フィルムシミュレーション『Velvia』で撮るベストショット〜KUNIKA・鈴木啓悟・松波佐知子〜
Xシリーズを愛用しているフォトグラファーさんに、各フィルムシミュレーションで撮影したベストショット2枚と、そのフィルムシミュレーションに感じている魅力や自身の想いをご紹介していただく本企画。今回は、鮮やかな発色とメリハリのある階調が特徴のフィルムシミュレーション『Velvia』について、KUNIKAさん(@_kunika_ )、鈴木啓悟さん(@mt.fuji._.keigo)、松波佐知子さん(@ wagashi_moments)に語っていただきました。
Velvia①:KUNIKA
春のギリシャはとても眩しく、夏を心待ちにした美しい色で溢れてる。
南国特有の色とりどりのお花たち、力強い青い空、クリアなエメラルドブルーの海。
最初に目にした時の感動ごと色濃く残せるので、色彩に心ときめいた時は特にVelviaのフィルムシミュレーションで撮影するのが気に入っています。
こちらの写真は藤の花が枇杷(びわ)の木を蔦って、高く高く咲いている様子。
Velviaで撮影すると、写真から強い日差しも感じられて、藤の花がそよ風に揺られてキラキラしている様子も、色鮮やかに写真から伝わってきます。
次の写真は、雲ひとつない青空、透き通ったエメラルドブルーの海、心地よい波しぶき、売り物のように綺麗な石ころのグラデーション。
まだオフシーズンなので人も少なく、海の水も冷たいので海水浴をしている人もほとんどいません。
そんな純度の高いキラキラの海を、波しぶきの躍動感も合わせて残したくて、砂浜ギリギリの位置からカメラを構えて撮影しました。
様々なフィルムシミュレーションがありますが、Velviaで撮影する色鮮やかな写真は、あとから見返したときに当時の温度感もより鮮明に思い出させてくれます。
Velvia②:鈴木啓悟
風景写真といえばVelvia。
私の場合、富士山を撮影する上で8割型はVelviaで撮影しています。
どんなにいい景色を撮れてもレタッチの部分で色や空気感を表現できずにいたのが、長年の悩みでした。富士フイルムのカメラを使用してからは、フィルムシミュレーションやトーンカーブを調節して撮影することでJPEG撮って出しでほとんど完成してしまうので、撮影したその場で作品を仕上げることができます。
より撮影に集中できるので、“撮る”という行為そのものがとてもおもしろく感じられて気に入っています。
1枚目は、真冬の湖で撮影したマジックアワーと氷の景色。
マジックアワーの綺麗なグラデーション表現から、空の色が反射して映る氷のシャドウ部分までしっかりと色が表現できるのが富士フイルムの色の凄さ。
2枚目は秋の時期、もみじに包まれる富士山。
Velviaの発色の良さには毎度驚かされます。Velviaらしいコントラストと奥深さもありながら透き通った色味で、その場の空気感までも写してくれると思っています。
富士山や風景撮影ではCPLフィルターは欠かせないアイテムですが、CPLフィルターと太陽の位置関係で空にムラができてしまったり、強くかかり過ぎてしまう場合があり、そんな時にカラークローム ブルーを一緒に使用する事でコントラストが綺麗な空を表現する事ができるのでおすすめです。
Profile
Velvia③:松波佐知子
和菓子を撮るときは、食べ物として自然に見える色合いを大切にしているので、フィルムシミュレーションの中ではPROVIAを使うことが多いのですが、Velviaは和菓子のイメージをより印象的に表現したい場合に使用しています。単にビビッドな写真になるのではなく、鮮やかながらも、被写体の実際の色味が損なわれずに上品でコクのある仕上がりになる点が気に入っています。
このカーネーションの和菓子は、花びらの透け感と、水滴に見立てた錦玉羹(寒天と水を煮溶かし、砂糖を加えて作ったもの)に反射する光を捉えるために逆光で撮影しました。Velviaの高コントラストのおかげで花びらに立体感が出つつも、赤色のグラデーションを繊細に捉えることができました。花の台座にした緑の練り切りには抹茶を混ぜているのですが、変に鮮やかにならずに抹茶色のまま深みが加わっています。
色がより印象的になるだけでなく、黒が締まって被写体を際立たせるのもVelviaの特色だと思います。こちらの写真では黒い板を背景にし、サイド光で器と和菓子の輪郭や質感を出すようにしました。色は自然に仕上げたかったのでカラーはマイナスに設定しています。