【GFXシリーズレビュー】写真家・柴崎まどかと『GFX50S II』 見てきた世界がガラリと変わる、最高峰の表現力
GFXシリーズ最新機種『GFX50S II』は、小型軽量ボディにフルサイズの約1.7倍サイズのラージフォーマットセンサーを搭載した、ハイクオリティな撮影をより気軽に楽しめる一台です。今回は、フォトグラファーとして雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真など幅広く活動中の柴崎まどか(@shibazakimadoka)さんにGFX50S IIでの撮影を体験していただきました。「カメラに見合う作りこんだ環境ではなく、あえて日常を切り取ってみた」という等身大の視点で捉えた作品とともに、GFX50S IIの魅力を紐解いていきます。
Interview:柴崎まどか
――普段はデジタル一眼レフをご使用とのことですが、今回『GFX50S II』を手にされてみていかがでしたか? 富士フイルムのカメラについての印象も教えてください。
実は、以前『X100S』を使っていたことがあるんです。富士フイルムのカメラをじっくり使うのはそれ以来ですね。今回使ったGFX50S IIは、腰を据えて撮影が出来るカメラだなというのが第一印象でした。重厚感のある佇まいもすごく好きですね。部屋に置いておくだけでインテリアとして映えるおしゃれな感じ。富士フイルムって、やっぱりフィルムのイメージが強く、色味が特徴的で、写真の色、画質に対して相当なこだわりと独特な観点があるなあという印象を持っています。
――GFX50S II は、フルサイズの1.7倍のラージフォーマットセンサーを搭載した機種。撮影で感じた、ラージフォーマットならではの所感などありましたか?
圧倒的な違いを感じたのは、奥行き感でした。レンズの特性もあるのかもしれないですけれど、同じものを撮っているはずなのに、なんだか壮大に見えるというか。特に、自室のように物がたくさんある場所の撮影では、フルサイズとは違った奥行き感と立体描写が生まれると感じました。GFX50S IIはコントラストAFと聞いていましたが、実際使ってみてオートフォーカスが普段使っているカメラと比べても違和感はなかったですし、手ブレ補正がしっかり効いてくれるので動きのある撮影でも安心感がありました。
――プロユースにも耐えうる高性能のモデルでありながら、スナップ撮影のようなシチュエーションでもしっかりパフォーマンスを発揮してくれるのは心強いですよね。今回の撮影でも、公園やご自宅などで日常のひとコマをたくさん撮影してくださっていますね。
まず、「このカメラってどういう人が使うんだろう?」と考えたときに、プロの方が広告撮影で使うのはもちろんですが、一般の方がプライベートな場面を撮るときにも活躍してくれるカメラなんじゃないかなと感じたので、今回はあえて等身大の視点で撮影してみました。
――ここからは実際にGFX50S IIで撮影していただいた作品を拝見しながら、カメラ本体やレンズの使用感、色表現について伺いたいと思います。
まずこちらの写真は、駒沢のオリンピック公園へ出掛けて撮影しました。今回レンズは、『GF50mmF3.5 R LM WR』と『GF80mmF1.7 R WR』、それと『GF32-64mmF4 R LM WR』の3本を使ったのですが、この写真のように歩きながらの撮影では自由に構図が決められるGF32-64mmのズームレンズが活躍してくれました。咲き始めた桜がきれいだったので、きれいにぼかして人物に焦点を当てつつもちゃんと咲いている様子がわかる写真になってくれたと思います。
上の写真と同じ場所でレンズをGF80mmに換えて撮ったパターンです。このレンズをとても気に入ってしまって、かなりの頻度で使っていました。ボケがすごく柔らかくてきれいで、その中にも人物にしっかりとピントを合わせてシャープな表現もしっかりと描き出されていて。被写体との距離がとれる開けた場所での撮影が楽しめるレンズだなと感じました。
