間が6ヶ月くらい経っていたので「もう思い切ってレンタルではなく買ってしまおう」と。ただ、その時点では『X-T30』の新品を手に入れるのは難しそうだったので、中古の『X-T30』を購入するか、そのころちょうど発売されたばかりだった『X-T50』かですごく悩んで、『X-T50』を購入しました。
――『X-T50』を購入した決め手とは?
『X-T30』には搭載されていないクラシックネガで写真を撮ってみたかったことと、長く使っていくことを考えて画質や処理速度の高さですね。犬と暮らしているので、被写体検出AF機能も心強いなと感じたポイントです。だけど、『X-T30』は手に馴染んだ大好きなカメラだったので、『X-T50』を購入してからも返却せず手元に置いていました。しばらくは2台を併用していたのですが、自然と『X-T50』の出番が多くなってきていることに気づいたときに「『X-T30』を返却しよう」ってようやく決心がつきました。
――『X-T30』を超える満足感を『X-T50』に感じられた、ということでしょうか?
そうですね。まず、レンタルではなく購入したものというだけで愛着が湧きましたし、手にフィットしてくれる丸みを帯びたフォルムもすごく好みで。ファインダーを覗きながらフィルムシミュレーションダイヤルをくるくる回すのもすごく楽しいです。その時々で感覚に合う色みを探して撮るようにしていますが、クラシッククロームとETERNAの出番はとくに多いですね。色味に悩んだときは、フィルムシミュレーションBKTを使って見比べてみたりもしています。
――『X-T50』を手にしたことで、写真表現をより感覚的に楽しんでいらっしゃる様子が伝わってきます。少し遡りますが、先ほど話題に出た「思うように表現できなかった理由」には、色表現も大きく関わっているのではないでしょうか?
それはつくづく感じているところです。昔に比べてたくさんインプットしている今の自分でも、きっとXシリーズ以外のカメラでは思うようには撮れないだろうなって思います。逆に言うと、フィルムシミュレーションがあるから私が写真で残したいものが撮れているという感覚がすごくあります。コンデジで撮った写真の色味を調整してフィルムシミュレーションっぽい雰囲気を再現できるのか試してみたこともあるのですが、どうやっても富士フイルムの色にはならなくて。私が美しいと感じた光や空気感は、このカメラでないと残せないものなんだなって再確認しました。
――レンズは『XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS』と『XF35mmF1.4 R』、『XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ』の計3本を持っていらっしゃるとのこと。それぞれの使用シチュエーションについて教えてください。
単焦点レンズは、お花やテーブルフォトを撮るときに使っています。すごく柔らかくきれいに撮れるのでお気に入りです。ただ、出番が多いのは『XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS』。くっついたり離れたりする子どもの動きにも柔軟に対応できるので、やっぱりズームレンズが便利です。もともとレンズキットで付いていた『XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ』は『X-T30』のときから使っていたこともあって十分満足していたのですが、ズームしたときのクリアな解像感に惹かれて『XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS』を使うようになりました。
テーマは“自分の目に見える世界”
子どもに伝えたい、愛おしさの記録
――先ほど「SNSをあまり意識しないようにしている」というお話もありましたが、kaoriさんがカメラを思わず構えたくなるような瞬間ってどんなときでしょう?
家族や友人との時間はもちろんなのですが、夕日のあたたかな色だったり朝ブラインドから差し込む光だったり、カメラを持っていることで生活の中の小さな幸せや素敵なものに気づけるようになったので、気持ちとしては常にシャッターを切っていたいくらいです。写真を撮るうえで“自分の目に見える世界”みたいなテーマを設けているのですが、私が見ている世界の記録であると同時に、子どもにとって「こんなあたたかい時間があったんだな」って感じてもらえるものが撮れたらいいなと思っています。普段から大切に思う気持ちや素敵だなと感じたことを言葉で伝えるようにしているのですが、時間が経つにつれてどうしても思い出せなくなっちゃったりすると思うんです。そんなときに、心に響いた言葉や瞬間を記憶から引き出せるきっかけになってくれるんじゃないかなと思って写真を撮り続けているというところもありますね。
――そうした想いがあるからこそ、なんでもない日常こそ信頼できるカメラで残したいということですね。スマートフォンで手軽に写真が撮れる時代になぜカメラを手にするのかという真価にも触れるお話だと感じました。
自分が目にしているものに対する愛情を写し残すためには、空気感まで捉えるくらいの精彩さが必要だし、それはスマホのカメラでは叶わないもの。見返したときに一枚一枚に重みを感じることができるのは、このカメラで撮ったからこそなんだなって思います。最近は息子も撮られることを楽しんでくれているので、あたたかな時間をたくさん残していきたいし、SNSと併せてプリントも活用しながら、いろんなかたちで写真を楽しんでいけたらなと思っています。
text by野中ミサキ(NaNo.works)
今回登場したカメラ