続いて、GF80mmレンズで自室を撮影してみました。普段部屋の中は50mm相当(35mm判換算)で撮ることが多いんですけど、若干歪みが出ちゃったりすることがあって、GF80mmは焦点距離は50mm相当とのことだったのですが、インテリアの直線的な部分でも歪みなく撮れるんだなというのは発見でした。特に本棚を写した一枚は、全体を写しつつも手前は柔らかくぼけていて、部屋の雰囲気もガラスの額の反射もいい感じに撮れていて気に入っています。
普段、編集を前提に撮影しているので今回のようにほぼ撮って出しを前提に写真を発表するのは新鮮でした。フィルムシミュレーションを使うことで撮影しながら表現を拡張できるのは、すごく魅力的だと思います。さまざまなフィルムシミュレーションを使ってみた中で私のお気に入りは、PRO Neg. Std(プロネガスタンダード)とノスタルジックネガ。ノスタルジックネガのこのオレンジがかった色調が部屋の雰囲気を上手く引き出してくれているなあと思います。
こちらの写真はGFX50S IIを使って逆光で撮るとどんな感じになるんだろうっていうのを試したくて。もうちょっと露出をアンダーで撮れば良かったかなあと思ったりもしつつ、冬の空気感がうまく表現されていて気に入っている一枚です。フレアのこの柔らかくてくどくない感じって、レンズが良くないとなかなか出ないんですよね。結構普段から逆光で撮ることが多いのですが、GFX50S IIは被写体の背後から入ってくる光をきれい捉えられるカメラですよね。ここまでちゃんときれいに光の美しさが出るのはやっぱりセンサーサイズの大きさがあってこそなんだろうなあと感じました。
この写真は左手で猫の気を引きながら右手でカメラを持って撮った一枚です。冷静に考えると片手で持てる中判カメラってすごいですよね。このクラスのカメラって、大きさや重さなどもあって気軽に持って出掛けられるものではないと思うんです。だけどGFX50S IIは、軽いレンズなら片手でも持てるのでこんなふうにプライベートな場面も撮りたくなるカメラだし、いい意味で中判カメラの敷居を下げてくれる一台だなと思いました。
――作品を拝見して、ラージフォーマットで描き出すからこそ見えてくる日常のきらめきのようなものを感じました。今回の撮影について先ほど「どんな人が使うんだろうと考えた」とおっしゃっていましたが、柴崎さんはGFX50S IIをどんな方にオススメしたいでしょうか?
GFXシリーズって、きっと相当カメラが好きじゃないとなかなか手を出せないモデルだと思うんです。だからこそ、現在カメラを使って撮影をしていて写真の面白さにハマっている方が手にしたら、一気に沼にハマってしまう一台だと思います(笑)。現実的に一度に何本ものレンズを揃えるのは難しいし、複数のレンズを持ち歩いて、都度レンズを換えながら撮るということも難しいと思うんです。なので、私が友人に勧めるとしたらコンパクトで軽いGF50mmが入り口として最適解かなあと。とはいえ、個人的にはやっぱりGF80mmの描写を体験してみてほしいなあという気持ちも強いです。今まで見てきた世界が変わっちゃうような感覚を味わえると思います。
――見てきた世界が変わるって、すごく素敵な表現ですね。
私自身、高校生のときに初めて一眼カメラを使ったんですけど、それまで『写ルンです』で撮っていた写真とはまったく違った魅力を感じたんです。GFX50S IIを手にして、あのときの感覚に似たものを感じました。それこそ使用感的にも金額的にも、今までの中判カメラと比較してハードルがそこまで高くないというところでGFX50S IIのような中判の入門機のようなカメラが登場したのはすごく嬉しいし、今回の撮影ではさまざまある機能を使いこなせなかった部分があるので、もっと色んなシチュエーションでじっくり撮ってみたいですね。機会があれば、今度はしっかりライティングを作り込んだ環境での撮影にもトライしてみたいです。
text by 野中ミサキ(NaNo.works)